「モノのインターネット」とは
昨年から盛り上がりを見せるオムニチャネルは、小売業界から出てきたコンセプトです。そのため、「デジタル」と「実店舗」が中心となります。しかし、ネットがリアルの領域に入っていくことで、イノベーションが起こるという流れは小売の世界にとどまりません。今回は少し範囲を広げ、日本でも最近盛り上がりを見せている“Internet of Things(IoT)”と呼ばれる領域について見ていきたいと思います。
“Internet of Things”は、もともと1999年にP&Gのケヴィン・アシュトン氏が提唱した概念。RFIDを使ったサプライチェーンをインターネットと結びつけるというアイデアは、P&Gの経営陣だけでなく世界中の人々を魅了しました。その後、MITとこの分野の研究を開始したアシュトン氏は2009年、次のように述べています。
「コンピュータとインターネットは人間に与えられた情報を扱うもので、現実世界のモノについてのデータを把握することがあまり得意ではありません。人間とそれを取り囲む環境は物質でできています。RFIDとセンサー技術によって、コンピュータは直接世界を観察し、識別し、理解することが可能になるでしょう」と。
日本国内ではセンセーショナルなGoogle Glassの登場以降、「ウェアラブルデバイス」のカテゴリに注目が集まっていますが、通信機能を持つハードウェアやICタグを付けた商品とインターネットを連携させて新しい価値を生み出す取り組みは、ウェアラブル(着用可能)なものに限定されるわけではありません。ネットインフラの普及に加えて、ハードウェア開発が容易になった時代においては、すべての「モノ」が可能性を秘めていると言えると思います。
グーグル、アップル、そしてフェイスブックも参入
グーグルは、ウェアラブルデバイスの開発だけでなく、2009年にはクルマの自動運転技術の開発を始め、ロボットテクノロジーのベンチャーを次々買収するなど激しい動きを見せていました。そのため、この領域ではグーグルがリードしている印象もありましたが、3月3日、アップルがiOS をクルマと連携させるCarPlayを発表。かねてから噂されていた“iOS in the Car”の全貌が明らかになり、アップルも本気でこの領域に参入していくことが伝わる内容でした。
そして3月26日、フェイスブックがOculus VRの買収を発表し、世界中の注目を集めました。クラウドファンディング「Kickstarter」で資金を集めて作り出したヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」は、3Dゲームを仮想現実として手軽に体験できるため、ゲームファンを中心に熱狂的な支持を集めています。
視界を完全に覆った状態で、接続したPCから送られる3D映像を楽しむこの製品は現在まだ開発中で、販売されているのはヘッドセットを含む開発用のキットだけ。しかし、最新のキットでも350ドルという低価格で入手できるため、日本でも個人で輸入して楽しむ人が増えています。
創業者のパーマー・ラッキー氏は21歳。彼らは次世代のゲーム体験を提供するだけでなく、ヴァーチャルリアリティをより身近なものにしようとしています。設立して2年のハードウェア・スタートアップの買収に、月間アクティブユーザー2億人超、現在も絶好調のInstagramを上回る20億ドルを投じるというジャッジは、この領域にフェイスブックも「賭けている」と言えるでしょう。
LINEで家電の操作ができる? 韓国勢の動き
韓国LGも今年1月の家電見本市「CES」でLINEと連携した「LG HomeChat」を発表。LINEを通じて家電にチャットで操作できる世界を提示しました。プロモーション動画では、仕事を終えたビジネスマンがLINEで誰かとチャット中。「冷蔵庫にビールあるかな」「3本入ってます」というように、LINEを通じて自宅にあるスマート家電の情報が送られ、帰宅したときには洗濯も掃除も終了という内容になっています。
LGは、グーグルの新しいAndroidプラットフォーム“Android Wear”を搭載したウェアラブル製品「LG G Watch」を3月に発表しています。
また、サムスンもスマートウォッチ「GALAXY Gear」や「Gear 2」などを積極的に展開。スマートフォンのGALAXYシリーズと連携し、ハンズフリーでの通話、SNSから届いた通知の確認、静止画・動画の撮影も可能です。