もし事故が起きたら? 多岐にわたる事前準備を乗り越えて
MZ:施策の実施にはオーストラリア本国からの承認が必要だったと思います。その点はスムーズに進みましたか?
江原:初めての施策だったので、まずコンセプトやテクノロジーを理解してもらうのに苦労しましたね。何がどうおもしろいかを文化の異なる人々に伝えることは、多くの企業で共通の課題かとは思いますが。
MZ:江原さんは、どのように乗り越えたのですか?
江原:実施の理由について、それがただセルフィーを撮るのではなくて、メインとしてはオーストラリアのユニークセールスポイント、つまり雄大な自然やスケール感を撮ることであり、しかもそれがコンパクトに持ち歩けて拡散もできる、という点を理解してもらうようにしました。
あとは、イベント時のリスクマネージメントが、オーストラリアはすごく厳しかったですね。想定しなければならない事態が多岐にわたるんです。日本であればイベント会社さんに安心してお任せできるのですが、今回は現地で初めての施策だったので、それを一つひとつつぶしていかなければなりませんでした。
MZ:想定しなければならない事態とは、例えばどういったことでしょう?
江原:極端な話、風が吹いて物が飛んできて、イベント参加者にぶつかったらどうする? といった細かな想定です。当然私たちも最悪の事態は考えますが、そのケーススタディがとても多くてびっくりしました。もちろん、会場は公共の場所で、観光地で、屋外。しかも週末で不特定多数の方がいる状況でしたから、人に迷惑をかけないようにしなければなりません。現地の役所なども巻き込んで安全対策を行ったので、そこに一番時間がかかり、苦労したところですね。
体験をテーマに訴求を続けたい
MZ:とても骨の折れる作業を通して、G!GA Selfieを実施させたのですね。では、今後は、どのような施策を行いたいとお考えですか?
江原:私たちは一貫して、ただ観光地を見て回るだけではない、体験をテーマにしたオーストラリア訴求を行ってきました。例えば、2年前に、Facebookページ上でファンの方からおススメ情報をコメントしていただき、それをもとにソーシャルガイドブックを作りました。また、昨年は最も支持があったメルボルンの情報をもとに3日間の観光コースをつくり、最後の1日は現地を紹介するライブ中継もしました。こちらはアーカイブに残っているので、まだご覧いただけます。
昨年は、オーストラリアの食文化を知ってもらうFood & Wineのキャンペーン「美食大陸オーストラリア」を通し、日本の観光地ではなかなかできないこと、例えば、長靴をはいてタスマニアにある牡蠣の養殖場に入り、その場で獲れたてを食べるとか、夕焼けに染まったウルル(エアーズロック)を見ながら雄大な自然の中で食事をするツアーを紹介したり、国内では食べログさんやクックパッドさんと組んで、日本ではまだそれほど有名ではないオーストラリアの食を知っていただく取り組みもしました。
2016年は“Aquatic and Coastal”というテーマで、まさに海や水辺の体験を中心に、SNSやVRを活用した訴求をしていきたいと考えています。
MZ:様々な取り組みをされるオーストラリア政府観光局さんのこれからの展開が、とても楽しみですね。本日は、ありがとうございました。