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オウンドメディア最前線

「ソーシャル時代に適した“パブリッシャー”へ」メディア化で成長した「北欧、暮らしの道具店」次の一手

メディアからパブリッシャーへ 紙媒体の制作・販売も軌道に

── 源泉掛流しのコンテンツを、どのような体制で作られていますか。

 現在社員数は17名で、コンテンツ制作を専業でやっているのは5名です。でもほとんどの社員が、何かしらの形でコンテンツ制作に関わっており、その意味では「全員が編集者」です。最低限の撮影と執筆能力が、採用の条件です。

 私たちが大切にするのは、「自分が読みたいものを作れるかどうか」。「みんなが読みたいだろうもの」を予測し、そういうコンテンツを沢山つくるにはメディアでプロフェッショナルに仕事をされてきた方の力が必要になってしまうと思います。

 しかし「自分が読みたいもの」が何であるかが掴めているかどうかは、そのような仕事の経験がなくてもわかっている人にはわかっています。むしろ掴めている「自分」と「お客様」の感覚が近ければ近いほど、「自分がどういうものが好きか?」「どういうものを面白いと思うのか?」「この時期だったらどんなコンテンツを読みたいのか?」と、自分に問いかけて企画を立てて行く方が精度が高くなると思っています。

 だから当社の社員は大半が「元お客様」です。彼ら、彼女らには「自分が読みたいものを作って」と言えば、結果としてお客様が求めるものが生まれてくるのです。

── 御社はECサイトだけでなく、Facebookやインスタグラムなど複数のSNSを使っています。同時にこれだけのツールを使う必要はありますか。

 あります。現在、当社ECサイトへのアクセスのうち85%はスマホ経由です。彼らの多くはブラウザを能動的に開いてブックマークからアクセスしたり、PCでの利用に比べて検索することも多くありません。

 結果スマホ経由のアクセスのかなり多くの部分は、同時にソーシャルメディア経由ということになっています。そのため現在全てのアクセスのうち45%近くがソーシャルメディア経由となっています。

 でもよくよく調べてみると、実際SNSを通じてリーチできているユーザーはサイトに流入するユーザーの10倍以上いるんです。リーチできているユーザーの大半はソーシャルメディアに配信されたコンテンツだけをみるに留まっていて、サイトまで訪問することはない。

 そう考えると、SNSは集客導線でサイトへランディングさせることがゴールという考え方が、合理的なのかどうか疑問を感じるようになりました。むしろ各ソーシャルメディアに配信するコンテンツで完結して楽しんで頂けるようなパッケージをつくり、そこで最大限リーチし、エンゲージメントを高めることを追求する方がコンテンツの価値、メディアの価値を最大化するのではないかと考えるようになりました。

── それはECメディアとしては、ずいぶん割り切らなければ出来ない考え方ですね。

 そうですね。確かに現在の我々のメディアのマネタイズ手段はECでの物販ですので、サイトに集客してそのうちの幾ばくかのお客様に買い物をしてもらわなければビジネスを成り立たせることが出来ません。

 しかし、メディアとしての価値はどれだけ多くの人にコンテンツを届けられるか、どれだけコンテンツに触れた人を満足させられるかだと思うので、サイトに集客しようとすることがコンテンツの価値をより広く、深く届けることを妨げるとしたら、違う方法を考えなければ行けないと考えています。

 現在は物販にあわせて広告事業を展開する準備を進めており、コンテンツがより広く深く沢山の方に届くこと自体をマネタイズするビジネスモデルの確立を目指しています。

── ソーシャルメディアに配信するコンテンツで、完結して楽しんで頂けるようなパッケージというのは具体的にどんなものなのでしょう?

 例えば、3月初旬に「余ったフランスパンをフレンチトーストにする」というコンテンツをインスタグラムにアップしました。投稿は2回に分け、1回目には完成したフレンチトーストの画像を、2回目には作っている過程の画像をアップし、2回目のコメント欄に作り方をまとめました。最近はこのような投稿が好評です。

 つまり、いま目指すのは、自社から生まれたコンテンツを様々なパッケージに合わせてパブリッシュする「パブリッシャー」です。私が言うパブリッシャーのイメージは「コンテンツのマスターデータベースを保有し、発信する主体」と言えばイメージしやすいかもしれません。

 従来はサイトに来訪いただくことを意識しておりました。しかし、これからはコンテンツを制作したらFacebookやインスタグラムに合うパッケージでパブリッシュする。つまり、コンテンツに触れた場所で楽しんでいただくような方針に発想を転換したのです。

── メディア化を通り越して、いまはパブリッシャーを目指しているのですね。

 はい。ですから、Web上のメディアですが、One to Oneのインタラクティブなコミュニケーションよりは、マスコミュニケーションの実現に取り組んで行きたいと考えています。

パブリッシャーであるからには、「1:1」や「n:n」のコミュニケーションではなく「1:n」でどれだけ価値あるコンテンツを沢山の方に届けられるか、というところだけにこだわりたいと思っています。なのでソーシャルメディアでのお客様との交流も、個別にメッセージのやり取りをするような形はほとんど取らず、あくまでも私たちがつくるコンテンツの流通経路として活用しています。

── へえ、「双方向を目指さないWebメディア」は初めてです。そういう考え方もあるんですね。最後に、今後の方向性も教えて下さい。

 現在、オフライン上の出版も手がけています。これまで当社では、商品を買って頂いた際に「暮らしノオト」という冊子をお送りさせて頂いております。12ページほどの小冊子で、内容はシーズンごとに変わりますが、商品を購入するタイミングによっては手元に届かない号もある。

 「バックナンバーが欲しい」というご要望に応えて、現在360円で販売しています。薄い雑誌と同じくらいの金額ですが、月3千冊くらいご購入頂いています。

 またムック本も作りましたが、こちらも既に2千冊くらい購入頂いています。今後は記事稿の制作、そして直販の出版社としての事業も模索しています。「パブリッシャー」の方向性をより強めていくことになると思います。

──ありがとうございました。

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この記事の著者

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター

74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/04/08 11:00 https://markezine.jp/article/detail/22171

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