これからの広告商品を考える
前ページで紹介したように、メディアのデータを使った様々な商品が登場していますが、それぞれに課題があり、どれも商品としてレギュラー化していかないという課題があります。この状況を受けてか、最近ではちょっと毛色の違った商品が出てきています。ここからは、いくつかのメディアデータを使った商品設計と、今までの課題を解決する方法について私たちの取り組みを交えてご紹介します。
メディア×メディア型広告商品
従来のメディアデータを活用した商品には、メディアの既存クライアント向けのアップセル商品というイメージが強かったと思います。しかし、それでは既存商品とのカニバリや、せっかくデータを活用した商品を作ってもオプションとして扱われてしまうことが多いでしょう。
そこで最近、私たちが取り組んでいることが複数のデータソースを掛け合わせた広告商品の開発です。例えば、乗り換え案内系のデータであれば、どこの駅を利用することが多いか、土日はどこに遊びに行くことが多いか等の情報を取得することができます。しかし、駅単位ではデータ量が少なすぎたり、網羅的に駅名を列挙することは工数的に価値を出しにくかったりと課題がありました。そこで行なっているのが、アンケートのデータを掛け合わせることで駅情報をグルーピングして販売する商品設計方法です。
例えば、アンケートで取得している年収情報と掛け合わせれば、「年収800万円以上の人がXX%以上いる駅」を利用している人に対して、高級商材の広告配信や、その他マーケティング活動を行うことが可能です。また、未婚の人がよく使っている沿線や駅に対してマーケティングを行いましょう、といった形で一定のルールを持った商品を作成することができます。
それ以外にも特化型メディアを持った2社の情報を掛け合わせて、ライフステージにあった広告を打つといったパッケージ商品を作成することができるようになります。そういった既存のメディアの閲覧者を他のメディアを使って意味づけをして、グルーピングをして商品として提供するという方法は今後増えていくと考えています。
データ分析型のメディア広告商品
メディアデータを使った広告商品の課題の中に「ダイレクトレスポンスの領域だとパフォーマンスが合わない」という課題があります。そこで事前にメディアデータとクライアントの自社データと掛け合わせて、パフォーマンスが合いそうなセグメントを見つけ出し、そのセグメント群をパッケージングするという取り組みが進んでいます。
例えば私たちの場合は、クライアントのサイトにおけるCVRが高い属性を見つけ出して、メディアデータの中からCVRが高いカテゴリや、クライアントのサイト来訪者と相性が良いカテゴリを見つけ、その二つの指標からカテゴリをグルーピングおよびパッケージングしてターゲティングを行う商品の開発をしています。その逆で、相性が悪いカテゴリをパッケージングして除外するなどしてパフォーマンスをチューニングする取り組みも行っています。
カテゴリを活用することで記事の内容や傾向を見られるため、ターゲット像が明確になり、クリエイティブも含めた配信の最適化を行うことが可能になります。実際に、取り組みを通してダイレクトレスポンスでもパフォーマンスが合う例が出てきています。
ニーズに沿った商品設計が重要
近年発表されているアドブロックなど、メディアにとっては既存の広告枠を用いたマネタイズが難しくなってくることが予測されます。そのような背景もあり、今後は今までよりも、メディアデータを活用した広告商品へのニーズは増えてくるでしょう。
一方で、従来型のメディアデータを使った広告商品では、データを活用してくれるマーケターや代理店の担当者のニーズと合致しないケースが多く、結果として販売が促進されないという問題も引き続き発生する可能性があります。メディアを活用した商品は、よりマーケターや代理店の担当者のニーズに合致した商品にしていく必要があるでしょうし、紹介したような商品設計以外にもニーズに沿った商品設計が今後メディアデータを使ったマーケティングの重要なポイントになると考えています。