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EC・通販最前線

EC売上15億ドルのファッションECの巨人、米ギャップが日本のEC市場に参入


日本市場は「期待以上に急成長」

 「期待していた以上に早く、急速に成長している。とても満足している」。イェン氏はスタートから10カ月が経った日本でのECについてこう満足気に笑みをこぼす。立ち上げ後50日間で、他の国際市場で開設したECサイト以上に消費者が来訪、商品購入につながったという。

 「例えば店舗に訪れる前にプレショッピングのツールとして活用し、実店舗で効率的な買い物をしたり。近くに店舗がないという方、時間がなくて店舗で購入できないといったお客さまがアクセスしている」(同)と、ユーザーからの評判は上々のようだ。

 そもそも、実店舗が中核の米ギャップにとって、オンラインとはどのような位置付けなのか。新規チャネル、新規顧客の開拓ツール――企業によってECの位置付けはさまざま。米ギャップによると、ECは「店舗ビジネスを補足するような位置付け」(同)という。

 しかし、単なる補足チャネルではない。「お客さまを魅了し、商品に興味を持ってもらい、商品を提供するチャネル」(同)。

 世界中でEC経由の売上高が伸びている中、ギャップにとってもECは重要な成長チャネルの1つだ。だが、単に商品を購入するツールではなく「よりお客とコミュニケーションを取り、よりファンになってもらうためのチャネル」というイェン氏の言葉に、米ギャップのECサイトがグローバルで成長し続けるその秘密が隠されている。

成長のキーワードは「エンゲージメント」

 イェン氏によると、キーワードは「エンゲージメント」。顧客との関係性だ。イェン氏は「ブランドに関心を持ってもらうために、魅力的なコンテンツをサイトで展開できている」と日本市場の成長理由をこう分析する。

 例えば「アウトフィット」と呼ぶ、スタッフのお気に入りなどこれまでとは異なる着こなし方などを提案し、新たなファッションスタイルを提示するサイト上の企画コンテンツ。「商品情報をより詳細に提供でき、知ってもらえ、写真を気に入ってもらえる」(同)など、店舗では実現できなかった顧客との関係性作りができるようになったという。

 ギャップジャパンではECサイト開設当初から、未使用品に限り注文してから30日間は無料で最寄りの当該ブランド店舗で返品を受け付けている。「日本のお客さまは、安心感とか、快適に買い物を楽しみたいといった要望が強い。この要求をどう満たせばいいのか考えた」(遠藤克之輔・Gapジャパンマーケティング/デジタル&CRM マーケティングディレクター・写真左)というのが、業界的にも珍しいこの取り組みを始めた理由。全国の店舗網を生かし、かつ顧客重視の方針を掲げるギャップジャパンならではのカスタマーサポートだ。

 インタビュー時、イェン氏と遠藤氏が共に協調した「体験の提供」。さまざまなコンテンツの提供、企画の実施などを通して、ギャップが展開するブランドに触れてもらうという意味だが、ギャップジャパンには多くの企業が持つ「すぐに売る」という意識がいい意味で希薄に映る。サイトや店舗に集まったファンをどう顧客化し、最終的にはどのように優良顧客化するか――こうしたマーケティングが徹底されているのではないか。

 それを示唆するのが遠藤氏のこの言葉。「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)は日本だとアプリを使ってクーポンを配って多くのお客さまを獲得し、すぐに売り上げにつなげようとする動きが多い」。

 だが、ギャップジャパンは間逆だ。「ブランドを通して体験できることを、どのようにしたらオフライン、オンラインでも楽しんでもらえるか。これに注力している」と遠藤氏は言う。

 過去に行った、自社Facebookページのファンに来店してもらうためのきっかけを作る狙いで実施した企画『ハイタッチ!でいいね!』(参考記事,Fashionsnap.com News)。Facebookページのファンを店舗に誘導、実店舗で販売スタッフが提案するコーディネートと接客を体験してもらい、気に入れば「いいね!」ができるようにした。新たな顧客接点の場として一定の成果を上げたという。

 「『ハイタッチ!でいいね!』はほんの一例。「ECというチャネルを使えば、『ハイタッチ!でいいね!』のような面白い企画がEC上でもできるのではないかと考えている」(遠藤氏)

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「カニバリ」の懸念はない、より強いブランド提供が可能に

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この記事の著者

TAMA(タマ)

 流通系専門紙の編集に携わる。現在、サラリーマンをしながら、フリーライターとして執筆活動中。活動ジャンルはITと流通周り。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/09/11 11:44 https://markezine.jp/article/detail/18251

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