AOL PlatformsグローバルCEO Bob Lord(ボブ・ロード)氏は、2015年広告業界における5つの進化を予測した。同氏は「広告テクノロジーの分野においては「様子を見て利用を決定する」というアプローチを取る期間はとうに過ぎた。データに裏付けされたプログラマティックなプラットフォームと日々進化する分析手法に後押しされ、私たちは急速に前進している」と見解を示している。
1 「データに基づいたクリエイティブ」の台頭
CMOとCTOの役割の統合については様々な場所で議論され、広告業界における旧体制のイメージである「Mad Men」(編集部注:Mad Menとは1960年代の広告業界を描いた米国ドラマ)から新しいデータをベースとした「Math Men」へ時代は移り変わっていると揶揄されてきた。しかし実際には、今日のトレンドはその中間にある。
デジタル広告の分野では、クリエイティブワークと戦略的運用の融合が始まろうとしている。つまり、広告を適切な場所に表示するだけでなく、オーディエンスとの関連性に沿って、クリエイティブを変えるということだ。そして、その最終目標はテクノロジーを用いてオーディエンスに関連性の高い広告を配信し、ストーリーをより生き生きと描き出すこととなる。
そこでの成功するクリエイティブとは、クリエイティブワークと戦略的運用の融合を理解し、オーディエンスの最適化とシナリオプランニングに重きを置くこだ。それにより、プログラマティックなクリエイティブを生み出すことができる。
2 プログラマティックの焦点は「内容」から「効果」に
2014年、ブランド広告主と代理店はプログラマティックに大きな投資を行った。効率化と効果を求め、マーケティング組織のいたるところに自動化システムやプロセスを取り入れている。2015年は、これらの投資が高いROIをもたらすと考えられる。
プログラマティックの未来へ投資をした広告主たちは、今様々なソリューションを実験し、事業をサポートするテクノロジー戦略を生み出している。例えば、マーケティング担当者が購入プロセスを簡略化し、10以上のテクノロジーシステムから、ひとつ、または数種のコアシステムへ業務を統合し効率化を図っている。この戦略を固定することで、今後ROIの最大化に注力することができるようになる。
したがって、2014年はプログラマティックの「内容」が焦点となった年だったが、2015年は「効果」に焦点が当たる年だと言える。より高いブランドリフト、より大きな売上向上につながり、結果がさらに明確に見えてくると考えられる。
3 TV広告バイヤーがオーディエンスデータを基にしたプログラマティック広告を導入
eMarketerの報告書にある通り、テレビは700億ドルを稼ぐ最大かつ最も効果の高い広告媒体だ。しかし、テレビ業界は今まさに「創造的破壊」を経験しようとしている。データに基づいた自動広告出稿やキャンペーン効率化、測定可能な属性などを実現するテクノロジーは、デジタル分野で既に何年も利用されてきた。今、テレビ業界にもその波が押し寄せている。また、古いシステムでもエンドツーエンドの自動化を可能にする統合も現在進んでいる。
2015年、放送局・ケーブルテレビ・有料放送事業者は、テレビ広告の価値を広げるべく、システムをオープンにしはじめると考えられる。プログラマティックテクノロジーを導入し、年齢や性別だけでなく、より詳細なオーディエンス属性に基づいて広告取引を行うようになる。
この動きは、データドリブンマーケティングという広告業界全体の動向と一致している。これにより、全てのスクリーン広告について、広告主がシームレスにプランニング・購入・測定を行い、ROIを押し上げる要因を理解できるようになる。しかも、その作業は全てひとつのプラットフォームで実現すると予測できる。
4 先進的なブランドが自社でのデータ保持を要求
データはマーケターにとって最も重要な資源のひとつだ。収益構造の根幹であり、ビジネスの原動力と言える。賢明なブランドは「データを明け渡す」ことの悪影響と、データを自社で保持することの重要性を一層強く認識するようになっていくと考えられる。
多くのブランドは、代理店のトレーディングデスクなどの第三者機関が自分たちのデータを保持していることに気付き始めている。問題は、広告主が第三者機関とすでに締結している契約書上で、そのデータを譲渡する内容に同意しているケースが多いことだ。そのため、誰が広告を見たのか・クリックしたのかなどの重要なキャンペーンデータにブランドがアクセスできなくなっている。
データ分析は、各キャンペーンの結果を次のキャンペーンに活かす発展的なプロセスだ。この状況は、将来的により的確なキャンペーンを実施する能力をブランドから奪っているといえる。この状況を鑑み、広告主が広告のプロバイダーに対し、厳しい質問を投げかけ始めること、そして可能な限り、広告データの完全なる所有権を求めることが予測できる。
5 パブリッシャーがプログラマティックなプラットフォームの活用を開始
パブリッシャーがプログラマティックなプラットフォームを利用するメリットは、運営とワークフローの自動化に留まらない。自動化により効率化されたプロセスはコスト削減の観点から重要だが、プログラマティックで収集されたデータも広告枠の価値を最大化させる大きなメリットとなる。
パブリッシャーは従来購入者側の技術とされてきた、洗練されたターゲティングやフリークエンシーキャップ、ブランドセーフティおよびその他のデータドリブンツールを活用することで、より詳細に主要オーディエンスを特定・セグメント化することができるようになる。このデータを用いて、より多くのプレミアムブランドに対し、プログラマティックチャネルを通した購入を促すことが可能だ。プログラマティックなデータの最適化は、特にミッドテールからロングテールのパブリッシャーがプレミアムバイヤーを呼び込むのに有効だ。つまり、知名度だけで勝負するのではなく、オーディエンスの質で勝負できると言える。
販売者サイドでの利用におけるプログラマティックテクノロジーは、効率化とコスト削減の補助という存在から、有効性とより多くの利益を生み出すための手段へと変遷し続けると考えられる。賢明なパブリッシャーは、オーディエンスエクステンションやリターゲティングなどの技術を採用し、サービスを拡大する。最終的には、オーディエンス・スクリーン・広告フォーマット・時間・コンテンツの種類にまたがって最適なプランを立て、それを実行、分析し、レポーティングできるパブリッシャーが最大のROIを見込めるだろう。
Bob Lord:AOL Platforms CEO
AOL PlatformsのグローバルCEOとして、Advertising.com、AdLearn Open Platform、Adap.tv、ADTECH、MARKETPLACE、Pictelaを統括し、業界最高峰の広告、およびテクノロジー部門を指揮する。デジタルマーケティング部門の先駆者であり、米レイザーフィッシュの元CEO。TEDコミュニティの推進でもある。
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