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プログラマティック市場拡大の起爆剤となるか/PMP専門企業intelishが描くネット広告の未来

 プログラマティック・バイイング市場の中で、いま最も注目を浴びているのがプライベート・マーケットプレイス(Private Marketplace/以下、PMP)と呼ばれる市場だ。先日2015年2月に、市場の拡大をトレーディング事業から支援するエスワンオーインタラクティブとVOYAGE GROUPの2社が、PMP専門企業であるintelishを共同設立した。PMPにかける思いと未来のネット広告のあり方について、エスワンオーインタラクティブ 代表取締役の淵上優氏、intelish 代表取締役の小川翔吾氏と同社 取締役の柏村昌司氏が語った。

いま、PMP市場を創世すべき理由

(左)株式会社エスワンオーインタラクティブ 代表取締役社長 淵上優氏
(中央)株式会社intelish 代表取締役 小川翔吾氏
(右)株式会社intelish 取締役 柏村昌司氏

淵上:今年2月、SSP(Supply Side Platform)を運営するVOYAGE GROUPと、プログラマティック・バイイング(広告枠自動買い付け)のトレーディングデスク事業を展開する当社・エスワンオーインタラクティブ(以下、s1o-i)が、国内初となるプライベート・マーケットプレイス(Private Marketplace/以下、PMP)専門会社「株式会社intelish(インテリッシュ)」を共同設立しました。本日はintelish 代表取締役である小川さん、取締役の柏村さんと共に、PMPという観点から見たインターネット広告の課題と未来について語りたいと思います。まず小川さんから、今回の新会社設立の狙いについてお聞かせ下さい。(関連記事はこちら)

小川:私はもともとVOYAGE GROUPで、SSP事業を通じてパブリッシャー(媒体社)サイドからネット広告に携わっており、媒体社の生の声を聞く環境にありました。ご存じのとおり、純広告の売上が年々減少する中、媒体社も人員削減などのコストカットで乗り切る必要に迫られており、今やコンテンツ制作コストも削減されかねない状況です。最近では、SSP/DSP(Demand Side Platform)を使ったRTB(リアルタイム入札)の広告枠を増やすことで収益化を図っておりますが、一方でこのRTB取引は少なからず課題があると考えています。

 というのは、RTBはメディアの広告枠ではなく、オーディエンスベースで広告を売買していたため、ブランド広告主からすると「どのメディアに出稿されるかわからない」わけです。そのため広告費においてRTBの占める割合は一部に留まり、結果として媒体社としては一部の枠を除きマネタイズが難しい状況は今も変わりません。私はこうしたネット広告に内在する課題解決に、ずっと興味がありました。そしてその解決策の一つの形が、PMPです。いまはブランド広告というとTV広告が中心ですが、今回PMPという新たな市場を創出することで、ネット広告市場がブランド広告に貢献できる土台を作っていきたいと思っています。

淵上:日本国内におけるプログラマティック・バイイングの伸び悩みが指摘されていますが、その大きな原因として「ブランド広告を展開する大手広告主からの需要が低い」という声が挙げられています。確かに、商品購入や会員登録などのダイレクト・レスポンスを求める企業に比べ、RTB市場でブランディングを目的とした広告が出ることは少ない。一方、米国では今やブランディング目的においてもプログラマティック・バイイングが主流と言われていますが、日本の広告ビジネスではまだ浸透していませんよね。

小川:そうですね。ただ今回PMPの市場が創出されることで、可能性は広がると思います。ただし、課題があるのも事実。具体的には、ブランディングに対し広告の貢献度や効果を測定するのが難しいという問題があります。こうした視点は、広告主からすると「なぜプログラマティック・バイイングに出すのか」という動機付けにつながるので、市場全体で解決すべきですね。PMPは、こうした課題を一つひとつクリアするための基盤になると期待しています。

intelishが目指すPMPとは?

淵上:2014年10月に国内最大手広告代理店の電通さんがGoogleさんと組んでPMP構築に乗り出すと発表しましたが、これは「PMP」というキーワードが業界に浸透する大きなきっかけとなりました。電通さんが構想するPMPはいわゆるプライベート・エクスチェンジで、あらかじめ定められたメディア・金額の広告枠を、一部の広告主との間で売買するものです。ブランドセーフティーを重視する広告主の課題を解決する新たな市場となる見込みです。これに対し、intelishの目指すPMPの特徴はどのようなものでしょうか?

小川:intelishが構想しているPMPは、米IAB(Interactive Advertising Bureau:インタラクティブ広告業界団体)が提唱しているPMPで、「広告在庫予約不可のオークション形式(Invitation Only Auction)」という形態です。これまでのオープンなRTB市場との相違点は、限定された広告主・広告枠で構成された、優先権のあるオークションであること。広告主は、広告の出稿先がどのようなメディアかを事前に把握できますし、またメディア側もどこが広告主なのか、わかっています。電通のPMPとは異なり、intelishのPMPはあくまでRTBがベースにあります。その理由は、プライベートで広告枠単位を切り売りするという形態より、RTBベースで選択肢を増やす方が需要が高いと思われるからです。 

淵上:なるほど。ではここで、intelish 取締役の柏村さんにお聞きします。従来のオープンなRTBとPMPとの違いをどのように広告主へ啓蒙していくのでしょう?

柏村:PMPと従来のオープンなRTBの違いを一言でいえば、「届けたいターゲット層にPRする確率が飛躍的に高まること」です。DSPは、言うなればオーディエンスを取り合うためのオープンな入札市場。私がs1o-iでトレーディング事業を担当していた時の実感からすると、ターゲットとするオーディエンスに確実に広告を掲出するため、入札額を上げたとしても成功率はせいぜい20%といったところでした。一方PMPは、広告主もメディアも限られますから、入札の勝算も当然上がります。完全オープンな競争で2割しか勝ち取れない状況ですが、PMPで勝率が10%でも20%でも上がるのあれば、広告主にとっては大きなメリットになるはずです。実際、広告主の方からは「確実にターゲット層にメッセージを届けたい」というニーズが上がってきており、今回のPMPはその課題解決に貢献するものとなるでしょう。

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PMPはブランド/メディアの価値を守れるのか?

株式会社エスワンオーインタラクティブ 代表取締役社長 淵上優氏

淵上:PMPは何といっても出稿先のメディアがわかっているという安心感があるのが魅力ですよね。極端に言うと「ターゲット含有率も高くインプレッション数が多くても、ブランドセーフティーの観点で、このメディアには出稿したくない」というのが広告主の意向だと思います。一方、メディア側はその課題にどのように取り組んでいるかということは非常に興味深いですね。媒体社サイドから向き合ってきた小川さんのご意見をお聞かせください。

小川:メディアから見た時の広告主のブランドセーフティーは2つあると思います。1つは、メディアの扱っているコンテンツが広告主のブランドを毀損するケース。もう1つは、コンテンツは問題ないけれど、広告枠が多すぎて枠の価値が下がっているケースです。メディアがまず取り組むべきは後者への対策です。これまでは純広が少なくなったから広告枠を増やさざるを得ませんでしたが、それが却って広告枠の価値低下を招いてしまいました。メディアの方に対しては、必要以上の広告枠を減らしつつ、当社のPMPを活用することで一つひとつの枠の価値を高める支援をしたいと考えています。

 一方、取り組み方が難しいのが、コンテンツについてです。そもそもコンテンツの是非自体、広告主によって判断基準が変わるので、何が良くて何が悪いのかは判断できません。なので個人的には、媒体社側がどういうメディアにしたいかを考えて、そこをアピールしていくことが大切だ思っています。コンセプトに合う広告主にとっては、そのメディアとの相性は間違いなくいいはず。媒体社は、メディアの特性や独自性をもっと市場にアピールすべきですね。

柏村:ブランド広告主になるほど、「広告枠」を考えざるを得ないのは当然の流れですよね。RTBでは、「どのメディアのどの広告枠なのか」ではなく、オーディエンスで出稿先を考えるわけですが、その部分を大事にしながらも、やはり「どこの枠に出稿しているのか」が気になるのは企業としては当たり前の感覚だと思うんです。そこをPMPにより可視化することで、広告主はオーディエンスという「人」の部分と、広告枠という「場所」も戦略的に重視できる。メディア側も、広告主を認知できる。なので、双方にとって良い効果を生み出せるのではないでしょうか。例えばメディア側から見れば、PMPで広告主が見えるようになり、オーディエンスと広告主の双方に有益なコンテンツ制作を考えられるようになる。こうした相乗効果が生まれることを期待しています。

メディアの価値を再認識するPMP/広告枠とオーディエンスの関係

株式会社intelish 代表取締役 小川翔吾氏

淵上:ありがとうございます。その視点は良いですね。当社も広告枠とオーディエンスの関係はとても重要なポイントだと考えています。そしてここでいう広告枠=どのコンテンツの広告枠かということです。例えばCRMの軸で考えると商品を買った人が頻繁に接触するコンテンツを探したい。商品購入意欲が高くなったコンテンツを探したい。というニーズは確かにありますね。

柏村:そうですね。ブランドセーフティーの観点でも、企業はどのコンテンツの広告枠なのかにも気を配る必要があると考えています。PMPは、オープンなRTB市場では見えなかったオーディエンスや広告主やメディアが可視化されることで広告主とメディアが力を合わせてコンテンツ生成していくためのプラットフォームという捉え方もできると思っています。

淵上:その捉え方はとても共感できますね。トレーディングデスクとしても、オーディエンスとどのコンテンツの広告枠か、さらに効果的なクリエイティブを提案するという運用要素が増えていくということですね。PMPを活用し蓄積された広告主データとメディアデータ、さらに精度を上げるための3rdPartyデータおよび広告配信結果データを分析し、新しい切り口を発見していくスキルも求められることになるでしょうね。

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PMPの登場で、より戦略的なプランニングが求められる

株式会社intelish 取締役 柏村昌司氏

淵上:トレーディングデスク事業視点でみてもPMPプラットフォームを活用すると買い付けできるメディアが増え、運用する幅も広がるため非常に喜ばしいことです。従来の運用はオーディエンスプランニングは細かく設計するもオープンオークションで購入できる枠は限定的だったため、リーチの最大化は常に課題が残っていました。PMPの登場は従来のオープンオークションで行っていたオーディエンスプランニングに加えリーチを最大化するためのメディアプランニングもとても重要な運用要素となります。そして「広告主とメディアとトレーディングデスクが連携しオリジナルな買付け環境およびコンテンツ開発を構築していくことが可能だと理解しており可能性が広がるなと考えています。

 今後、広告主はオープンオークションとPMPの役割を踏まえた上で、自社戦略に応じてどちらを採用するかを決めることになりますし、トレーディングデスクに求められていることは、各市場の特性に応じた運用を行いより戦略的に「オーデォエンス×メディア(コンテンツ)」を意識したプランニングできる人材が求められると考えています。

柏村:運用に選択肢が増えることは、喜ばしいですよね。PMPができたからオープンなRTBがなくなるわけではなく、それぞれの良さがあります。ダイレクト・レスポンスを求めている企業は、オープンなRTBでより効果的なタイミングでターゲット層に訴求することができますし、一方でネットユーザーにリーチしてブランディングを高めたい企業にとっては、PMPで担保される透明性は大きな魅力です。だからこそ、トレーディングデスクの役割が重要になりますよね。そういう意味では、マーケティング視点を持ったトレーダーがより求められるようになりそうです。

2015年は「PMP元年」、広告の未来を見据えて

淵上:電通さんが発表した「2014年 日本の広告費」によると、インターネット広告費は前年比112.1%で1兆519億円となり、初めて1兆円を超えました。このうち運用型広告は5,106億円と123%強の伸びを示しています。今年本格化するPMP市場にとって、この状況は追い風になると思います。そこで最後に、小川さんと柏村さんそれぞれの立場で、今後の抱負をお願いできますか。

柏村:今回、PMP専門事業社であるintelishが設立されたことで、これまで「デマンドサイド(広告主)」「パブリッシャーサイド(媒体社)」に分かれていた環境が、初めて1つになれたと感じています。これまで、互いに「こういう風にやりたい」というニーズがあったはず。例えば広告主が「自分たちに合った独自のインベントリを作っていきたい」と思っても、メディア側とそのインベントリを作っていく環境がありませんでした。

 今回、SSPとDSPのノウハウを持つintelishが設立されたことで、初めて広告主とメディアの間を橋渡しする土台が整ったんです。昔ながらの広告代理店がやっていたことなのでしょうが、ネット広告の中で、例えば広告主が媒体社を訪問し、「この広告枠を開放してくれたら購入します」と交渉することはありませんでした。また媒体社の方でも、「この枠はどの広告主に需要があるか」が分からなかったのです。PMPは「クリアなマーケットの創出」といわれていますが、そういう意味では本当に“間”がなく、双方が歩みよってお互いのニーズをきいて条件を決めることができる。これをできるのはintelishだけだと思います。

小川:いまの話に重複することが多いのですが、PMPにより、媒体社にとっても非常に動きやすい環境になるはずです。これまでのように、価値低下を招くと分かっていながら枠をむやみに増やすのではなく、本当に価値ある広告枠を育てていくことができる。今までは、広告主のメディアプランニングにしろ、メディアの媒体価値向上にしろ、相手が見えない中でも進めざるを得ませんでした。今回のPMPにより、双方の価値・事業向上に大きく前進するはずですし、そこを支援するのがintelishの役割だと考えています。

淵上:ありがとうございます。PMP市場の創出を担うintelishの活躍には本当に期待しています。我々としては、広告主のKPIに合わせ、オーディエンスを発見したり、ブランド価値向上を支援する計測方法の導入、また配信結果データだけでなくメディア接触データも活用し、より「誰に」「どこで」「何を」「どうなった」のプラン二ング力と実行力が重要になってくると感じています。

 そして当社は「事業支援型トレーディングデスク」と謳っているので、戦略的なプランニング機能および運用専門機能を活用してお取り組み先の事業の成長に貢献する役割に注力したいですね。そしてPMP環境を活用することはトレーディングデスクとしての腕の見せ所だと感じており、とてもワクワクしています。最後にPMP専門会社としてintelish社の今後の展開がとても楽しみですね。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/03/17 11:00 https://markezine.jp/article/detail/22020