なぜ今アナリティクスなのか?
なぜアナリティクスは昨今、頻繁に語られるようになったのでしょうか? 「データの分析と活用」は現代統計学が出てきた大昔からあったことで、それ自体何も新しいことではありません。なぜ、今、脚光を浴びているのでしょう? 具体例のほうが分かりやすいと思いますので、いくつか例で説明したいと思います。
ハンバーガーとレタスの話
まずは、ハンバーガーとレタスの話です。たとえばあるハンバーガー・チェーンの会社が秋のスペシャル・バーガーを売り出す計画を立てたとします。300万個売れるだろうと考えて、数ヶ月前に300万個分のレタスの種を蒔きだします。秋に実際に200万個しかバーガーが売れなかった場合には100万個分のレタスは廃棄です。コスト面での損失です。逆に実際には400万個売れたのに、ということがわかったら100万個分の機会損失です。

でも、もし、過去の販売実績や類似のスペシャル・バーガーでの牽引効果を分析し、今回のスペシャル・バーガーの販売数を精確に予測できたとするとどうでしょうか?400万個分のレタスを準備し、売上最大&コスト最小の収益マックス!の結果にいたるわけです。アナリティクスを正しく実施すれば会社に大きな収益をもたらし、それはアナリティクスを導入するコストを大きく上回ることがあるのです。
薄型テレビと乾電池の話
もうひとつの例として、薄型テレビと乾電池の話をしましょう。家電量販店の広告「薄型テレビがXX円!」に誘導されて消費者が売り場に来ても、その日は買わずにレジの横に山積みになっている乾電池やケーブルを買ったりするのはよくあることです。この場合、家電量販店の収益源は薄型テレビではなくレジ横に無造作に置いてある乾電池だったりするわけです。
「薄型テレビの価格には敏感に反応するが、乾電池にはその感覚がなくポンと買ってしまう」ということは現場の担当者であれば経験と勘で知っているかもしれませんが、それではいったい乾電池の価格を何円に設定すればもっとも収益をあげられるかを正確に予測することは難しいかと思います。過去の販売実績データ分析を分析することで、もっとも収益が期待できる最適な価格を見つけ出すことができるのです。
これを経験や勘で部分的にやっている量販店と、アナリティクスを全売り場で徹底的にやる量販店でははっきりと差がつきます。ここでのポイントは、経験的・部分的な知見と比較してアナリティクスは知見を大規模に生産することができる知的生産の武器だ、という点です。知的生産の規模と質が勝負を分けているのです。
一昔前まで企業の競争力は、企業規模と技術力だったと単純化してしまえるかもしれません。今日、ここにアナリティクスが新しい要素として加わった、という図式で私は理解しています。つまり企業がアナリティクスで勝負することが可能な時代になってきたのです。それを可能にするようなIT技術が身近な存在になってきたこともその流れを支え、促進しています。これが昨今、アナリティクスが注目を集めている本当の理由なのです。