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日産を危機に陥れた5つの欠如、市場調査の新組織「マーケットインテリジェンス」が目指すもの

 90年代の経営危機を乗り切る原動力のひとつとなった、日産自動車の市場調査組織「マーケットインテリジェンス」。低コスト・短納期の「従業員パネル」を導入するなど調査の刷新を図りつつ、全社戦略に提言できる組織を目指して日夜活動を続けているカスタマー・インサイト・スペシャリスト 市川晃久氏がその活動の一端を紹介します。

グローバルな視点で調査を行う「マーケットインテリジェンス:MI」

 日産自動車の市場調査担当部署は「マーケットインテリジェンス」、略して「MI(エムアイ)」とも呼ばれており、単に市場調査を実施するだけの役割にとどまりません。社内の各部門をカバーできるよう担当がそれぞれ指名され、また世界各地にも配置されて市場調査を実施するなどして情報収集を行い、市場分析を行っています。

 さらに本社がその情報を集約してグローバルの視点でまとめた後に、それぞれの部署と連携して戦略策定をサポートするために提供し経営陣に戦略的提言を行うなど、その活動は多岐にわたります。その1つに「事業・プロジェクト提案の販売台数目標のバリデーション(妥当性検証)機能」があります。自動車メーカーの最大の公用語である「台数」決定に寄与すること。これはMIの重要な役割となっています。

 そのほか、従業員全員がカスタマーマインドを持てるよう社内教育をも行うなど、さまざまなサポートを行っています。今回は、その活動の一部について説明します。

日産を危機に陥れた5つの欠如

 MIは日産自動車がルノーと提携した後に設立された、比較的新しい部署です。ここで、設立に至るまでの経緯について触れておきましょう。1999年のルノーとの提携前の日産自動車は、どちらかと言うとのんびりした会社でした。しかし1990年代当時は、以下のグラフに示すように非常に厳しい経営状況に置かれていたのです。

1990年代の日産の経営状況

 当時の日産は表面上の収益の悪化の陰で、内部に以下のような構造的な問題を抱えていました。

  収益志向の欠如
  顧客中心の考えの欠如
  機能間、地域間の連携の欠如
  危機感の欠如
  ビジョン、中期計画共有の欠如

 特にここで問題にしたいのは、2番目の「顧客中心の考えの欠如」です。提携前にも市場調査は実施していました。しかし、各部署が必要なときにバラバラに実施し報告していたため一貫した解釈は難しく、調査結果が実施部署の都合の良いように解釈されることもあったことから、情報が有益に活用されていたとは言えませんでした。その中で、市場情報をもとに経営陣が戦略的な決定を下すことは非常に困難だったと思われます。

 こうした状況下で「お客様の望む商品を作り出せない→だから商品が売れない→売れないから開発予算が絞られる→さらに商品力が低下して売れない」という悪循環に陥っていったのではないでしょうか。こうした過ちを繰り返さないために、MIが設立されたのです。

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市川 晃久(イチカワ アキヒサ)

日産自動車株式会社 コーポレート市場情報統括本部 グローバル カスタマー インサイツ部 カスタマー・インサイト・スペシャリスト1989年、東北大学経済学部卒業。同年4月、日産自動車株式会社入社。1990年4月は社団法人日本経済研究センター出向、1993年4月復職。以後、商品企画、経営企画を経た後...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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