「One to One マーケティング」がいよいよ自動化の時代へ
顧客を全体としてではなく、一人ひとりにフォーカスしてアプローチするという「One to One マーケティング」の考え方は決して新しいものではない。
20年以上前から存在し、テクノロジーの進化とともに様々な形で進化してきた。そして近年、ビッグデータの分析が容易になり、端末のパーソナル化が進むなど環境の変化により、デジタル上で多数の顧客を抱えても投資対効果が得られるOne to Oneが可能になってきた感がある。
とはいえ、いざ実践しようとした時に「『顧客の趣味嗜好が散在化しており、変化も激しいために理解が難しい』または『情報が多種・膨大であり、どこから手を付ければいいのかわからない』といった状況に陥る企業も少なくないのではないでしょうか。
特に後者の場合は『データを溜められない』というシステムや業務フローに問題がある場合と、『データを溜めても使い方がわからない』というノウハウ・スキルに問題がある場合があると感じます」(林氏)
はたして顧客の「人となり」を知るためにどうすればいいのか。林氏はWebで得られる定量的データから、主に購買履歴やWebログによって「行動と動機」、そしてデモグラフィック情報やLTVに合わせた顧客定義から「生活と態度」の2つの視点から分けて分析し、顧客像を見出すという。
これをデータで分類すると、顧客リストや商品情報といった「オフラインデータ」、Webアクセスログなどの「オンラインデータ」、そしてSNSやパブリックDMPからの「外部データ」の3つになる。そして、近年ではオムニチャネル化が進められつつあり、顧客一人ひとりに情報が紐づいてどのチャネルにおいてもサービスが享受できることが求められている。
それでは、顧客を理解した適切なコミュニケーションとは、どのように行われるべきなのだろうか。林氏は「誰に」「何を」「いつ」「どのように」という4つの要素を効果的に組み合わせる必要があると語る。その組み合わせを考える上で仮説が立てられるよう、One to Oneマーケティングのシナリオ例を紹介。見込顧客から初めての購入、たまに購入するようになり、最終的にはロイヤルカスタマーとなってもらう。それぞれ一人ひとりに合わせた働きかけで、5人の顧客との関係性を深めていく様子がデモンストレーションによって示された。
こうしたOne to Oneマーケティングを大量の顧客に対して効率的かつ自動的に行う仕組み。それが「マーケティングオートメーション」というわけだ。施策の方向性としては、商品中心で「誰がターゲットとなるか」を考える方法、そして顧客中心で「いつ、何を、どのようにオファーするべきか」を考える方法がある。
しかし、その時に同時に考慮すべきなのが費用対効果、人手による限界などだろう。たとえば、オフラインのデータを用いてターゲットを設定してメールを配信する場合、手動であればおそらく5~30種類/日が限界だ。さらにWebログを用いたOne to One対応ならどうだろう。そもそもWebデータは大量なため、扱いそのものが難しく手動では扱いにくいデータだ。つまり、オフラインデータのみを用いたOne to Oneであっても一定数以上であれば「マーケティングオートメーション」を導入する意味があり、ましてWebデータを解析してオムニチャネルに対応するのであれば必須と言えるわけだ。