レベルデザイナーを目指す人へ
―スマートフォンの普及によってゲームのレベルデザインも変わってきたと思いますか?
矢口:フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行は、大きな流れだったと思います。それによって、いろんな遊び方の違いが出てきたし、さまざまな機能も入れられるようになってきた。
谷井:デバイスが進化している分だけニーズが増えます。それを数値化していくのがレベルデザインだと思っています。逆にニーズがないと、「ヒットポイント決める」といっても何をしていいかわからない。
矢口:ニーズに合わせた設計って大事ですね。

―ユーザーだけでなく、社内のいろんな部署の人たちのニーズもありますしね。
谷井:それもあります。ゲームの宣伝ページを作るときに、「効果が○倍になる」と宣伝したい場合があります。でも、計算してみたら「効果が1.67倍」だったとき、そんな数字を告知してもよくわからないじゃないですか(笑)。そうすると「ユーザーに伝わりにくいからキリのいい数字にしてよ」と言われることもある。
―せっかく設計したのに?
谷井:でもそれは正しいことなんです。ゲームのバランスばかり考えていると、1.37倍、1.88倍みたいな数値を渡してしまう。でも、ユーザーが宣伝文句を見たときに、2倍、3倍のような数値を提示する方が理解しやすいし、モチベーションも上がる。だから、そういう声にも臨機応変に対応しています。それがゲームを作るということなのです。数値だけ帳尻合わせて渡せば良いのだったら結構楽なんですよ。でも、ユーザーに面白さが良さが伝わらなかったりする。
矢口:ユーザーが実感できることが大事だと思うので、そういう指摘をもらったら、イチから設計を見直します。逆に自分が曲げられないところはちゃんと主張しますし。
―ニーズを受け止めて、理解して、形にするのに長けている。ある意味最強なふたりですね。最後に、ゲームのレベルデザインをやってみたいという人に、何かアドバイスはありますか。
谷井:このゲームが面白い理由を聞かれたときに、「いや、何となく」ではなく、なぜかをすべて言語化できるかどうかだと思いますね。
矢口:そこだと思います。でも、最初はみんな何となくでもいいんです。「何となく楽しい」の「何となく」の部分が数値化できれば数値で示して、この数値だから楽しいんだろうなというのを分析していく。それが大事なんじゃないでしょうか。
谷井:この数値だから楽しいという根拠を自分の中で答えを出していく作業ですね。それが正しいかどうかはわからなくても、根拠の素材があれば議論ができる。やっぱりゲーム作りは一人ではできないんです。
矢口:議論をして、またどんどん考えていく、の繰り返しですね。
―これからもゲームレベルデザイナーを目指す人が増えていくといいですね。今日はありがとうございました。