最終的にチャレンジを実現するのは、責任者の情熱
山口:ブランド側は、自分たちのトーンで言いたいことを言うほうがラクなので、そうなりがちですよね。でも、普段と異なるターゲットを対象とするなら、ブランド側が形を変えないといけない。
アニメとコラボしたのは、若い世代のターゲット層を捉えて、新しい市場を開拓するためです。ブランドのコアは変わりませんが、対象によって伝え方が変わるのは当たり前。それをどれだけ柔軟に、今のホットなコンテンツと連携して実現できるかが、すごく重要です。
友澤:ちなみに、ゴールやKPI設定はどうされているんですか?
山口:コンテンツマーケティングのゴールは、ブランドリフトです。大きくは年2回、グローバルで細かく意識調査をして、定点観測しています。プロジェクト単体ではリーチは見ていますが、視点としては中長期的に見るのが大事だと考えています。
それに、細かい数値は次のチャレンジへの説得材料になるわけでもないんですよね。アニメの件でも、米国だとアニメは子どものカルチャーと思われているので、「日本では大人にも響く」と説得しても理解されにくくて。そこは最後は責任者の情熱で、絶対に価値がある、と突き進むしかない。結果的に、今までと違う層からのブランド認知を得ることができました。
「まさにこの人たち!」を捉えているメディアと組みたい
友澤:これまではテレビCMのように、コンテンツと“広く告げる”場がひもづいていましたが、今はメディアが膨大にあって、コンテンツとメディアは独立しています。その状況下での全体のメディアプランニングは、どうお考えですか?
山口:「われわれが理解したいユーザー」をいちばん知っているのはどのメディアか、を常に意識しています。
ブランド側は相手によって形を変えないと、という話をしましたが、ベースには万人に好かれる優等生のような形がありながらも、ちょっととがった人へのアプローチが事業戦略として重要なら、そういう人たちがいるフィールドにやはり優先投資をすべきと思っています。
当社には事業規模も業務も異なるさまざまな顧客がいるので、「まさにこの人たち!」というユーザーをつかまえているメディアと組んで、響くコンテンツを一緒に考えたい。「彼らはこうだから、IBMはこうすべき」という提案がほしいんです。
友澤:前回、キリンの上代さんとも「何をアウトソースするか」という話をしたんですが、今のお話ですと、WHAT・何を伝えるか、はメディアと一緒にということですね。
山口:そうですね。WHY・なぜ伝えるのかというコアの部分をつくるのは、やはりブランド側じゃないと無理だと思います。ただ、当社はグローバルで1社のエージェンシーと長く組んでいて関係が深いので、議論しながら一緒に進めています。
一方でHOW・どうやって伝えるかは、これだけテクノロジーが発達すると、専門家に任せるのが正しいモデルかと。でも、WHYとWHATを握れていないと、HOWが曲がって手前の2つが伝わらないので、しっかり外部と握るのはブランド側の責任です。