商品の認知が目的ではない
インタビューイプロフィール
森井氏(写真右)…1997年ローランド株式会社入社。入社当時は静岡県浜松市にある電子ピアノの製造部門に配属。その後、東京でのサービス部門を経験したのち営業部門に配属、札幌や名古屋、大阪と各地での勤務経験を経て2015年4月より現在の営業推進部ドラムグループに配属。横井氏(写真左)…2010年ローランド株式会社入社。入社当時は営業部門・東日本第1営業グループに配属。そこでは当社が運営するShop in shopでの販売業務を担当。その後、企画部署などを経て2014年から現在の営業推進部にてWebマーケティングを担当。
レッスン動画で、購入時に感じる不安を取り除きたい
Viibar:まずは森井さんから、お仕事の内容を簡単に教えて頂けますか。
ローランド:私は営業推進部のドラムグループに所属しています。業務としては、ドラムカテゴリに関わる広告販促活動、マーケティングおよび営業サポート全般を担当しています。営業推進部は、営業という最前線の部門と商品・製品の開発部門の間にある間接部門で、営業サイドと開発サイド両方とやりとりすることが多い部署です。
Viibar:横井さんのお仕事も教えて頂けますでしょうか。
ローランド:私も営業推進部に所属しておりますが、少しやっていることは違います。ドラムやピアノなどの商品単位のグループには属しておらず、横串でのデジタル領域を担当しております。
例えば、ドラムの新製品プロモーションをWeb上でどう展開していくか、お客さまをどのように集客していくか、などのWeb関連全般を考える仕事になります。動画もデジタルメディアなので担当範囲で、今回YouTubeへの掲載にあたって、本社やグローバルとのコミュニケーション役を担いました。
Viibar:今回、動画を活用することになった経緯を教えていただけますでしょうか。
ローランド:まず、元々商品販促戦略の中で、動画コンテンツプロモーションを強化しようという流れがありました。これは、昨今の他企業さんの取り組みも踏まえたものです。そんな中、ドラムカテゴリでどんなコンテンツがお客様に求められているか考えた結果、今回制作したレッスン動画にたどり着きました。
レッスン動画の狙いは、商品の認知ではなく、購入時、および購入直後にお客様が感じる課題を解決したいというものです。ドラムを買った後、ちゃんと習熟できるのか、上手く叩けないとせっかく買っても無駄になってしまう、という漠然とした不安を抱えるお客様が一定層居て、それがドラム購入のネックになっているという事実が分かってきていたんです。だから、レッスン動画というセルフでドラムを学ぶ手段を用意し、安心感を提供する事で、購入前の不安感を解消できるのではないかと思ったわけです。
不安を解消する事が、購入の決め手になる
Viibar:この動画はYouTubeのオフィシャルアカウントで公開されていると伺いましたが、それ以外にも使われていますか?
ローランド:オウンドメディアとしてブログを運営しており、そちらで記事として公開し、広くお知らせしています。あと、店頭でも販売店の方が接客のツールとして利用してくださっていて、とても評判が良いんです。
Viibar:接客ツールとして動画を使うのはとても興味深いですね。
ローランド:レッスン動画の内容を本来必要としているのはユーザーさんですが、動画を活用したいと思っているのは実はディーラーさんなんです。ディーラーさんが接客の途中、お客様から「今後も続くかどうか不安だ」とか、「上手くなれる自信がない」などと聞いた時に、これまでは返す言葉がなかったんですね。
不安を解消するために提供できるものがないからです。もちろん、「では、うちの講座に習いに来ますか」とか、「教則本がありますよ」という回答はあるわけですが、それだと逆に、購入のハードルが上がってしまうんですよね。「あぁ、大変なんだ」、「そんなに色々買ったり勉強しないといけないのか…受験じゃあるまいし」となってしまうわけです(笑)。
そこで、レッスン動画が役立ちます。この動画の視聴は無料ですし、不思議と教則本に書いてあることでも、動画で見るとすんなり理解できるんですよね。だから学習の負担も小さい。
そういう訳で、レッスン動画は、一気に視聴を集めるような位置づけではなく、すごく長い目で、じわじわ利用されていく事を考えています。動画内ではエイトビートを教えていますが、これはドラムの基礎中の基礎なので、長く使ってもらえるようなコンテンツとして最適だと考えて選んだテーマです。
「THE TRAINING – BASIC DRUM – 」コンテンツ動画 from Viibar on Vimeo
ローランド:実はこの動画、叩いているドラムの製品名が一切出てこないんです。ドラムはもちろん当社の製品ですが、もう買っていただいた後に見る想定で作っているので、「このドラムはいくらで、ここがイイんですよ」、みたいなことを言っても、視聴者のニーズと合わないと思うんです。視聴維持率がそこでガクっと下がったりするので。そういった意味では、いい意味で振り切ったトライだったかもしれません。