「クルマ」は格好のIoTスペース
クルマはIoTにおける重要なカテゴリのひとつです。早くから「クルマ」というテーマに取り組んでいたグーグルは自動車へのAndroid OS搭載と普及に向け、2014年1月6日にホンダやGM、Audiなど6社と共にOpen Automotive Alliance(OAA)という団体を設立しました。
アップルが満を持して発表したCarPlayは、iPhoneやiPadなどと車のダッシュボード・ディスプレイを連携させるプラットフォーム。ドライバーがハンドルを離さずに音声認識で音楽をかけたり、ナビゲーションの指示を出したりすることが可能になります。早くも今年中にフェラーリ、ホンダら5社の製品に搭載が決定しており、BMW、トヨタら自動車大手13社が採用を発表しています。

また、BMWを含む自動車メーカーは今年1月、サムスンのスマートウォッチ「GALAXY Gear」と電気自動車を連携させたサービスの開発に乗り出すと発表しました。ベンチャー・スタートアップもこの領域に続々参入。Automaticは、車に独自のハードウェアデバイスを設置することによりスマートフォンアプリから運転中の燃費節約などさまざまなデータを確認できるサービスを提供しています。
MetroMileは運転状況を診断することによって保険の価格が変動する商品を提供。クルマという、人によっては長い時間を過ごすスペースが完全にデジタルと連動したことで、また大きなビジネスが広がっていくことになるでしょう。
IoT領域に未来を求める米広告業界
これらの動きは広告業界にも影響を与えています。「Nike+ FuelBand」や「Nike+ GPS」などのプロジェクトを実質的に主導したことで知られる、米広告代理店R/GAもIoTの領域に積極的に取り組んでいます。音楽、映画、インタラクティブメディアのフェスティバル「SXSW2014」でIoTのセッションを行い、スタートアップ向けの「Demo Day」(プレゼン大会)も定期的に開催しています。
同じくNikeのキャンペーンなどを手掛けるクリエイティブエージェンシーAKQAのレイ・イナモト氏は昨年、カンヌ国際広告祭でモバイル部門の審査委員長を務め、「広告は統合型からコネクト型の時代に移行した」と指摘しています。
イナモト氏が語るとおり、「広告祭」と言われながらも、すでに“Advertising”という言葉がイベント名から消えた「Cannes Lions」。そこでは「キャンペーンのアイデア」と「プロダクトのアイデア」を分けるべきか?といった議論も生まれており、「エージェンシーは、プロダクトやサーヴィスを扱う、あらゆる企業と競争していかなければならないのか?」という問いに、イナモト氏は自ら「イエス」と答えています。
具体的なプロダクトに落とし込むことで、これまでのキャンペーンではなしえなかったような展開ができないかと考えているのは、Nikeのような先進的な企業に限りません。例えば、おむつメーカーのHuggiesは、赤ちゃんがおむつの中でお漏らししたことを、ツイートで知らせてくれる“TweetPee”を開発。今年のCESでは、Kolibreeが歯磨きを採点してくれる歯ブラシ“Kolibree Toothbrush”を発表しました。
日用消費財のメーカーにおいてもこうした取り組みが始まっている今、広告プロモーションも新たなフェーズに移行していく可能性があるのではないでしょうか。
「モノ」で広がる新しい可能性
大手からベンチャーまで、この数年で圧倒的に増えてきているのはリアル領域を便利にするサービスです。通信コストが下がり、APIを開放する文化が浸透し、ハードウェアの開発コストも下がった今こそ「モノのインターネット」が花開く時代と言えるのかもしれません。
これからのサービスは、ネットに接続できるスマートフォンやタブレットの上だけで完結するものから、「モノ」を介することでまったく新しい価値や体験を生み出せるかもしれません。国内でバズワード的に盛り上がるオムニチャネルやウェアラブルというカテゴリをIoTという観点で見てみると、さらなる可能性の広がりを感じます。この分野からは当分目を離せそうにありません。