デジタルメディアにおける情報の選択権はユーザーが握っている
動画をはじめ、インターネット上のコンテンツがリッチメディア化すると同時に、スマートフォンの利用範囲が拡大し、生活者は「いつでも・どこでも」情報を収集できるようになりました。さらに双方向のコミュニケーションを楽しめるソーシャルメディア、まとめサイト、キュレーションメディアなどが普及し、生活者は魅力的なコンテンツに触れる機会が増え、またコンテンツの媒介者も同時に急増しました。
このような変化に伴い、PCやタブレット、スマートフォンなどの多様なデバイスが登場し、情報の流通経路はますます複雑になっています。加えて、デジタルメディアにおけるコンテンツの選択権はユーザーが主体です。このような情報取得環境の変化が、若年層を中心にマスメディア離れ(というよりはデジタル接触時間の増加)という現象を引き起こしています。
かつて、情報流通の強者は企業であり、主導権を握っていました。当時はラジオ・テレビ・雑誌・新聞などマス4媒体の広告は、生活者に多大な影響を与えていました。しかしながら、魅力的なデジタルコンテンツが増加した現在、マス媒体は依然として効果があるとはいえ、ユーザーの関心はデジタルに向かいつつあります。言い換えると、より利便性が高く、自分の興味に寄り添ってくれる媒体に移行していることです。この事象は、主体的にコンテンツを選ぶ「生活者優位」という現象を作り出しています。
しかし、デジタルの世界での注意点もあります。その利便性ゆえに、クリックひとつでつまらないコンテンツは読み飛ばされてしまいます。具体的な興味(何かを探そう!調べよう!)がある場合は別ですが、広告的な要素が強いと見向きもされません。最初にデジタルメディアの現実的な背景を、あらためて押さえていきます。
ユーザーニーズに応えるコンテンツを
生活者が情報取得の主導権を持つデジタル領域で、企業が情報発信をする際に最も重要なことは「ユーザーニーズに応えること」です。企業視点で売りたい商品やサービスの特長をメッセージするのではなく、生活者が求めている価値を提供する必要があります。つまり、「生活者の気持ち」を理解して、その気持ちに応えなくてはなりません。
古くからマーケティングには、AIDMAと呼ばれる生活者が購買にいたるまでの段階を法則化した考え方がありました。生活者自体、人間の数だけ多様ですが、たったひとりの生活者の気持ちも一定ではありません。“段階”によって行動は異なります。
もちろん同時期でも、人が変われば“段階”も変わってきます。
生活者が抱えている“気持ちの段階”を考え、どの“段階"をマーケティング上の課題と認定するか重要になります。