日本における新しいカスタマージャーニー
日本企業のカスタマージャーニーの創出は、どうなっているのだろうか。そこで重要なカギになってくるのが、昨年11月に発足された「JAPAN CMO CLUB」だ。同組織の目的は、トップマーケター同士のネットワークを作り、新しいマーケターの在り方を探ることで、マーケティングの知見やノウハウを蓄積。その活動や成果を国内外に発信することだ。セールスフォース・ドットコムは、立上げと運営に参加している。
「グローバルの視点では、CMOは当たり前の存在です。そして、トップマーケター同士が接触することで、ブランド間のコラボレーションが生まれています。しかし、日本ではまだ一般的ではありません。JAPAN CMO CLUBがトップマーケターの集う場になればと考えています」(加藤氏)
現在トップ企業27社がメンバーとなっており、カスタマージャーニーや今後のCMOの役割について話し合われている。加藤氏は参加するマーケターに、必ずしている質問がある。それが、「自社と顧客にとって大切なカスタマージャーニーの瞬間とは?」というものだ。
例えば、ヘアケアや化粧品を扱うロレアルの場合、データ解析の結果2回目の購入率が非常に大切であることがわかった。オンラインで購入して、オフラインでも購入した顧客は、長期間ロイヤルカスタマーでいる可能性が高いという。そこで同社は、オンラインで購入した顧客に、オフラインで使用できるクーポンを配布。これにより高い効果を得た。
一方、アフラックは、新しいカスタマージャーニーにおいては「AIDMA」や「AISAS」に代わる「ORACAS」が重要であると提唱する。「ORACAS」は、「Occasion(きっかけ)」「Research(調べる)」「Advocate(推奨)」「Convince(説得)」「Action(購入)」「Share(共有)」の頭文字をとったものだ。従来カスタマージャーニーは広告による「Attention」が起点となることが多かった。しかし、新しいカスタマージャーニーの起点は、消費者のライフステージの変化という「Occasion」がメインだ。そして、「Advocate」つまり第三者の意見を聞いて、「Convince(納得)」しないと「Action」にはつながっていかないというわけだ。
「お客様視点」が何よりも重要
JAPAN CMO CLUBに参加する企業はそれぞれに、カスタマージャーニーにおける「重要な瞬間」を持っている。そして、加藤氏はマーケターとの議論の中で、各社に共通する方向性が見えてきたという。
「どの企業もコモディティ化からの脱却を目指しています。その解決方法に『お客様視点』を置いていることがわかりました。つまり、お客様視点からデータを分析し、価値あるジャーニーを創出することで、ブランドのコンセプトがビジネスイノベーションになっていく。これを実現するための組織として企業や部署があり、そのリーダーがCMOと呼ばれることもあるのです。
突き詰めれば、お客様視点でカスタマージャーニーを考えることこそが最重要事項なのです。言い換えると、新時代のカスタマージャーニーを理解し、お客様視点でジャーニーの重要な瞬間を考え、そのために組織を最適化する必要があるのです」(加藤氏)
顧客視点に立った時、ソーシャルメディアやモバイルが、カスタマージャーニーにおいて重要な役割を持つことは間違いない。そして、新時代のカスタマージャーニー創出において、Marketing Cloudをはじめとしたテクノロジーはその一助となる。加藤氏の強いメッセージが感じられるセッションとなった。
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