学生の活動をサポートし、学生の力を重視する
学生任意団体の活動から始まったトモノカイは、ウェブメディアやメルマガ等の学生向けサービス事業と、大学生を教師として家庭教師や塾講師へ紹介する事業を展開する。同社では現在、会員制メディア「t-news Web」の会員獲得および、求人情報の送客にTwitterのプロモツイートを活用している。
同社の特長は、学生インターンも多数所属し、ある程度の決裁権や決定権を持って働いているという点だ。実際に会員獲得施策でも学生スタッフがTwitter広告運用やクリエイティブ制作等を担当し、北野氏が彼らを統括している。北野氏は全体の方針立てと各KPIによる最終的なジャッジのみで、基本的に学生に任せているという。
プロモツイート:ターゲットのタイムラインに、広告主のツイートをネイティブアドとして表示する広告。Twitterのプロモ商品の一つ。
Twitter広告を活用し、求人サイトへの送客促進を担当するのが野口裕樹氏だ。こちらは、よりシビアに利益率をチェックする必要があるため、同氏がメインで運用を行っている。だが、確実なリーチを目指すために、クリエイティブやターゲティングには学生スタッフの力も借りているという。
何故、同社はそこまで学生スタッフに重きを置いているのだろうか。
「根本には、我々の活動やサービスを通じて次世代の人材を育てたいという想いがあります。また、私たちは学生に情報を提供している部門ですから、利用者である彼等の生の声をサービスに反映できるメリットは非常に大きいです」(北野氏)
「私たちが“これが良いの?”と感じたアイディアでも、彼らが面白いと主張したものはCTRやエンゲージメント率などの数字が良いことが多いです。逆に、彼らの反応が良くないときは、やはり数字が出ません」(野口氏)
密なコミュニケーションをとりながら、KPIの数値を軸にしつつ、基本は学生スタッフを見守る形で運用がされている。
学生が面白いと思うアイディアは、学生だからこそ出せる
トモノカイがTwitterを活用する際に、他よりも突出している点は、「ターゲティングの固定観念に縛られていないところ」だとTwitterの中村氏。
例えば、求人広告への送客を考えた場合、多くの企業は競合の求人サービスをフォローしているユーザーをターゲットに定める。だが、同社の場合はそれだけでなく、学生の生の声からキーワードを引き出して、ターゲットを広げている。
「Twitterは「今がわかる(Live)」が売りのプラットフォームです。新商品や流行のキーワードも絶えず流れています。トモノカイさんは、そこを逃さずに掬い上げている。Twitterの利用者でもある学生スタッフさんがいると、敏感にトレンドを捉えられる部分も多いと思います」(高井氏)
実際に、学生スタッフ自身もその友人もTwitterを利用しているという。「Twitterを見て面白いと思ったり、よく目にするワードはアイディアとしてストックしています。一方で、イケてないと感じたものは反面教師としています」(北野氏)
だが、特定の意見を取り入れるだけでは偏りが出る。そのため月に1度、数百名規模の学生アンケートを実施し、様々な意見を吸収するようにしているという。
「例えば、アルバイトで実際に体験した面白かったエピソードを集めてクリエイティブに反映したことがあります。共感度が高いリプライが返ってくると同時に、次のアクションにつながるので、CPAの低下も期待できます」(北野氏)
社会人は使わない、ローカルな言葉を探せ!
Twitterでのターゲティングは、利用者のプロフィールやフォローするアカウント、ツイートをもとに定めることができる。柔軟であるが故に、どのようなハンドルやキーワードを設定するかは非常に重要だ。
「“新歓”など大学生しか使わないタイムリーなキーワードを洗い出して設定しています。ここにもアンケートは役立ちますし、時には学生さんに会って話すことで情報を探っています。例えば大学やキャンパスの省略名や大学生でしか使わないような呼び名。社会人はほとんど使わない、その世代や、大学独特のキーワードが必ずあります」(北野氏)
目立ったものでなくても留年や卒論、休講なども該当する。一方で気をつけていることが、キーワードを“リスティング仕様”にしないことだ。
「例えば塾講師の求人情報をTwitterで訴求するときに、“塾講師”や“バイト”といったキーワードはあまり効果的ではありません。なぜなら、それらのキーワードは検索するときに使う言葉だからです。実際にツイートする際に使う言葉は、“塾講”“チューター”“個別”等です。大学生の話し言葉に置換することが重要だと考えています」(北野氏)
入札の設定も重要なファクター
求人情報に関しては、さらにターゲットを広くとっているという。短期バイトの求人が多いため、リピーターを狙ってモチベーションの高いユーザーへリターゲティングに近いかたちで広告を配信している。また、「Twitterさんからは、CPAを下げるための設定方法などアドバイスをいただいています」と野口氏。
例えば、運用型広告には欠かせない入札額の設定。エンゲージメントやクリックなど特定の目的1件あたりの上限額によって運用される上限入札設定や、目標とするCPLC(コスト・パー・リンククリック)で落札できるよう入札額が最適化される目標入札設定がある。「本当にトモノカイさんの求人情報を求めているユーザーへリーチを拡げる場合は、後者の設定をすることでさらなる配信が期待できます」(高井氏)
「面白さ」と「ギャップ」を意識したクリエイティブ
もうひとつ、トモノカイが大切にしていることが、Twitterを介してユーザーに楽しんでもらうことだ。
例えばTwitterの投票機能を活用した広告の展開。“やりたいバイトがあったらt-newsに登録”といったテキストと共に、4つの選択肢のうち3つに職種を、1つにはあえて“バイトせずに家でゴロゴロする”を入れた。
「結果は“家でゴロゴロ”が一番多かったです(笑)。皆さんにはその結果を面白がってもらえました。広告として成立したかは判断が難しいですが、オチとしてはアリかなと」(北野氏)
【大学生9万名利用中t-news!】
— t-news|大学生のためのお役立ち情報 (@tnews_tomonokai) 2016年2月27日
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他にも、野球帽をかぶった女性の写真に“試験監督する?”という文言を入れたクリエイティブでは、野球の監督と試験監督のミスマッチから“監督違いじゃん”といったリプライが集まり、インプレッションが向上するとともに、CPAを下げることに成功している。
「広告クリエイティブは、できるだけリツイートを狙う」と北野氏。あえて突っ込みどころを用意するようにしているという。
こういったチャレンジは、自社のイメージ向上にも役立つようだ。「このような試みを続けることで、ユーザーからアカウントの性格を認識してもらえるようになります。すると結果的にネガティブな反応も少なくなります。今でもネガティブな反応や炎上を怖がり、一歩踏み出せない企業さんもいらっしゃいますが、実はこういった施策を続けてユーザーの理解を得ることが親しまれる近道でもあるのです」(高井氏)
もちろん、全ての施策が成功しているわけではない。例えば、1ツイートで複数の画像を利用できる機能を活用した、4コマのクリエイティブを2時間ほどで取り下げたことがある。1つのコマが学生への批判に取れるという反応があったためだ。
「全体のストーリーを考えると問題なくとも、一部を切り取ると違和感が生じるケースはあるものです。クリエイティブとしてはダメですが、このようなケースは学生スタッフが、何がダメだったのか、何を大切にすべきかを学べる機会にもなります。ですから、施策としては褒められませんが、一概に悪かったとも言えませんね」(北野氏)
1年で新規会員数2倍、利益率20倍の好成績!
Twitter広告の活用を開始してから約1年だが、会員数は200%の成長率を遂げ、現在も同成長率の獲得が続いているという。一方、求人情報の施策では開始当初から1年で利益率が200%まで伸長した。バイト送客数としては、開始当初は全体の5%にも満たなかったが、直近では20%近くまで上がっているという。
PDCAサイクルを回す上で注意していることはスピード感だと両氏。特別なことはなく、こまめにチェックを続けていると語る。
「リスティングでPDCAを回すとなると、“よし、このクリエイティブで1か月間様子を見よう”といったペース感覚になることがあります。ですが、Twitterならば、おおよそ1時間後には結果がある程度わかる。この速さは魅力ですね。結局、適正な配信ができるか、きちんと当てられるかの要は天性の勘ではなく、日々のトライ&エラー。私たちも1時間に1回はデータをチェックしています。少しずつ軌道修正して、今があると考えています」(野口氏)
さらなる新施策を取り入れ、自社ブランドの確立へ
今年は、オーガニックでのユーザーコミュニケーションを大切にすることも含めて、ブランド確立を目指すという。
「その上で、さらに広告を運用していきたいですね。中長期的には、蓄積したノウハウを活かして学生さんが喜ぶキャンペーン等を仕掛けていきたいです」(北野氏)
「求人ではエリアを広げていきたいですね。現在は関西・関東という限られたエリアですが、学生さんは全国にいますから。また、クロスチャネルの対策も重要だと考えています。若年層向けのチャネルを連携させながら、Twitter施策の成果を上げていきたいです」(野口氏)
これを受け、「Twitterでは認知拡大や様々なマーケティングファネルにおける活用ノウハウも豊富、これからも一緒に取り組んでいければ」と中村氏と高井氏。例えば動画やアニメ施策は、工数や資金面もさることながら、ターゲットにヒットするコンテンツのアイディアも必要だ。トモノカイならば学生の感性も活かし、効率的で効果のある展開が可能かもしれない。