キュレーションや自動運転タクシーへの参入、DeNAの勝算は?
渡辺:DeNAが今一番力を入れているのは、キュレーション事業でしょうか。
守安:そうですね。主力はゲーム事業ですが、それ以外で最も注力しているのはキュレーション事業です。ヘルスケアや自動車は足が長い事業なので、直近の1~2年で収益を上げていくのはキュレーション事業になります。
渡辺:iemoをはじめ、SmartNewsやGunosyなど、様々なニュースメディアが多数登場してきましたが、今日ではその形が変容してきたと思います。2~3年前くらいは、トラフィックがあればとりあえず広告収入で事業が成り立っていましたが、昨年くらいからはリアルな領域とどう結びつけていくかが重要視されるようになってきたと思います。そういった意味ではDeNAのキュレーションメディア事業も、リアルへ広がってきているのでしょうか。
守安:もともとM&Aをするときに、単純な情報を提供して、広告で収益を上げるだけのモデルだと面白くないと考えていました。人々のライフスタイルやリアルの行動を変えていくことに対して、きちんとビジネスになることをやっていきたいという方向性は当初からすでにありました。そういった意味では想定通りに進んでいます。当然、媒体が大きくないと影響力がないので、まずは媒体を成長させました。その次のフェーズとして、広告売上で数字をつくっていく。それと同時に、広告以外の種を仕込んで育てておきます。
渡辺:MERYやiemoは、その媒体名でブランドができていますよね。先日、MERYの雑誌が刊行することが発表されましたが、これもブランディングの一環ですね。
渡辺:ところで、昨年DeNAがZMPとジョイントベンチャー「ロボットタクシー」を設立し、自動運転車事業へ参入したことは、大きな話題になりました(関連ニュースはこちら)。実際のところ、それらの事業はどうなっているのでしょうか。
守安:自動運転の時代は確実にきます。それが5年後か、10年後か、はたまた15年後か。世界の大手自動車メーカーもこの領域に投資しているので、勝てるのかという意見もあるでしょう。2020年を目途に自動運転タクシー走行の実用化を考えていますが、あと4年は売り上げは上がらない。スタートアップ企業には取り組めない領域だからこそ、DeNAが取り組む意義はある。とはいえ我々だけでいきなりすべてを作ろうとするのではなく、ロボティクスに強いZMPさんと一緒に組んでやっていきます。
渡辺:みんなが知りたいのは、その事業が本当に儲かるのかということ。
守安:タクシー産業の市場規模は約1.7兆円。そのうち、約7割を人件費が占めています。それが仮にすべて自動運転になった場合に、ユーザーに半額で提供したとしても、5,000億円の市場があるはず。ビジネスモデル的には強固で、大きな市場を望めます。また実現すれば、その先に配送業などの市場の取り込みも狙えるので、さらに大きな視野が見込めます。
マネタイズ自体は完全に見えているので、どちらかというと実現できるのかという技術的問題と法制度の問題でしょう。その2つの課題をクリアする必要はありますが、ビジネスモデルがわからないものに投資しているわけではありません。参入を決めた2015年5月の段階では、法制度がどうなるかは見えていませんでしたが、現在は政府も自動運転を後押しする方向へ動いており、当初想定していたよりも法制度に関しては大きく前進しつつあります。
