あらゆるコンテンツをネイティブ広告化する
ネイティブ広告については国内外でさまざまな議論があるが、その本当の可能性はどこにあるのか。それを教えてくれるサービスが「Sharethrough(シェアスルー)」だ。Sharethroughの日本市場の代表としてビジネス開発を行っている高広伯彦氏に、その可能性について話を聞いた。
― まず、Sharethroughという会社について教えてください。
高広 Sharethroughは2008年、スタンフォード大学の卒業生であるダン・グリーンバーグとロブ・ファンの2人が立ち上げました。現在、月間で300億インプレッション以上のネイティブ広告を配信していて、その規模は世界でもトップクラスです。サンフランシスコの本社のほか、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、デトロイト、ロンドン、オースティン、トロントに拠点を持ち、今はまだ英語圏での展開がほとんどですが、日本に関しては今年6月から私が担当しています。
ファウンダーの1人であるダン・グリーンバーグは、アメリカのIABが2013年に出した「THE NATIVE ADVERTISING PLAYBOOK」の作成で中心的な役割を果たした人物。まだ、「ネイティブ広告」の定義が混乱していたときに、外観や機能といった複数の観点から6種類に整理したもので、広告業界にいる人間にとっては重要な資料です。こうした背景から、ダンはアメリカのネイティブ広告業界ではカリスマ的な存在なのです。日本では2014年8月に、JIAA(日本インタラクティブ広告協会)が「ネイティブアド研究会」を立ち上げ、私が主査をつとめていますが、Sharethroughについては以前から注目していました。
― Sharethroughのサービスには、どのような特徴があるのでしょうか。
高広 Sharethroughはオールインワンのネイティブ広告プラットフォームとして、パブリッシャーに「SFP(Sharethrouogh For Publisher)」、広告主に「SAM(Sharethrough Ad Manager)」、さらに、DSP「STX(Sharethrough EXchange)」も提供しています。
その特徴をひとことで表すと、「ネット上にあるコンテンツは、何でもネット広告にできる仕組み」と言えます。広告主企業が運営しているオウンドメディアに掲載している記事を、簡単にネイティブ広告化することができます。そのほか、YouTubeにアップロードした動画、Instagram、Pinterest、LINEなどもネイティブ広告化できます。
― それはどのような仕組みなのでしょうか。
高広 「ネイティブ広告ジェネレーター」という、自動的にネイティブ広告を作ってくれるツールがあるのですが、これを見るとわかりやすいでしょう。
この画面の左側にメニューがあり、媒体社や広告サンプルを選ぶことができます。たとえば媒体として経済誌「Forbes」のモバイルサイトを選んでみましょう。
さらにその下から広告の例を選びます。サンプルとして、ヘッドフォンメーカーBeatsのYouTube動画、IntelのVine動画、PinterestやInstagramの写真などがリストアップされています。ここではAmerican Expressの広告を選びます。
するとスマートフォンのエミュレーターが表示されて、まずForbesのサイトが表示されます。そのサイトの中のスポンサーコンテンツとして、先ほど設定したAmerican Expressのネイティブ広告が表示されます(中央の画像、赤枠)。これをクリックすると、American Expressのサイトで公開しているインフォグラフィックが表示されます(左端の画像)。
さらに、左側のメニューには「広告をカスタマイズする」というメニューがあります。ここで簡単に内容を変更することができます。ためしに、MarkeZineが定期雑誌を創刊するという記事を使って設定してみましょう。
設定項目の「広告のURL」にはこの記事のURLを入力します。そのほか「広告主の名前」「サムネイルのURL」「ブランドロゴのURL」「カスタムボタンのテキスト」などがあり、それぞれ個別に設定できます。最後に「広告をアップデートする」ボタンを押すと、すぐさま修正が反映されます。
― とても簡単ですね。
高広 これまで広告主は、たとえばランディングページという「広告」に集客するために、それに加えてディスプレイ広告などの「広告」を作っていました。しかし、Sharethroughでは広告素材を作るという概念がないんです。自社サイトのコンテンツや、SNSの公式アカウントの投稿のURLを指定し、見出しなどいくつか設定すれば、あとはSharethroughが媒体の枠に合せて表示してくれる。
さらに重要なのは、モバイルであろうが、タブレットであろうが、PCであろうが、関係なく出せるということ。ユーザーのモバイルシフトが進む中で、従来のディスプレイ広告、バナーが合わなくなってきています。モバイルで表示されるディスプレイ広告のうち、50%が意図的でないタップを生んでいるというGoogleの調査結果がありましたが、これは非常に良くない状況です。今のディスプレイ広告は、モバイル環境に合わない可能性が高い。そうなってくると、ネイティブ広告のようにユーザーの体験を妨げない、メディアのインターフェースに合った広告の形式というのがユーザーフレンドリーだし、媒体社にとってもいい。当然それが広告主にとっても良い結果を生むことになるんです。