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イベントレポート

“インターネット村”を出よ/DeNA・守安氏とメタップス・佐藤氏が語る、次のネットビジネス


”インターネット村”から出て、他業界といかに組むかが重要

株式会社メタップス 代表取締役 佐藤 航陽氏

渡辺:ネット業界は今、様々な変革の時期に差しかかっています。業界全体がチェンジの中にいるといっても過言ではない。株式市場をはじめとして経済全体が揺れ動いている中、マクロの環境をどうとらまえていますか。

守安:僕としては景気が悪いのは逆にチャンスだと考えています。そうとらえるのは、事業会社だからこそ。金融業界の投資が減ってくるタイミングに、逆にチャンスが生まれます。

渡辺:ウェアラブルやVR(バーチャルリアリティ)といった新たなテクノロジーについての見解は?

守安:VRは絶対にくるでしょう。でも、今のヘッドマウンド型のディスプレイであれば、使う場所や時間を選ぶので、スマートフォンのように普通の人が肌身離さず持って、メインに使うデバイスにはならない。スマートフォンの次に何がくるか、正直なところ僕自身はまだ見えていません。まだ当面はスマートフォンの時代が続くと思います。

渡辺:佐藤さんはどうですか?

佐藤:この5年、10年で考えると、ネット業界はなくなるのではと思います。ネット企業のマネタイズのモデルをみていくと、だいたいがゲーム会社か広告会社で、それらがネットという新しいテクノロジーで、業界のようにくくられていただけ。実態経済が悪化しつつある中、組織力や経営力といった企業としての根底の部分が重要視されていくのでは。スマートフォンに次ぐ新たなデバイスなども今後も出てくるでしょうが、私たちの会社はこれからは企業としての根底の部分をしっかりと作っていきたい。

渡辺:つまり日本のネット業界で主力産業になっていたのは主にゲームと広告で、ある意味そういったネットの世界の中に閉じこもっていたということでしょうか。しかしこれからは、産業として大きくしようとするためには、”インターネット村”からでないといけない

佐藤:これまではネットという特殊なテクノロジーを使って、何をしようかを考えてきました。でも、それは逆です。リアルな産業もネットを簡単に使えるようになったので、すでにネットはコモデティ化しています。そう考えると自分たちがネット企業ではなくて、リアルな産業の会社としてのアイデンティティを持ち、かつこれから新しく出てくるデバイスのテクノロジーを活用して、リアルな産業として何ができるかを考えたほうがいい。

守安:佐藤さんのネット業界がなくなるという考えに対して、僕はそうではないと思います。なぜかというと、驚くくらいに日本の旧来型の大手企業の中にはネットをわかっている人がいないから。人材の流動性に関しても、日本では非常に閉じられています。かつ産業ごとに村があって、そういった意味ではネット業界はネット業界であり得る。だからこそ、我々は違う業界の人とどう組んでいくのかというところに、大きなチャンスがある。そういう意味でネット業界は残り続けて、違う産業とどう手を組んでビジネスをしていくのかがさらに重要になってくるでしょう。

渡辺:同じ話をしているのですが、おそらくプロセスの違いというか、とらえ方の違いでしょうね。ネット業界以外の産業のルールを理解した上で、いかに組んでいくかということ。

佐藤:そうですね。あと最近の動きでは、既存の産業の大手ががネット企業を吸収し始めていますよね。一方でグーグルやアマゾンなど、巨大な企業もリアルな会社を買い始めています。どちらかにより始めていて、どちら側になるかが重要になってくる。

渡辺:戦略としては、既存の産業とはどのように組んでいくのですか。

佐藤:2014年くらいから流れはかわってきたと思います。今日ではあらゆる産業がネットに取り組まなければならなくなったので、かつてよりは突破しやすくなっているように思います。私たちが決済事業「SPIKE」の事業を2013~2014年頃から準備をしてきたのですが、当初はなかなか外部の金融機関との交渉が進みませんでした。それがフィンテックへの注目の高まりやマイナス金利などの政策により、世の中が大きく動きはじめたことで、逆に私たちと手を組みたいという方が増えました。そういった意味では動画とテレビの領域、銀行、自動車も同様に、かつてよりも既存の産業と手を組みやすい環境になっています。

渡辺:ここまでのお二方のお話しをまとめると、変革の時代において、ネット業界全体としてリアルな産業と協業をはじめ何らかのかたちで付き合っていく重要性が増していること。またネット業界以外の産業のルールや商流をきちんと理解した上で、組織力や経営力といった企業の地盤をしっかりと作ること。それができなければ、提携などはうまくいかないということでしょうか。

守安:そうですね。またネットで完結するサービスのほうがマネタイズが早く、リアルになるほど時間もかかってきます。だからネット企業がリアル産業にかかわっていく上で、別の時間軸で事業をつくる視点を持つ必要があります。

渡辺:変革の時期を迎えているネット業界において、お二人ご自身として、また会社として今後どのように変化していくつもりですか?

守安:今年は積極的にM&Aをやっていきたいですね。

渡辺:さらにガンガンいくと。

守安:そうですね。景気の動向も含めて、いいタイミングになってきています。2014年10月にiemoやMERYを買収しておよそ1年半。買収後にきちんと事業として育てている成功例もあるので、今年はさらにがつんといきたい。またあまり対外的には言っていないのですが、ディープラーニングをはじめAIに注力しています何の事業にせよ、欠かせないテクノロジーになると見込み、ディープラーニングをきちんと使いこなせる技術者を増やしています。

佐藤:これまでゼロからイチを作ることは、何度もやってきました。上場後にやりたかったことは、イチから100をつくること。アイデアはたくさんあっても、数十億や数百億規模の会社がR&Dでできることは限られているので、まずは規模を拡大していきたい。そのためにも、経営をしっかりやっていきます。大規模な実験をするためにも、企業体力は重要ですから。

渡辺:今日のお話しを総括すると、DeNAさんはさらにリアルな領域との提携・融合を進めて、ネットで完結しない領域へ入っていく。一方でメタップスさんは会社としてさらに大きくなるために、まずはコア事業に注力していくと。

守安:やはり”インターネット村”は特殊で、閉じていますよね。そういった意味でも、違う産業の方と接することが大事になってきます。

佐藤:年齢も上がってきましたね。若者がアイデアとやる気によって一発逆転できる領域ではなくなったのでは。

渡辺:そういった意味では、本当にうまい舵取りが必要になってきますよね。とはいえ、その壁を打ち崩すスタートアップ企業も出てくるでしょう。かつて佐藤さん自身がそうであったように、壁を突き崩していくチャンスは今日でもある。業界全体で取り組んでみんなで儲けていく。そんな年にしていければと思います。

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この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/16 17:26 https://markezine.jp/article/detail/24043

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