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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

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日産を危機に陥れた5つの欠如、市場調査の新組織「マーケットインテリジェンス」が目指すもの

「カスタマー・インサイト」とは?

 こうした反省のもとに新設されたMIは、各機能部署からは独立した存在となっています。どの部門にも属さず、公平な立場から情報を発信することが求められています。また全社の調査予算を管理し、調査の優先順位付けをしています。その大きな役割を担っているのが「カスタマー・インサイト・スペシャリスト」です。彼(彼女)たちが自分たちの担当分野の情報を幅広く理解することによって、一貫した顧客・市場の解釈を行い、情報を必要としている各部署に情報を提供しています。

 さて、ここで挙げた「カスタマー・インサイト」とは何でしょうか? 一言で言うと、「人々にお客様を理解させ、エキサイトしてアイデア創出に導く革新的な方法」であると考えています。すなわち、お客様自身でさえも言い表せなかったニーズをいかに理解するかに注力し、商品企画や各種提言に活用しています。例えば、

「ミニバンを買おうとしているパパは、自分や自分が選んだものによって家族のくつろぎを家族にさりげなく提供し、家族がくつろぐ様子を見ることで自己効果感を感じたいと願っている」

「『オレっていいパパじゃん』と実感できる場面やしかけがほしい」

など、単に「○○という機能をXX%の顧客が希望している」といった表面的な数字の紹介にとどまらず、お客様の気持ちを代弁できるよう心掛けて調査を実施し、まとめようとしています。またMIの人間だけがお客様を理解するのではなく、わかりやすく伝えることによって全従業員がお客様を理解し、お客様を中心に物事を決定していけるようになることを目指しています。

自動車という商品の特性

 ただし自動車という商品の特性上、MIの活動にはいくつかの困難が存在します。

1. 開発プロセスが長い
 トレンドを先読みし、3~5年先の発売時に適用可能な情報提供が必要

2. 多大な投資と多部門にまたがる決定プロセスを必要とする
  慎重な確認と開発プロセスへのフィードバックのフェーズが必要
(とりあえず出してみて市場の反応を見るのは不可能)

3. 1つの商品を多くの地域で販売する
 販売地域により異なるニーズを汲み取りつつ、1つの商品としての形にするための工夫が必要

4. 所有・使用場面が他者にも見え、かつ高額商品である
 機能価値にとどまらない人間の広いニーズや価値を捉えて、クルマづくりに反映することが必要

5. 購入してから買い替えまでの期間が長く、また購入検討の開始から購入完了までの時間も長い
 購入意向者における情報収集と態度変容のメカニズムをとらえ、それにどのように影響を与えられるかを理解することが重要

 自動車という商品の場合にはこうした困難が存在するため、市場のトレンドをも理解したうえで、商品計画、経営戦略に対して提言を行う必要があります。そのため、日産自動車のMIでは、現在の市場分析にとどまらず、市場トレンドの予測にも重点を置いて活動しています。

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従業員を使った短納期・低コストの調査の仕組み

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この記事の著者

市川 晃久(イチカワ アキヒサ)

日産自動車株式会社
コーポレート市場情報統括本部 グローバル カスタマー インサイツ部
カスタマー・インサイト・スペシャリスト

1989年、東北大学経済学部卒業。同年4月、日産自動車株式会社入社。1990年4月は社団法人日本経済研究センター出向、1993年4月復職。以後、商品企画、経営企画を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/05/11 10:00 https://markezine.jp/article/detail/22360

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