プロダクトプレイスメントとは何か?
プロダクトプレイスメントとは、従来は映画の中でスポンサー商品をさりげなく登場させることで観客の深層心理に刷り込んだり、作品内で人気の演者にスポンサー商品を使用させることで、商品への好感を持たせようとするマーケティング手法です。
米国では古くから効果的な広告手法として、特に大手のクライアント企業から支持されてきました。そのスタートは諸説あり、スティーブン・スピルバーグ監督の「E.T.」で、少女がE.T.にチョコレートキャンディをあげるシーンが、最初のプロダクトプレイスメントだったという説や、もっと古く1970年代から行われていたという説もあります。
映画におけるプロダクトプレイスメント
映画でのプロダクトプレイスメントの例としては、「007」シリーズのボンドカーとしてBMWが使われているというものが有名です。また、スピルバーグ監督の「マイノリティ・レポート」では、作中の主人公トム・クルーズが身に着けていた時計、衣服、車から、利用する店舗、街に流れる保険の案内に至るまで多種多様なプロダクトプレイスメントが行われ、各クライアント企業からバーターや無料を含めて、合計2,500万ドルのプロモーションフィーの契約が交わされていたと言われています。
米国のテレビ番組におけるプロダクトプレイスメント
米国では近年DVRの普及に伴いCMをスキップしてテレビ番組を視聴する消費者が増えてきていることを理由に、特にテレビ番組に対するプロダクトプレイスメントが成長を遂げており、メディア調査会社PQ Mediaの Product Placement Spending in Media 2005 によると、2004年のテレビ番組へのプロダクトプレイスメント市場は35億ドルと前年に比べ30.5%上昇し、2005年にはさらに22.7%上昇して42億ドルを超える見通しとなっています。
米国テレビ番組でのプロダクトプレイスメントの成功事例とされているものには、ドラマ「SEX AND THE CITY」があります。ニューヨークのマンハッタンに住む独身女性4人が繰り広げる女性の本音満載で人気を博すこのドラマの中で、主人公キャリーが愛用するApple社のMacは彼女のライフスタイルに溶け込んで視聴者に自然な好感を与え、彼女が履くマノロ・ブラニック(Manolo Blahnik)というシューズブランドは、この作品をきっかけにして一般に知られるブランドになりました。
日本のテレビ番組におけるプロダクトプレイスメント
また日本での例としては、'06年2月に日本テレビで放送された『ウーマンズ・アイランド~彼女たちの選択~』が挙げられます。このドラマは資生堂の一社提供で制作され、放送に先立って集中投下されていた「MAQUILLAGE」(マキアージュ)のテレビCMと同じタレント、同じコンセプト、同じBGMを採用すると同時に、番組とCMの転換時には黒バックにキャッチコピーを入れたカットを挟んで、スムーズなCM視聴を促すなどの方策が取り入れられました。この番組は完全にF1層(個人視聴率の集計区分の俗称で、20~34歳の女性のこと)にターゲットを絞ったプロダクトプレイスメントの事例として、F1層視聴率の獲得も実現した好例となっています。
ウェブ上のプロダクトプレイスメント
BMWの広告キャンペーン
まず第一に挙げられるのは、ここでもBMWの取り組みです。2001年に広告予算のほとんどをネットムービーに投資したとされるBMWの野心的な広告キャンペーンは、2002年のカンヌ国際広告祭でサイバー部門グランプリに輝いています。
世界的に有名な映画監督ガイ・リッチーやウォン・カーウァイらを起用し(ガイ・リッチーは歌手マドンナの夫だという話題性付)、撮影されたこの作品では、作中で繰り広げられる派手なカーアクションが視聴者にBMWの「スポーティさ」を訴えかけ、BMWが競合他社とのコンピタンスに位置付けている魅力が最大限に伝わる内容になっています。
この施策はBMW購入者の多くが購入前に同社のホームページを訪問するという調査データに着目したことに端を発しており、単に話題性だけを追求して執った策ではないところも注目すべき点です。
オンラインゲームにおける事例
ウェブ上のプロダクトプレイスメントは映像によるものだけではなく、オンラインゲームの中でも進展しています。米国では近年、M1層(個人視聴率の集計区分の俗称で、20~34歳の男性のこと)のテレビ視聴率の低下が発生しており、その大きな理由にビデオゲームの普及があると言われています。この層をメインターゲットとするテクノロジー製品などのマスマーケティングが困難になっているところで、急成長してきたのがオンラインゲームでした。
オンラインゲームでの例としてはスコッチメーカーのシーバスリーガル社が、米プレイボーイサイトとタイアップして実施したキャンペーンが挙げられます。これはプレイボーイ50周年を記念したタイアップキャンペーンで、ビバリーヒルズにあるプレイボーイマンションの体験をゲーム形式のバーチャルツアーで見せるものでした。
オンラインゲームを広告メディアとして活用する場合、単にプロダクトプレイスメントのメディアとして有効であるだけではなく、広告メッセージの更新が頻繁に行えたり、ユーザーセグメント毎に広告メッセージを最適化できるところにも適性があります。またオンラインゲームは消費者のメディア接触時間が大変長く、ブランドや製品の露出時間を長くしたい場合にも適しています。
日清食品カップヌードルのキャンペーン「FREEDOM PROJECT」と「GYAO」
ウェブ上でのプロダクトプレイスメントの日本での事例としては、06年4月にスタートした日清食品カップヌードルのキャンペーン「FREEDOM PROJECT」があります。
「カップヌードルは若者にとって”自由の象徴”であり、その価値は未来においても普遍である」というコンセプトの下に、「AKIRA」の原作で世界的に有名なアニメーション作家の大友克洋氏のキャラクターを採用して、大規模な駅貼り広告、テレビCMとのクロスメディアでウェブ上でのプロダクトプレイスメント(ブランデッドエンターテイメント)を行っています。
大友克洋氏の作品のファン層がインターネットのコアユーザー層とマッチすることから、ブログなどを介したバズの広がりも意図したキャンペーンと思われ、キャンペーンスタート数日時点から、すでに多くの有名ブログでも取り上げられています。
この他、今後USENがインターネット無料動画チャンネルとして大きく裾野を広げている「GYAO」においてプロダクトプレイスメント型のコンテンツを制作・配信することを発表するなど、国内での事例も多くなる兆しが見えてきています。