「接触」と「所有」のあり方をどう変えていくか
礒崎 米国のBillboard.comで毎週100位までランキングを公開していますが、そこに定額制音楽配信サービスの「Spotify」や動画サービス「Vevo」へのリンクボタンがある。そこをクリックすれば、実際に音楽をすぐ聴くことができます。日本でももっと多くの楽曲が聴けるようになったら、ストリーミングサービスが日本でも本当に浸透するだろうなと思いますね。

―― 今後はどのようにサービスを広げていくのでしょうか。
礒崎 今回、年間チャートとともに公開したアナリティクスのサービスを、本格的にローンチしたいと思ってます。
高嶋 来春には本格ローンチし、フリーミアムで提供することを考えています。
礒崎 今回公開したデモの閲覧状況をみながら、1位から何位まではフリーで、何位から100位までは月額何百円みたいなかたちでスタートして、法人の方々にはサービスを追加して、法人価格というかたちで提供するつもりです。
―― 今年9月に開催されたデジタル音楽ビジネスのイベント「THE BIG PARADE」にアーティストのtofubeatsさんが登壇したのですが、彼は学生のときからネットで作品を公開し、YouTubeに動画をアップしてきた。今年ワーナーミュージック・ジャパンと契約したあとも、デビューアルバムの全楽曲をSoundCloudで無料で聴けるよう公開しています。メジャーデビュー後にこういう活動を続けているのはすごいことだと思うのですが、アーティスト側のアクションや新しいチャートのサービスなど、新しい動きがあちこちで始まっているんだなと思いました。
礒崎 音楽の「接触」と「所有」というのを考えたときに、レコード会社としては「所有」だけを気にしていたい。でも、「接触」が増えない限りは「所有」には結びつかない。YouTubeやストリーミング配信のデータも取り入れながら、それがシングルセールスや、ルックアップ、ダウンロードという所有の指標にどう影響しているかをお見せすることができれば、もっともっと楽曲を解禁していくようになるかもしれません。
米国のビルボードでは「Social 50」という、Twitter以外のソーシャルで話題になったアーティスト名だけのランキングがあるんですけど、それがライブ動員にもつながっていくのが読めるので、そういうものも作っていきたいなと思いますね。
―― いろいろやることがありますね。
礒崎 まずYouTube、その次に取り組むのはアルバムですね。アルバムは今セールスのデータだけですが、そこにHot100のような複数のデータも合算したい。それができたら、今のセールスだけじゃないかたちでのユーザー動向を示すアルバムチャートが作れるかなと思っています。
先ほどの9月のイベントには、米国ビルボードのチャートディレクターであるSilvio Pietroluongoが来日したんですが、彼は「いま、音楽に接触して楽しめる方法がいっぱいあるのに、売れないからってそれで落ち込んでる意味ってどこにあるの? 全然悲観することないよ」と言って去っていきました(笑)。
―― そういう言葉を、みんな信じたいと思ってると思うんですが、やっぱりひとつひとつ変えていって、知ってもらう、そういう積み重ねは大事ですね。
高嶋 頑張ります。
礒崎 皆さん、アワードの投票のほうもよろしくお願いします!