マルケトはユーザコミュニティとともに成長する
会の冒頭、株式会社マルケト代表取締役社長の福田康隆氏より、同社の近況についてのアップデートがあった。
「今年の8月29日に「第1回 マルケトユーザグループミーティング」が開催され、45名のユーザ様にお集まりいただきました。本日は100名のマルケトユーザにお集まりいただくことができました。マルケトにとって、最も重要な事はユーザコミュニティーの成長と活性化です。これはマルケトがグローバルで共有している価値でもあります。スタートしたばかりの日本法人ですが、これからもユーザコミュニティーとともに成長していきたいと考えています」(福田氏)
アップデートは、第1回ユーザグループミーティングで福田氏が表明した次の「4つの注力ポイント」の進捗報告として説明された。
1つ目のポストセールス体制の強化については、カスタマーサポートとコンサルティングに強力なメンバーが加わったことが報告された。テクニカルサポートを担当する佐下橋(さげはし)氏、導入コンサルティングを担当する安竹(やすたけ)氏だ。また、米国本社とオーストラリア法人にも日本人の社員が入社した。日本のユーザをサポートするために、グローバルな規模で体制を強化していることが伺える。安竹氏は、前職でユーザとしてマルケトを利用していた経験がある人物。ユーザ視点でのコンサルティングやサービスの実現への期待の声が、参加ユーザから寄せられていた。
また、営業の責任者としてとして中村氏も紹介された。同氏は11年に渡ってセールスフォース・ドットコム日本法人の成長をリードしてきた中心メンバーだ。「マルケトの製品やサービスに満足していただけるようユーザのコミュニティー活性化に注力し、皆さんと共にビジネスを成長させていきたいと思います」と中村氏は表明する。
加えて、プロダクトマネージャーの宮下氏が紹介された。宮下氏は日本で最初のマルケトユーザであり、第1回マルケトユーザグループミーティングにはユーザグループのリーダーとして参加していた。ベテランマルケトユーザである同氏の経験を踏まえて、日本ユーザの声を今後の製品に反映してくれることが期待できるだろう。これにより、同社にはサポート、コンサル、セールス、マーケティング、アライアンスと、要所をリードするメンバーが整った。
また、マーケティングオートメーションの市場育成の取り組みとして紹介されたのが、パートナーとのエコシステムとなる「LaunchPoint」だ。LaunchPointはマルケト製品に連携する製品や、サービスのパートナーエコシステムであり、様々なマーケターのニーズに最適なソリューションを提供するための重要なプラットフォームとなっている。
「開始から2年で、グローバルではすでに400社のアプリケーションやサービスが登録されています。現在、日本のプロダクトベンダーやサービスプロバイダーでもマルケト連携ソリューションの開発が複数進行しています。今後も引き続き、エコシステムの構築に力を入れたいと考えています」(福田氏)
コンテンツも増強、2月には国内初のイベントを開催
もう1つのテーマが情報発信だ。第1回のユーザグループミーティング開催時には、まだ日本語のWebも本格稼働できていなかった。しかし、現在では自社の日本語Webサイトもオープンし、マーケティングオートメーションの全体像を解説した100ページにも及ぶ「マーケティング・オートメーション完全ガイド」といった資料も公開されている。2015年には、リードスコアリング、リードナーチャリング、ソーシャルメディアマーケティング、コンテンツマーケティング、マーケティングアナリティクスなど、さらに専門的なコンテンツが公開される予定だという。
また、日本においてのユーザ向けトレーニングも開始している。1回目は12月9日、10日の2日間にわたり開催された。次回は2月開催を予定。以降は毎月の開催を計画しているという。「2日間ハンズオンでしっかり学習をします。このトレーニングを受ければ、マルケトを一通り使えるようになります」(福田氏)
4つ目のポイントであるグローバルのベストプラクティス共有では、大きなニュースが外部公開に先駆けてアナウンスされた。それが、2015年2月17日に開催される「Marketo Summit Japan 2015」の概要だ。このイベントでは、現代マーケティングのビッグ3の一人であるドン・シュルツ氏をキーノートに迎え、シュルツ氏の提唱したIMC(統合マーケティングキャンペーン)は、現代のテクノロジー環境でどのように実践されるのかについて語られる。
日本のマーケティング管理職にはシュルツ氏のファンは多く、その点からもこのイベントは注目されている。さらに、日本でのマーケティングオートメーションの活用事例や、マルケト自身が自社製品をどう使ってマーケティングを行っているかといった内容についても紹介される予定だ。
福田氏は最後に「マーケティングオートメーションを活用するためには、現場での活用のノウハウやベストプラクティスの共有が何よりも重要です。そのため、このユーザコミュニティーが今後も成長し、より活性化していくことは、マルケトにとってもユーザの皆様にとっても重要だと考えています。ユーザコミュニティーの成長にご尽力頂いている、リーダーの堀内様に心よりお礼申し上げます」と、熱い思いを伝えた。
トレジャーデータはマルケトのユーザでありパートナー
続いてのセッションでは、マルケトユーザグループのリーダーを務めるトレジャーデータの堀内健后氏と、米国トレジャーデータのマーケティングオペレーション責任者であるRyan Garrett氏が登壇。トレジャーデータにおけるマルケトの利用について語られた。
同社は日本人の創業者3名が米国シリコンバレーで2011年12月に創業した、ビッグデータに特化したクラウドデータサービスプロバイダだ。Webアクセスやオンライン広告のログをはじめとした大量のデータをクラウド上に蓄積・集計して可視化する、クラウド型データマネージメントサービス「トレジャーデータサービス」を展開する。日本での事業開始から1年半ほどだが、ユーザやパートナーにはネットビジネス、デジタルマーケティングリーダー企業が名を連ねる。
「我々はマルケトのユーザでありながら、パートナーでもあります」と堀内氏は語る。「トレジャーデータのユーザの大半は、マーケティング領域でのデータ活用のためにトレジャーデータを活用しています。トレジャーデータとマルケトが連携することで、様々なソリューションが実現できます。例えば、マルケトで収集したお客様の行動履歴データをトレジャーデータサービス上に蓄積し、他のデータソースと組み合わせてデータ分析を行うといった「マルケト→トレジャーデータ」への連携。または、スマホアプリの利用履歴やDMPのデータといった、トレジャーデータに蓄積している履歴情報をマルケトのリード情報として連携するという、「トレジャーデータ→マルケト」へのデータ連携もあります。現在、トレジャーデータとマルケト間のデータ連携のアダプターを準備しているところです」(堀内氏)
トレジャーデータ自身では、マルケトをリードジェネレーションにおいて利用しているという。営業担当者が利用するCRM、SFAのシステムにはセールスフォースを、さらに日本では名刺管理のためにSansanも活用する。「社内では20以上のクラウドサービスを活用していますが、日本ではこの3つのサービスを組み合わせてマーケティング活動を行っています」と堀内氏は説明する。
トレジャーデータのマルケトの導入や運用について、マーケティングオペレーションを統括しているRyan Garrett氏から紹介された。「トレジャーデータではマルケトとCRMの運用を行う組織が、IT部門ではなくマーケティングの組織の中にあります」とGarrett氏。このような役割は “マーケティングオペレーション”、“Marketing OPS”として米国では一般的になっているという。日本でも業務アプリケーションがクラウド化されたことで、アプリケーションの運用やチューニングをエンドユーザ部門で行うケースが増えている。その方が効率的なシステムの運用が可能で、ビジネス環境の変化にもスピーディーに対応できるからだ。
トレジャーデータがマルケトに移行した理由とは?
トレジャーデータでは以前、他のマーケティングオートメーションツールと複数のポイントソリューションを利用していた。しかし現在では、その全てをマルケトで実現しているという。
「お客様の購買やサービス利用のプロセスで、何が起きているのか実態を調べてみました。すると、そのとき使っていたマーケティングオートメーションツールでは、機能が不足していることがわかりました。そこで、十分な機能を備えているマルケトを導入することにしたのです。また、トレジャーデータ固有の要件として、自社のシステムと連携できることも重要でした」(Garrett氏)
現在、トレジャーデータの自社サービスシステムとマルケトはREST API経由でデータ連携をしている。これによって、トレジャーデータのアカウント開設後にサービスの利用が進まない・サービスの利用頻度が下がっているユーザには、その状況に適した内容のメールを配信する。配信したメールが開封されない場合は、別のユーザに対して利用促進のキャンペーンや使い方ガイドの資料を送付する。といったフローを自動化している。
数多くのマーケティングオートメーションに触れてきたGarrett氏は、マルケトの特徴について「マルケトはマーケターの考え方に合わせて機能が設計されています。マーケターにとっては理解しやすく、マーケターのアイディアを短期間で簡単に実現できます。また、マーケティングキャンペーンのベストプラクティスや、スコアリングのノウハウを日米間で簡単に共有できることも大きなメリットです」と表現した。
マルケトのベストプラクティスを共有するパートナー
次に、株式会社メジャースがマルケトを活用した自社のサービスを紹介した。同社はイベントの企画・運営や自社メディアの運営を行う、マーケティングの総合プロデューサーだ。
「マーケティング支援サービスを提供する際に、自社のインフラとしてマーケティングオートメーションを使いこなせるかが重要な差別化要因になっています」と難波氏は説明する。「例えばイベントサポートのサービスを提供する場合、マルケトをサービスのインフラとして活用することで、イベントの集客から開催後のフォローアップも含めた、価値の高いサービスを提供することができます。お客様のニーズも単にイベント運営ができれば良いという時代ではありません。イベントの価値を高められる包括的なマーケティング支援サービスの提案が求められています」(難波氏)
加えて、メジャースでは、マルケトの導入・運用サービスも提供している。「メジャースはコンサルティングよりも、実践的なサービスが売りです」と、田所氏は強みをアピールした。
また、メジャースは前述の「Marketo Summit Japan 2015」の総合プロデユースを担当している。マルケトの宮下氏は、「このイベントのバックエンドでは、当然ながらマルケトを使って運営しています。イベントの実行に関するプロセスは、マルケトが自社で積み上げたマーケティングオートメーションのベストプラクティスをベースにしています。つまり、様々なワークフローや、リードスコアリングなどのベストプラクティスをメジャースと共有するのです。イベントで共有されたノウハウを、メジャースのサービスを通じて、多くのマルケトユーザに活用して頂きたいです」と語る。
イベントサポートを通じて、マルケトのベストプラクティスを自社のノウハウとして獲得するチャンスを得たメジャースは、マルケトユーザにとって「話のわかる心強いマーケティングサービスプロバイダー」となることが期待できるだろう。
ユーザからのフィードバックで続く進化
続いて、宮下氏からマルケトの機能アップデートの一部が紹介された。まずはSEO機能、これはマルケトで作ったキャンペーン用ランディングページが、そのキャンペーンで狙っているキーワードに最適化できているかをチェックするためのツールである。
この発表を受け、会場からは日本語に関するサポートや、複数検索エンジンのサポートに関する要望が上がった。「要望は本社の開発に上げます」と、早速プロダクトマネージャーの宮下氏が対応を約束する展開となったのが印象的だ。
続いて紹介されたのが、「Facebook カスタムオーディエンス連携」だ。これはマルケトで管理しているリード情報をFacebookのカスタムオーディエンスとして簡単に連携できる機能。マルケトのデータベースに登録されている見込み客がFacebookにアクセスした際に、自社の広告を表示することができる。この機能をマルケトにインストールすると、リードリストに「Facebook」ボタンが追加される。クリックすればリストを簡単にFacebookに登録できる。
「これまでFacebookのターゲティング広告は、BtoB企業では有効に使えないと考えられていました。ですが、Facebookカスタムオーディエンス機能とマーケティングオートメーションがシームレスに繋がることで、全く世界が変わります」(宮下氏)
最後に宮下氏は自身のマルケトユーザとしての経験を振り返り、ユーザに語りかけた。「デジタルマーケティングでは、新しいサービスやマーケティングのテクニックが生み出されています。そして、オープンで使いやすいマーケティングオートメーションがあれば、自分のアイディアを簡単に実現できます。皆様もぜひ、新しい機能をご利用ください。そして、忌憚のないご意見や成果を教えて頂ければと思います」(宮下氏)
マルケトのユーザグループミーティングには、ユーザ同士や、ユーザとメーカーがオープンに意見を出し合い、情報を共有できる雰囲気が流れていた。ユーザコミュニティーの成長と活性化は、ユーザとメーカーの相互にとって有益で望ましいことだ。その目標を経営トップが繰り返し語る姿は、ユーザにとって心強いものだろう。これからもユーザーグループミーティングは回を重ねていくはずだ。そこで交わされる議論は、メーカーにとっては「製品やサービスの向上」に、ユーザにとっては「競争力のあるマーケティングの実行とマーケターのスキルアップ」へと結実することだろう。
冒頭に福田氏が語った「マルケトはユーザコミュニティーとともに成長する」というメッセージが鮮明に伝わってくるイベントとなった。