業界の課題に立ち向かう若きリーダーたち
マーケティングとECのソフトウェア事業を展開するロックオンが提供する、広告効果測定を基軸としたマーケティングプラットフォーム「アドエビス」は、広告効果測定システム国内No.1のシェアを誇るサービス。広告だけでなく、コンテンツや自然検索、LP、サイト内のページなど、全てのユーザー行動の計測も可能だ。冒頭、「アドエビス」に関わる事業開発と大手広告主・広告代理店のマーケティングに関わるコンサルティングを担当している足立氏は、現在ロックオンが注力している機能について次のように語った。
「これまでのアドエビスでは、広告施策軸でどの広告の効果が良かったのか、結果を並べてレポートしていましたが、今年開発しているのが人軸でのデータ分析です。特許申請を受理されている機能で、例えば、“リスティング広告”と“動画広告”と“記事広告”を出稿している場合、“リスティング広告が良い”というのではなく、“動画広告 → 記事広告 → リスティング広告 という順番で通過してきたユーザーのコンバージョン率が高い”ということを可視化することができます」
一方、レバレジーズの棚橋氏は、広告運用を全てインハウスで行っているプロモーションチームを統括している。
2005年に設立されたレバレジーズは、自社で制作を全ておこなうメディア事業を展開する。主なサービスは人材系メディアで、エンジニア向け、看護師向け、介護職向け、アパレル業界向けなどの様々な転職サービスや、第二新卒層の就職支援などを行っている。ビジネスモデルとしては、登録ユーザーにアドバイザーがついて就職支援する人材紹介事業だ。
「今回は、私が担当する看護師向けの転職サービス『看護のお仕事』で取り組んだ試みについてお話しします。看護のお仕事のターゲットは、正看護師と准看護師で、Web上のコンバージョンポイントは無料の会員登録です。その後、登録ユーザーが転職決定して働き始めた時点で、病院様から売上を頂戴する形でマネタイズしています」(棚橋氏)
本セッションは、5つのテーマに沿って足立氏が進行し、棚橋氏にレバレジーズの事例を聞く形で行われた。
投資効率:CPA改善をフェーズに分けて仕組み化
レバレジーズでは、CPAをもとに予算や目標を組み立てることが多い。そこで、CPAを下げるために、まず事業のフェーズによって施策を区分。立ち上げの段階では、短期的に売上を上げて事業を存続させるためにダイレクトレスポンス広告を中心に集客しながら、コンバージョン率の良いチャネルやクリエイティブを探っていく。
その後は、貯まった顧客リストをもとに、メルマガやSNSでアプローチしてライフタイムバリューを上げていく。そこでユーザーが再び訪れた場合も、1コンバージョンとしてカウントするため、全体のCPAは広告一辺倒の場合より下がる仕組みだ。
もう一つ、長期的な施策としてはSEOを位置付けている。サービスの初期段階ではあまり効果を発揮しないが、時間が経つにつれて、検索エンジンでの露出が増えてオーガニック経由でのコンバージョンが増えてくるため、事業全体のCPAが下がる。
この仕組みを上手くまわすポイントとして、棚橋氏はインハウスの体制を挙げた。CPAを下げるには、広告ならクリエイティブ、SEOならサイト内動線の、それぞれ最適化がポイントとなる。そこに対して同社は、企画、デザイン、システムの担当者が全て社内にいるため、それぞれ事業理解が深く、スピーディーに施策をまわせる状態になっている。
「ABテストも頻繁にできますし、複数事業を兼任している担当者もいるため、うまくいった事例を積極的に横展開しています。閉じた社内だからこそ、ノウハウの共有がスムーズ。それでLPやサイトのコンテンツの精度をどんどん上げられるので、結果的にCPAが下がりやすくなっています」(棚橋氏)
この状況をつくるために、2〜3年かけたという棚橋氏。なかなかCPAが下がらないときはひたすらトライすることと、まだ競合他社が進出していない新手法をいち早く試すことで、他社がリーチできていないユーザーを取ることに努めたという。
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中間指標:売上に相関のある手前の指標を見つける
レバレジーズは、2012年から現在までの4年間で、150名だった社員数は500名超になり、オフィスも2ヵ所増え、売上は5~6倍に急増している。その経営規模を支えるエンジンになっているのが、棚橋氏の率いるプロモーションチームだ。そこでは前述のように、CPAを指標に目標や予算を立てているが、あえて別の指標も入れているという。
逆に、わかりづらくなるのではないか? と足立氏が質問すると棚橋氏は『看護のお仕事』の場合、7〜8年事業を展開しており、CPAの改善は既にやりきった感があるとし、次のように説明した。
「もともと当社では、CPAとコンバージョン数を指標にしていました。しかし、こちらは既にもうギリギリ。これ以上CPAを下げるとなると、今コンバージョンを取れているチャネルを絞る以外に思いつかないところまできています」(棚橋氏)
そこで設定したのが、コンバージョン1件あたりの売上の期待値だ。本来は、CPAを下げることではなく、売上と利益率を上げることが目的。そのため、他の部分でカバーできないかと考えて着目したという。
「コンバージョンやコンバージョンの期待値が上がる指標を、中間指標として探っています。たとえば、当社のサービスに対してどういう認識でいるのか、いわゆる“態度”。”態度”のスコアを上げることで、コンバージョンレートやコンバージョン1件あたりの売上の期待値も上げていけるのではないかと考えてます」(棚橋氏)
カスタマージャーニー:施策軸から人軸へ
まず足立氏が、カスタマージャーニーの本質は施策ごとの善し悪しを見るのではなく、人を軸にして、ユーザーが様々な施策やコンテンツをどういう順番で辿ると最適なのかを考えることだと述べた。
施策軸の場合、例えばこのSEOでコンバージョンが何件とれたかという話になるが、人軸になると、手前にコンテンツを当てるとクリックしやすくなる、さらに動画を見せるとコンセプト理解が深まってよりスムーズになる、という考え方になる。そして重要なのは、人軸の場合、動画・SEO・コンテンツなどを通る様々な経路を通ったユーザーを、年齢や性別も加味して評価することだ。
「たとえば、ある経路を500人が通って、そのうち新規は150人、コンバージョンレートが50%だったとします。他の経路だとコンバージョンレートが30%だから、この経路は良いと評価できます。これは、最初に仮説ありきです。仮説に対して、実際何人が通ったのかがなければ、プランニングができません。さらに、リーチしたユーザーの中で、20代は何名だったのか、男性の割合はどれくらいなのか、などを見ていく必要があります。当社製品の『アドエビス』では、これらを全て見ることができるプラットフォームを用意しています」(足立氏)
また、補足として、足立氏はデジタルマーケティングの現在の変化についても語った。SEOやリターゲティングでの刈り取りは、今やレッドオーシャン化しており、広告費も横ばいとなっている。プレイヤーが多く、CPAが高騰しているため、ユーザーに出会うことすら難しい領域になっており、その背景にはスマホやメディアの普及があるとした。
「以前はインターネットの入り口は検索だったので、その領域をおさえることが勝ち筋でした。しかし、スマホが普及した今、SNSやキュレーションメディアなどのアプリが台頭。タッチポイントが増え、検索より手前でユーザーに出会うようになりましたが、ここで出会ったユーザーは、何もしないと出て行ってしまいます。だから、マーケティングオートメション(MA)などのソリューションを導入せざるを得ない状況になっています。このユーザーはどんな人で、どのステージにいるのか見て行かなければなりません。実際、MAの市場は成長基調です。
また、人軸でデータがつながっていくと複雑性が増すため、機械学習での最適化ニーズも高まってきています。この理解をもとに当社では製品を企画しており、実際にアドエビスはコンタクトポイントをひたすら押さえ続けながら、人軸でのデータ分析・活用ができるよう機械学習と連携させています」(足立氏)
次に、棚橋氏が事例を紹介。レバレジーズでは、前述の中間指標を上げるために、サービス理解を促進させる施策を行っている。これは、サイト訪問済みのユーザーに対して、同社のサービス内容を理解できるコンテンツを配信するというものだ。また、今後はサイト未訪問のユーザーにも、サイトの認知を広める施策も行う考えだという。
「具体的には、バナー広告を沢山掲載して、そのバナーに接触した人とそうでない人で、どれくらいコンバージョンレートが変わるのか調べたことがあります。これは、知らないサービスにいきなり検索で出会うよりも、“このサービスのこと知ってる!”と思ってくれた方が、コンバージョンの確率が高まるのではないかと考えたからです。
結果、かなり良い結果が出まして、自然検索でもバナー広告以外の経路でも、バナーに接触した人の方が、全体的にコンバージョンレートが上昇していました。この施策でかけた費用と、コンバージョンレートの増加分の売上を換算してみたら、利益も出ていました」(棚橋氏)
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インハウス:機能軸チームでナレッジ蓄積
続けて、インハウスの組織体制についても棚橋氏が語った。レバレジーズの場合、SEO・プロモーション・CRM・Webディレクション・デザイン・エンジニアリングなど、各事業で職能によってチームを分けている。この理由は、現時点での会社のフェーズが、マーケティングのノウハウを各領域でどんどん貯めていきたい時期だからだとした。そこに足立氏は、「インハウスの場合、ナレッジは蓄積できるが、体力的にしんどいのでは?」という問いを投げかけた。
対して棚橋氏は、「会社のトップにマーケティング力を高めたいという考えがあるため、インハウスに投資してくれる環境があることと、現場にも自分達がマーケターとして職能を極めたいという意思があることで、上手く進行できている」と回答した。
ブランド:ユーザーの信頼・期待に応える
最後に転職サービスのブランディングについて、棚橋氏が考えを述べた。転職サービスは、比較的ニーズが顕在化している期間が短い。それは3~5年に一度で、転職活動期間は長くても3ヵ月。そのなかでユーザーが何を求めるかというと、やはり“希望に合う求人情報”と、“後押し。背中を押してもらうこと”だという。
「求人情報に関しては、いかに情報を集めるか取り組んでいますが、後押しの部分は『このサービスの人たちって良さそう』と思ってもらうことが、ブランディングで大切だと考えています。そのために、潜在層に対しては、サービスの信頼性や転職という文脈以外のコンテンツ配信によって、愛着を積み上げていくこと。顕在層にはどれだけ頼もしさを感じてもらうか。さらに顕在層で既に登録してくださっている方には、その期待値にどれだけ応えられるかが重要と考えてます」(棚橋氏)
その中で、まだ登録していない人に対しては、ニーズの深さに応じたコンテンツを配信したり、コミュニティで同社ブランドとの接触機会を増やして、関係性をつくって継続していく。登録済みのユーザーに対しては、ブランディングというより、プロダクトをいかに強くしていくか、サービスの質をどれだけ上げて平準化できるかがカギになるとした。
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