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「ずっと見ていたい」メディアとは?AntennaとAdNearが考える「気持ちに寄り添ったアドテク」

 1日24時間、人はオンラインとオフラインの両方でどう過ごしているのか? 人気のキュレーションメディア「Antenna」は、位置情報を使った広告配信技術「AdNear」を使い、ユーザーの日常生活に近づく広告展開を行った。

オンラインと現実世界のアクションは違うのでは?

 新たな広告のあり方を提案するキュレーションメディア「Antenna」は昨年、位置情報サービスのAdNearと、その戦略パートナーであるマイクロアドプラスとある実験的なキャンペーンに取り組んだ。その3社が一堂に会し、新しい広告のかたちとテクノロジーの活用について語り合った。

― キュレーションマガジン「Antenna」は若い人たちに人気ですが、現在のユーザー数はどのくらいになるのでしょうか。

石田 現在のユーザー数は400万人以上、年齢構成は20代・30代・40代が約25%ずつ。男女ほぼ半々の割合になっているので、幅広い年齢層の方に男女問わず、楽しんでいただけるメディアに成長しています。

株式会社グライダーアソシエイツ 技術開発本部 サービスプランニング室 リーダー 石田宗隆氏

株式会社グライダーアソシエイツ
技術開発本部 サービスプランニング室 リーダー 石田宗隆氏

― 昨年、AdNearのジオ・フェンシング技術を使ってキャンペーンを実施したということなのですが、使ってみようと考えたきっかけは。

石田 私たちの課題を解決できるのではないかと思ったからです。アプリのオンライン・マーケティングでは、獲得単価や獲得効率に目が行きがちで、“刈り取り型”と言われるようなプロモーションが主流ですが、Antennaは長く使ってくれるユーザーを広告を通して育てていきたい。そのために興味喚起や認知拡大が可能な広告手法を試してみたのですが、どうしても行き届かないところがある。

 もうひとつの課題は、「オンライン上のアクション」と「リアルな世界でのアクション」に差があるんじゃないかと考えるようになったことです。例えば、サッカーのサイトをよく見ているAさんがいたとき、そのサイトに広告を出して、サッカーのスパイクを売りたい広告主がいたとします。でも、Aさんがそのサイトをよく見ていたとしても、リアルな世界でサッカーをプレーしてるかどうかはまた別の話です。Antennaは、いろいろな情報をできるだけ共感してもらえるような軸で訴求していきたいので、ユーザーがリアルな世界で何をしているのかを踏まえたうえで、オンライン広告をやりたかったのです。

― アプリでは「ゲーム」が非常に大きなカテゴリですが、キュレーションメディアとしては、また違う取り組みを必要としていたということですね。

石田 アプリというのは、1回だけ使ってすぐやめてしまうユーザーも多い。Antennaは1年以上継続して使っている人も多く、それはすごく光栄なことだと思っています。1日の中でオンラインに触れる時間は2~3時間。24時間のうちの20時間以上はリアルな世界で人間は生きている。その世界でどんなことをして、そこにはどんな感情があるのかを考えて広告を出すことで、「イヤだな」と思われない訴求をしていくというのが一番やりたいところですね。

 Antennaは関東や関西の大都市圏のユーザーが多いですが、すべての県にもユーザーがいるのでその方々に求められる情報も出していきたい。その一方で、ボリュームゾーンである25~35歳の男女が好む情報というのは基本的にはどの県でも変わらないんです。それを出し分けたり、広告を使ってユーザーに「こういう情報があるんですよ」と伝えることができれば、Antennaというサービスを使い始めたときに納得してもらえると思っています。

学生・主婦、そして「パーティ好き」を比較

― キャンペーンの内容について具体的にお聞きしたいのですが、まずAdNearはどういうサービスなのでしょうか。

猪谷 AdNearは、スマートフォンの位置情報を使った「Location-Based Service(LBS)」のひとつです。GPS機能を使って、特定のエリアにいる人のアプリに情報をプッシュ通知やショートメッセージを送るジオ・フェンシングがよく知られています。もちろんそれも可能ですが、AdNearの場合はモバイルアプリの広告欄に広告を配信します。位置情報はジオ・フェンスのためではなく、オーディエンスのプロファイリングにも活用しています。AdNearの海外の事例は製造業や流通業が多くて、メディアは少ない。今回のキャンペーンはAdNearを使った日本初の事例であり、世界初とも言えます。

AdNear リージョナルディレクター 猪谷 久氏
AdNear リージョナルディレクター 猪谷 久氏

角谷 時間とジオ(位置情報)のデータがあれば、その人がいるシーンを想像できる。Antennaの場合、今回は学生と主婦というセグメントで広告を実施しましたが、少し違う軸でAntennaと親和性がある人たちにも訴求していきたいということで、新たなセグメントを加えて提案しました。

石田 今回は、「学生」「主婦」に加え、「パーティーラヴァー(パーティ好きな人)」というセグメントを設けました。これは、リアルな生活が充実し、トレンドに敏感な、新しい情報が好きなユーザーという設定です。3つのまったく違うセグメント、違う趣味軸に出し分けをしたときにどうなるのかという、マーケティングデータも取りたかった。

AntennaのテレビCMは、北海道・大阪・福岡の3エリアでロケを行ない、その場所に行きたくなるような内容となっている

Antennaの動画CMは、北海道・大阪・福岡の3エリアでロケを行い、
その場所に行きたくなるような内容となっている

 ちょうど、北海道・福岡でテレビCMを放映する予定(2014年11月1日から2週間)だったので、その期間に合わせてスマートフォンのアプリにAdNearを使って広告を出し、北海道と福岡のマーケティングデータを集約することになりました。

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キャンペーンで見えた、北海道と福岡の違い

角谷 北海道と福岡の違いを明確化するためにクリエイティブを複数配信したところ、面白いデータが得られました。12時ぐらいに「家事の合間にAntenna」と「今日のレシピはAntenna」という2種類のバナーを配信したところ、福岡の主婦層は昼の12時にCTRがグッと上がる。その後、23時にまたピークが来るんです。おそらく、12時にはその日の夕食のメニューを考えなきゃという気持ちがあって、23時には次の日の朝ごはんかお昼のお弁当のことを寝る前に考えている。

株式会社マイクロアドプラス 第1セールスユニットチーフアカウントプランナー 角谷佳祐氏
株式会社マイクロアドプラス 第1セールスユニット
チーフアカウントプランナー 角谷佳祐氏

 一方、北海道は最初のピークが12時ではなく15時。その後、20時、21時、22時ぐらいにピークが来て、意外にも夜中の2時くらいにまたピークが来るんですね。パーティーラヴァー向けには、「今日の話題はAntenna」と「今日のパーティー何着てく?」というバナーを配信しました。その結果、「何着てく?」のほうは北海道のユーザーにはほとんど刺さらなかった。福岡でも「今日の話題」のほうがクリックされたのですが、「何着てく?」もCTRが高かった。

 エリアごとでは、ユーザーのライフスタイルにちょっとした違いがあります。これを可視化し、ユーザーインサイトに沿ったプランニングがエリア戦略を考える上で非常に重要だと思います。

 従来のリサーチでも可能な部分はありますが、実際に広告配信をしてどのクリエイティブでどんなユーザーが"どこで"反応したか? このリテンションを見ることができる。具体的な場所と時間に落とし込まれた、ターゲットの仮説検証を繰り返すことによって、定性調査や定量調査よりもリアルなデータをもとに、ターゲットのインサイトをつかむことができる。それは他のチャネルでも活用できる、より立体的なターゲット像の構築につながると考えています。

― 今回のキャンペーンの場合、エリアは福岡市ならその全域が対象なのでしょうか。

猪谷 パーティーラヴァーの場合、福岡では中州、西鉄福岡駅の近辺にあるトレンドスポットにいた形跡がある人をパーティーラヴァーに設定しています。つまり、あるエリアにいる人にリアルタイムでジオ・ターゲティングするのではなく、かつてそこでアプリを開いて、フットプリントを残している人をグルーピングして広告を配信しているのです。また、クラブの場所をピックアップして、その住所にフットプリントがある人も分類しています。北海道は札幌や旭川を対象にしたのですが、やり方は同じです。もちろん、リアルタイムにその場所にいる人に広告配信することも可能ですが、今回は違います。

石田 Antennaは「共感」というのが重要なキーワードなので、できるだけ嫌がられないように広告を出したい。オンラインの行動履歴をもとにするのではなく、ジオ・フェンシングの技術を使ってリアルな世界のアクションをベースにすることで、ユーザーがオンラインに入ってきたときに、それに則した訴求が出せるということが、今回実証できたと考えています。

 実施したのは2週間だけですが、継続的にやれば効果が出ると確信を持つことができました。AdNearは、個人情報を特定するというより、基地局の電波などを使って「おそらく、この人はこういう人だろう」と分析している。エリアを都道府県ごとに指定することができれば、非常に細かいマーケティングデータになるし、どこの県がAntennaと相性がいいとか、その県の方に好かれるためにはどういうメディアを目指せばいいのかを考えるヒントにもある。非常に面白い取り組みだったと思います。

面白い広告はコンテンツになる

― 石田さんがAntennaのグロースハックを統括するうえで、重視していることは何ですか。

石田 広告主としては必ず刈り取り系のメニューをやらなければいけない。でも、興味喚起をして知ってくれる人を増やしてダウンロードしてもらうファネルを大きくしていかないと、いつかアプリをダウンロードしたいと思う人が誰もいなくなってしまう。そういう状況を作ってしまってはプロモーション担当としてはだめだと思ってるので、そこはすごく気をつけていますね。

 もうひとつは「面白い広告はコンテンツになる」ということ。Antennaは、ネイティブ広告(記事体広告)を配信しているのですが、広告だと気づかずに見るユーザーも多い。広告であることを隠してるわけではなく、単純に内容が面白ければ自然に入ってくるからだと考えています。ですから、Antennaが広告主としてバナーを出す場合も、そのユーザーの生活に則した見せ方をしたい。「広告って邪魔なものだよね」という認識自体を変えていきたい。自然に入ってきて、必要なものを教えてくれる。そういう見せ方ができれば、アドテク自体も面白くなってくと思います。

 獲得単価も重要ですが、プランニングも大事。そうした中からコミュニケーションをして、広告を通してユーザーを育てていく。こういうことが非常に重要なポイントになると思っています。

角谷 Antennaでは、アプリをすぐにダウンロードをさせないようにしている。まず理解をしてもらうことを重要視しています。ミーティングを通じてそのことを知り感銘を受けましたし、AdNearならそれを実現できると感じました。気持ちよくAntennaを知ってもらうためにも、「気持ちに寄り添ったアドテク」とは何かを模索していきたいですね。

猪谷 AdNearとしても「気持ちに寄り添う」という部分は非常に重視しています。消費者が反応するのは、気持ちに寄り添うコンテンツであったり、広告主が気づかないような視点で何か面白いものを発見したとき。それは消費者にとってすごく気持ちいいことなんですよね。そこをうまく理解して情報を届けられれば、必ず消費者は受け入れてくれる。我々の本社はシンガポールにありますが、これから日本での経験を積み重ねていく中で、より精緻化したいと考えています。

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「ずっと見たいメディア」を目指して

― 最後に、これからの展望について。

石田 2014年はAntennaにとって急成長の年でした。ユーザーも現在では400万ユーザーを超えています。大々的にプロモーションを行う一方で、Antennaの中のコンテンツの「編成力」も進化してきました。例えば、朝アプリを開いたときとお昼に開いたときで、出ている記事が違う。そういう「編成」の概念を入れて、ユーザーが十人十色の趣味嗜好を持っていても適応できるような、皆さんが心地よいと思ってもらえるコンテンツをしっかりお届けしています。

 Antennaは公式提携メディアからコンテンツを預かり、ユーザーに届けるプラットフォームですが、今まで以上に出会いや気づきをお伝えできるようにしていきたい。オンライン上の行動をもとにセグメントすることで情報が集約されていくのは便利でいいこと。でも、僕はサッカーが好きなんですが、サッカーの情報だけ見せられても困ってしまう(笑)。どこに行けばおいしいものが食べられるのかというのは、サッカー好きでも知りたい情報だと思うんです。Antennaも「みんなが知っておきたいこと」プラス、一人ひとりの「特にこれが好き」というものもお届けする。この両軸がないと、ずっと見たいメディアにはなれないんじゃないかなと。

― 「ずっと見たいメディアになる」というのは、すごいテーマですね。

石田 一番目指していきたいところですね。夜、家に帰って「疲れた~」ってソファに座って、テレビをつけながら何となくながらスマホをしてる時間ってあると思うんですよね。SNSをチェックし終えて、「そろそろ寝ようかな。もうちょっと何かしたいけどやることないな。Antennaでも見とくか」っていうぐらい(笑)。それくらい生活に根づいてくれるとうれしいなと。

― 情報がほしいわけじゃない、いい気分で寝たい。そういうときに見るメディアというのは最強だと思います。

石田 Antennaはテレビ・ラジオ・雑誌・Webメディアなど350社以上と契約をしていて、1日に1000記事以上が更新されています。Antennaはリラックスしたタイミングで、生活を楽しくするメディアという位置づけでコンテンツを提供したいし、まったくAntennaのことを知らない人にも広告を通してそれを伝えていきたいですね。

角谷 今のお話は「ユーザー目線」というところにつながると思うのですが、それを考えるときに重要なのはシーンやシチュエーション。それを技術やデータを使って体現していきたいと思っています。マイクロアドが持っているCookieのデータ、AdNearが持っているジオのデータ、さらに提携しているCCCのリアルな購買データがあるので、そこにタイムラインを引けばシーンとシチュエーションがより明確化してくる。以前、石田さんから「AdNearってオフラインとオンラインのハイブリッドだよね」という言葉をいただいたので、そこを目指していきたいと思っています。

猪谷 AdNearとしては、プロファイリングのやり方や広告の運用をさらに日本市場に合わせていくことが一番のテーマ。今後はDMPを含めてさまざまなサービスと接続していきますが、予定調和のものばかり提案するようにならないようにしたい。空気を読むのはいいんですが、あまりにも読みすぎて驚きがなくなってしまうのも良くないので、逆にデータ分析することでサプライズも提案できるようにしたいですね。

― 3社違う立場から、これからの広告、アドテクノロジーについて語っていただきました。今日は本当にありがとうございました。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/02/04 17:13 https://markezine.jp/article/detail/21719