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カスタマージャーニー研究プロジェクト(AD)

「お客様がストレスなく、納得して保険を選ぶ為のコンシェルジュに」アクサダイレクトのコミュニケーション

 インターネットや電話を通じて加入できる「ダイレクト自動車保険」は、アクサ損害保険株式会社の主軸事業だ。新規顧客の獲得は、車の購入時または更新時という“限られた時間内”で的確なコミュニケーションを行い、安心と納得をもって契約をしてもらう必要がある。同社は「Salesforce Marketing Cloud」を利用して、その実現を進めている。今回、詳しい戦略と将来の展望を聞いた。

短期間でお客様の望む情報を提供するために

 アクサ損害保険(以下、アクサダイレクト)の主力商品の1つである「ダイレクト自動車保険」は、一部のケースで書類手続きが必要な場合を除き、新規契約および更新契約のほぼすべてをネットまたは電話上で完結する。そのため、特に新規契約については、どこで・どのように見込み客との接点を持ち、いかにコミュニケーションをとり、納得してもらえるかが契約獲得のための重要なカギとなる。

 もちろん、「納得感」は、既存顧客にとっても継続につながる重要ポイントであることは違いない。しかし、既に顧客情報を持ち、契約更新時期も把握できている既存顧客と比較して、新規の見込み客は未知の存在だ。

 「どこで接点を持ったのか、どのような情報を必要としているのか。これはお客様によって異なります。しかも、自動車保険を検討するタイミングは、車の購入時や現在加入している保険の更新直前など限られた時間です。その短い期間に接点を持ち、必要な情報を提供することで、弊社保険への加入率をいかに高められるかを追求しています」同社斎藤氏はその難しさを語る。

アクサ損害保険株式会社 セールス&マーケティング本部 CRM部 部長 斎藤博隆氏
アクサ損害保険株式会社 セールス&マーケティング本部 CRM部 部長 斎藤博隆氏

ストレスなく知識を得られる「コンシェルジュ的コミュニケーション」が納得につながる

 自動車保険という商品の特性として、多くの利用者が“万が一の備えとして必要ではあるが、できればお世話になりたくないし、必要十分なサービスをできるだけ手軽に選びたい”と考える傾向がある。保険会社とのコミュニケーションも、可能な限り時間をかけずに行いたいものだ。とはいえ、保険商品の選定には一定の知識も欠かせない。

 「このジレンマを解消するには、お客様の状況・ニーズを捉え、一人ひとりに合った情報提供を適切に行う仕組みが必要だと考えました。つまり、お客様にとってストレスフリーな“コンシェルジュ的コミュニケーション”が実現すれば、お客様の負担を最小にしながら、十分にご納得いただいた上で自動車保険を選べるようになる、とのコンセプトです」(斎藤氏)

 こうしたカスタマージャーニーの実現に向けた取り組みは、同社の事業姿勢である「顧客中心主義(カスタマー・セントリシティ)」に基づいているという。アクサダイレクトは1990年代後半より、代理店を経ないことで低価格化を実現した「ダイレクト保険」をいち早く推進し、価格だけではない付加価値の提供を「顧客」を中心に検討する取り組みを継続している。

 「対面や電話で直接会話をしないインターネットからのお客様についてはOne to Oneマーケティングの技術を活用してコミュニケーションを補完する。それにより、本来のダイレクト保険のよさはもちろん、お客様に合った商品をご提案し、そのメリットをしっかりとご理解いただくことで、お客様ご自身にとってベストな選択をしていただけると考えています」と斎藤氏。

アクサダイレクトの「コンシェルジュ的コミュニケーション」を支えるテクノロジーとは?

 顧客接点や顧客の状況に合わせて、情報や提案する保険の内容を変えているアクサダイレクト。同社を強力にサポートするMarketing Cloudは、具体的にどのように機能しているのでしょうか?

 現在、Marketing Cloudの製品デモ動画を公開中です。記事とあわせてぜひ、ご覧ください!動画はこちらから。

“お客様に最適な情報を”本来の目的に基づいたシナリオ設計

 現在アクサダイレクトが取り組む施策の重要な柱のひとつが、見積り後に配信する「メールの最適化」だ。同社では見込み客が見積りをとる際に入力するメールアドレスに対し、メールを配信。その際に、来訪元のチャネルやその他様々な情報から見込み客の状況を想像し、その人に合った情報を提供している。

 このOne to Oneマーケティングの要として、2015年2月よりSalesforce Marketing Cloud(以下、Marketing Cloud)を採用した。同ソリューションの活用によって、来訪チャネルや入力情報からの基本的属性に加え、リアルタイムな行動や過去の履歴などと連動させて、適切なコンテンツや情報を提供できるようになったという。

 たとえば、保険の比較サイトからならば価格を気にしているだろうし、検索サイトで直接社名を入力してきたならアクサダイレクトになんらかの期待をしているだろう。このようなチャネル別に、見込み客のマインドに合わせたメッセージをメール配信しているという。

 さらに、見積り時に入力された情報から、年齢や性別、その他豊富に取得できている情報からセグメントで分類。チャネル×顧客属性から見積りをとった顧客一人ひとりに合わせたメールコンテンツの出し分けを行っている。

 「もちろんメッセージだけでなく、提案する補償内容も変えています。たとえば、比較見積りサイトからお見積りをいただいたら、価格に対してセンシティブという仮説のもとにご提案、ご家族やペットがいる場合は該当する補償内容をご提案するなどしています。また、保険の等級によっては割引額が異なるので、そのメッセージを加えるなどもしています。さらに、その他多数の情報に基づいてお客様の状況をお察しし、適切な内容で出し分けするようにしています」(斎藤氏)

 斎藤氏は「細やかなシナリオ設計のできるMarketing Cloudにより、コンシェルジュ的コミュニケーションの実現が加速しています」と語る反面で、意識していることがあるという。

 「増やそうと思えば、膨大なシナリオを用意できます。ですが、本当にそんなに多くのパターンが必要なのか、効果として管理ができるのか。“本来の目的”に向かって施策を考えることが大切です」(斎藤氏)

モバイル活用を加速し、より手軽で的確な提案とフォローを目指す

 情報の提供から見積り、そしてコンバージョンまで、様々なチャネルでコミュニケーションをとるアクサダイレクト。先進的な取り組みを積極的に行っている同社では、スマートフォンの普及とその特徴である利便性、操作方法に着目し、ユニークな見積りサービスも開始した。

 「ダイレクト自動車保険の利点の1つは、自分に必要な補償内容を自由に選択しセルフで加入申込みができることです。しかし、自由度が高いだけに、ご自身の条件に合った保険内容を賢く選ぶには一定の知識が必要だという課題もありました。そこで、ご自分に合った補償内容を、よりわかりやすく、より簡単に見積り作成ができるチャネルとして『フリック見積(R)』を2016年5月に開始しました。ぜひ多くの方に試していただき、補償・サービス内容、価格(保険料)を見ていただきたいと思っています」(斎藤氏)

 『フリック見積(R)』サービスは、画面上に1問ずつ表示されるカードを上部に“フリック(指ではじく)”して選択するだけで、自動車保険の見積りが作成できるというものだ。さらに基本的な見積り作成機能の他に、Yes/Noのアンケート形式でユーザーの状況を問診し、その結果(ニーズ)に合わせた補償内容や特約を提案する『おすすめ機能』も追加した。

 自身の事情を入力し、それに合致した必要な補償内容が提案されるため、保険の内容に疎い一般ユーザーでも“要不要”を判断することができる。実際、同機能でおすすめしている特約は、通常よりも付帯率が向上したという。

 「9割近いお客様がおすすめ見積を試してくれています。言い換えれば、フリック見積(R)はお客様のニーズを掴みやすいチャネル。現在でもフリック見積(R)から見積りいただいたお客様に合わせた情報をご提供していますが、今後はアンケート機能などを通して得た情報とMarketing Cloudを活用することでさらに最適な情報をお送りできると考えています」(斎藤氏)

アクサダイレクトの「コンシェルジュ的コミュニケーション」を支えるテクノロジーをとは?

 顧客接点や顧客の状況に合わせて、情報や提案する保険の内容を変えているアクサダイレクト。同社を強力にサポートするMarketing Cloudは、具体的にどのように機能しているのでしょうか?

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段階的なフォローメールで開封率を大幅にアップ

 こうしてチャネルや属性などから一人ひとりに最適化されたメールの開封率は、40%を超える。さらに、開封率をさらに高めるために、Marketing Cloudによって見込み客の属性や行動を分析、その結果に応じた内容のフォローメールの改良を図る。

 「自動車保険の検討期間は通常2〜3週間。そのホットな間に、1通目のメールを開封されていない方へ別の切り口でメールをお送りしたり、開封したけどログインされていない方に再設定の仕方をお知らせしたり、ログインしたけれど契約に至らない方に選び方のヒントをご紹介したりと、お客様の行動・反応に応じたフォローメールをお送りしています」(斎藤氏)

 こうしたフォローメールの送付によって、最終的な開封率は60%を超えるという。当然ながら、それに紐づく売上や顧客獲得数についても有意な効果が出ているのは間違いない。そして、さらに斎藤氏は「見えない効果」もあると語る。

 「たとえば、これまでのコミュニケーションを通して私達が把握した“お客様が不安に思うこと”をQ&Aなどにまとめてメールコンテンツとしてお伝えすることで、コールセンターへの問い合わせ入電が減少しています。お客様の不安の芽を摘みとると同時に、オペレーションの効率化ができているということです。実際に契約いただいたお客様の安心感や納得感もこれまで以上に向上しており、今後の満足度や継続率などにも反映されてくることを期待しています」(斎藤氏)

モバイル、コールセンターを含めたコミュニケーションへ

 一定の効果を出しながらも斎藤氏は「まだまだ道の途上」と手綱をゆるめるつもりはないようだ。そこには他の業種・業態とは全く異なるシビアな事情がある。

 「一般的なECと異なるのは、自動車保険の場合はその月に更新される方の人数が決まっており、それを逃すとその人については次の更新までチャンスがない、いわゆる、マーケットボリュームが決まっているシェア獲得争いだという点です。つまり限られた対象にできるだけ多くリーチするだけでなく、コンバージョン率を高めて契約につなげる必要があります。ですから、まだまだメールの開封率も高める必要がありますし、見積り後の、メール以外も含めたカスタマージャーニー全体を常時ブラッシュアップさせていく必要があります」(斎藤氏)

 中長期的には、Marketing Cloudとコールセンターデータベースとの本格的な連携も推進し、お客様との接点についてオムニチャネル対応を図っていきたいと斎藤氏は展望を語る。

 「これからは、トラディショナルな代理店経由の保険会社もネットへの傾倒を深めていくことは間違いありません。その中で、フロントランナーとしてお客様にどのような価値をいかにして提供していくか。当たり前のことではありますが、お客様一人ひとりへのきめ細やかな対応は重要だと考えています。当社のどのチャネルを利用いただいた場合でも、お客様の状況を理解した対応がとれるよう、これからも施策やサービスについて真摯に考えていきたい。我々アクサダイレクトはお客様から選ばれる保険会社でありたいと思っています」(斎藤氏)

 顧客が安心と納得をもって、保険をストレスなく選択するためのチャレンジを進めるアクサダイレクト。これからの進展も目が離せない。

カスタマージャーニー研究プロジェクトチームのコメント

加藤: 商材的に差別化が難しい自動車保険で、確実に成果を上げているアクサダイレクト社のデジタルにおける取り組み。お客様の反応に応じた段階的なフォローアップメールの結果の表れも、お客様がちょうどいい距離感だと感じているからこそ。また、モバイルという身近な接点を活用した『フリック見積(R)』も、簡単に自分にあった保険内容を選べる取り組みです。
その土台となる“カスタマー・セントリシティ”=顧客理解に基づいたお客様への対応は、チャネルや商品を超えて、目に見えない安心感の提供につながっているのだと感じます。

押久保:そもそもの商品特性に加え、検討時期は車の購入時や現在加入している保険の更新直前という制約もある中、“コンシェルジュ的コミュニケーション”を実現するという発想はお客様目線での思考がないと生まれないと思います。また、『フリック見積(R)』もお客様視点を持ったサービスだと感じました。次の自動車保険の更新時期に私も触ってみたいと思います。

カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
「カスタマージャーニー」、顧客の一連のブランド体験を旅 に例えた言葉。デジタルやリアルの接点が交差し、顧客の行動が複雑化する中、「真の顧客視点」に立って、マーケティングを実践する重要性が増してきました。
カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの必要性は、その認知が進む一方で、「きちんと“顧客視点に基づいたシナリオ”を作成し、運用できている企業はまだまだ少ない」多くのマーケターに意見を聞くと、そのように認識されています。
今回、押久保率いるMarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコム マーケティングディレクターとして、各企業とジャーニーを研究してきた加藤希尊氏を中心に、共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。その他の成功例はこちら

アクサダイレクトの「コンシェルジュ的コミュニケーション」を支えるテクノロジーとは?

 顧客接点や顧客の状況に合わせて、情報や提案する保険の内容を変えているアクサダイレクト。同社を強力にサポートするMarketing Cloudは、具体的にどのように機能しているのでしょうか?

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加藤 希尊(カトウ ミコト)

チーターデジタル株式会社 副社長 兼 CMO 広告代理店と広告主、BtoCとBtoB両方の経験を持つプロフェッショナルマーケター。WPPグループに12年勤務し、化粧品やITなど、14業種において100以上のマーケティング施策を展開。2012年よりセールスフォース・ドットコムに参画し、日本におけるマ...

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/11/01 16:24 https://markezine.jp/article/detail/24816