戦略的な考え方か、発想法か、マーケティング論か

実は著者・森岡毅氏は、過去に2冊、USJの躍進の裏側を記した本をすでに出しています。
1冊目は2014年2月に発売された『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか』という本。内容は、USJのドラマチックなV字回復の軌跡をたどりながら、「アイデア発想の技術」を学ぶことができるというものでした。
この内容がすばらしく、それまでは一般的にはまだ無名だった森岡さんでしたが、一躍、注目の人となっていきます。同年9月には、NHKプロフェッショナルに出演もしたため、さらに本が注目されたのでした。
そして、2016年4月に2冊目の本『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』が発売されます。この本はUSJ成功の裏側を「マーケティング」に絞って記述しなおした本でした。
続く3冊目として、今度は「数学・統計」を裏づけとしたマーケティング、さらに「戦略」を描く本として出版されたのが、今回紹介した『確率思考の戦略論』です。
このように見てみると、『確率思考の戦略論』は、USJのV字成長の裏にあった、より“本質的”な戦略論と、具体的な数字の扱い方を記した本であることが、改めて分かります。実践的なノウハウを求めている人には、本書だけで充分な学びがあると思うのですが、多様な視点から1つの事象を見てみるためには、前著2冊を合わせて読んでみるのもおもしろそうです。
現在進行形の取り組み、今後に期待
丸善、そして、ジュンク堂の「マーケティング・宣伝」分野における「売れ筋ランキング」から、今回は『確率思考の戦略論』に注目し、その売れ筋理由を掘り下げてみました。
最後になりますが、私がひそかに注目していることは、この本に描かれた取り組みが「現在進行形である」という点です。USJの成長と、そのために打ち出される数々の施策は、当然ながら今もこれからも続いています。
すると、これから打ち出されるUSJの施策の裏にも、この本に描かれたような分析や、戦略が、あるのでしょう。その戦略を自分なりに推測し、また成否の確率を導いてみることは、とてもおもしろそうだと思っています。
さて、次回、7月の売れ筋ランキングには、果たしてこの本を超える本が現れるのでしょうか。楽しみにお待ちください。