DeNAとメタップスが語る、現在の注力事業と今後の方向性
マーケティング業界において、トレンドの変遷やテクノロジーの変化は急速だ。人工知能(AI)やフィンテックをはじめとしたテクノロジー、スマートフォンやウェアラブル、IoTといった新たな顧客接点の増加……特に近年では、スマホシフトにより大きな地殻変動が起きている領域も少なくない。では、スマートフォンの次にはいったい何が来るのだろうか。
B Dash Ventures主催の招待制カンファレンス「B Dash Camp 2016 Spring in Fukuoka」で行われた『ビジョナリーが語る次のネットビジネス~2016年春編』と題したセッションでは、同社 代表取締役の渡辺 洋行氏をモデレータとし、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA) 最高経営責任者 兼 CEO 守安 功氏とメタップス 代表取締役 佐藤 航陽氏を招き、両社の現在の注力領域と今後の展望について語られた。
渡辺:今日はDeNAの守安さんとメタップスの佐藤さんをお招きし、今回のカンファレンスのテーマ“チェンジ”に基づいて、両社の戦略についてうかがっていきます。まずは守安さん、最近注力している新規事業には、どのような考えで取り組まれているのですか?
守安:DeNAは毎年様々な新規事業に取り組んでいます。新しくゼロからイチを生み出すという点では、芽の数が多いほうが良い。自社で作るか、パートナー企業と組んでやるか、あるいはM&Aをするか。3種類のタイプから、それぞれ最適な手段を選んでいます。
我々の強みは、ネットの世界で、特にモバイルのサービスを作ってグロースさせていくこと。すなわちネットのパワーを駆使して事業をスケールアップさせていくことです。うまくいっているM&Aの事例は、「iemo(イエモ)」「MERY(メリー)」といったキュレーション事業です。売り上げはクオーターで5億円程度で順調に成長しています。DeNAの主力事業はゲームですが、それに次ぐ事業の柱になるのではと期待しています。
我々はいろいろな事業をやっていますが、基本的にはネットで完結するビジネスが事業の中心でした。しかし今後は、実際のリアルのビジネスにどう絡んでいくのかが重要になってきます。ヘルスケアや自動車、ファッションやリフォームなどのライフスタイル領域など、ネットで完結する世界からリアルに染み出した領域へ事業を広げていっています。
渡辺:では佐藤さんはどうでしょうか。実のところ、メタップスが何をやっている会社か、よくわからない人も多いのでは。
佐藤:メタップスは主事業として、アプリビジネスに必要な機能やソリューションをワンストップで提供しています。具体的には、これまで手動でマーケターの方たちがやっていたことを自動化する。どのユーザーが離脱していくのか。またどんなユーザーが課金しやすいのか。そのようなユーザーに対してどんなアクションをとるのか。いわゆるグロースハッカーの方たちがやってきたことを、全部システムで実行し、それをアプリベースで実現しています。導入案件は20億ダウンロード、導入デバイスは世界で約2億人に。中国、韓国といった海外の売り上げが大きいことも特徴です。
もともと金融領域で事業をやりたかったこともあり、2014年くらいから新規事業として「SPIKE(スパイク)」という決済事業を始めています。1分で開始できて、無料で使える。専門知識は不必要で、プログラマーである必要もない。自分自身の体験からも、極力使いやすいサービスを作ったところ、導入アカウントは約20万件に。業種はアパレルからBtoBまで、かなり幅広く使われています。
メタップスの方向性としては、データがあればどの領域でもいいと思っています。国も業種も選ばず、デバイスも必ずしもモバイルである必要はない。今後はウェアラブル、ロボティクス、ハードウェアまで、現在取り組んでいるアプリと決済以外の領域に、積極的に投資していきたい。広告と金融は収益を生む源泉なので、この2つの領域を軸にして、データが活きる領域に新たに取り組んでいきます。