リスティング広告の登場
これまで述べてきたように、初期のインターネット広告の効果測定は、原始的で限られた範囲のものでした。そのため、「マーケティングをマネージメント」するといっても、あまりクリックされてないバナー広告(クリック率が低いバナー広告)を他のものに差し替える程度のオペレーションしかできていませんでした。
ところが、画期的なビジネスモデルが台頭してきたことにより、状況は2000年代前半から急変しました。それがリスティング広告です。

キーワード単位で買い付けを行い、入札制のクリック課金型であるリスティング広告は、それまでの広告では常識であった「枠売り」の概念を覆しました。「このキーワードは効果が高そうだから高い金額で入札しよう」「こっちのキーワードは効果が低そうだから低い金額で入札しよう」など、媒体社側が設定した価格ではなく、広告主側が自ら価格を設定できます。また、開始・終了のタイミングも広告主が自由に決められます。また低予算でも取り組むことができ、たとえば1万円からでも始めることができます。
リスティング広告の登場が、マーケティングのマネージメントにおいても、重要なターニングポイントとなりました。
ユーザーの役に立たない広告は表示されない
リスティング広告の入札制はオーバーチュア(現在はヤフーに吸収)が導入したものでしたが、それをグーグルのAdWords(アドワーズ広告)が改良して、クオリティスコア(品質スコア)というシステムを組み込んできます。
クオリティスコアとは広告の品質を数値化したものです。その基本は、CTR(Click Through Rate:クリック率)で構成されています。簡単にいうと、ユーザーにたくさんクリックされる広告ほど品質が高く、あまりクリックされない広告は品質が低いとみなされます。
クオリティスコアが高い場合は、広告主は安い金額で入札に勝つことができ、より優位な掲載位置(検索結果画面のより上位の表示位置)を与えられる可能性があります。つまり、入札金額を高く積めば入札競争に勝てるというわけではないのです。
では、(入札金額)×(クオリティスコア)によって勝負が決まるということは、何を意味しているのでしょうか。
これは、ユーザーにクリックされない広告(クリック率の低い広告、あるいは、クオリティスコアの低い広告)は掲載したくありません、というグーグルのメッセージです。ユーザーにクリックされない広告とは、ユーザーの興味を惹かないということです。グーグルのユーザーにとって役に立たない広告は、いくら高いお金を払っても掲載しません、ということです。そして実際に、クオリティスコアがあまりに低い広告は、いくら高い金額を積んでも表示されなくなります。ほぼ同じ仕組みを採用しているヤフーでも同様のことが言えます。