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クリエイティブを“科学”する動画マーケティング

マーケターの「バズ志向」こそが炎上問題の背景?動画マーケティングの本質を改めて考える

メッセージが強烈な共感を生む

 では、エンゲージメントを作るためには、どうすればよいのでしょうか。重要なのは「表現」よりも「メッセージ」だという点です。

 実際、多くのエンゲージメントを獲得した動画には、メッセージを重視したものが多数出てきています。いずれも「誰かを幸せにする社会的なメッセージ」を伝えることで、視聴者の強烈な共感を呼び起こし、絆を作る動画たちです。

 これらは一見、表現も斬新じゃないかと思われるかもしれませんが、発想の手順がメメッセージ→表現の段階を踏んでいるのが感じとれます。まず、はじめに視聴者が絆を感じるメッセージがあり、それを印象的に伝えるために何ができるか、知恵を絞った結果生まれたクリエイティブなのです。

 ※メッセージの解釈は著者

  • Doveのメッセージ:あなたは自分が思うよりもずっと美しい。もっと自信を持って生きよう。
  • Alwaysのメッセージ:女性たちは思春期に「女性らしさ」という偏見に閉じ込められてしまっている。もっと自分らしく生きるべきだ。
  • SK IIのメッセージ:女性は特定の年齢までに結婚すべきだ、という押し付けはやめよう。女性が、自分の運命を自分で決めることは素晴らしいことだ。
  • Ad Councilのメッセージ:どのような見た目であっても、皆人間なのだから、人種、民族、宗教、性的志向などの偏見は捨て去ろう。
  • McDonaldのメッセージ:もっとオープンになる努力をして、愛する人のあるがままのセクシャリティを受け入れよう。

 この手の動画は海外で多く、日本ではウケないなどと言われることもありますが、単に市場の成熟度の問題とも捉えられます。近年は日本でもメッセージ重視の動画事例はいくつも現れ始めています。

 ※メッセージの解釈は著者

  • Googleのメッセージ:子供がいるお母さん達がもっと働きやすい職場、社会を皆で作っていこう。
  • ポーラのメッセージ:妻がお母さんになっても、一人の女性として尊重し、大事にしよう。
  • 日本赤十字のメッセージ:本来誰もが他人に親切にする気持ちを持っている。勇気を出して、踏み出そう。
  • ANAのメッセージ:子供にとって、家族みんなでいる事が一番嬉しい。たとえ短くても、もっと子供と一緒に過ごす機会を作ろう。

 上記事例のように、シェアを狙う動画を作ることを、表現の競争ではなくメッセージを伝える競争と捉えれば、動画を企画する作業は「大衆の気を引く奇抜なネタを考える」ことから、「自社にも、顧客にも、社会にとっても価値のあるメッセージを抽出し、効果的に伝える方法を考える」ことに変わるはずです。この延長線上に、炎上動画は生まれないでしょう。

「炎上」ではなく「有益な議論」を促す動画を

 「でも、あまり主張の強い意見だと反発も出て、結局炎上するのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。なぜなら、誰かを救い、社会を善くしようという意図を持ったメッセージは、現状を生み出している誰かに変革を求めるメッセージでもあるからです。

 つまり、「社会全般に騒ぎを起こすことを狙った表現」は誰かを傷つけるケースにつながりやすいですが、「ブランドが特別な絆を持つあの人を救う為のメッセージ」から発生する意見の相違は、「炎上」ではなく「有益な議論」と呼ばれるものになるはずだ、と考えています。

 マーケターの多くが動画マーケティングを普通に行うようになり、身近に動画が溢れる時代になりました。表現だけで目を引くことはもはや難しく、それは「バズ」動画の時代は既に終わりを迎えつつあることを指しています。

 これからは、シェアされるという意味だけでなく、社会的であるという意味も含んだソーシャルな動画こそが、必要とされるようになるのではないでしょうか。既に動画を活用されている方はもちろん、これから活用を検討している方にも、本記事が動画マーケティングの本質を、改めて考えるきっかけになれば大変嬉しく思います。

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この記事の著者

小野 敬明(オノ タカアキ)

外資系コンサルティングファームにて戦略コンサルティングに従事した後、2014年に企業のデジタル動画マーケティングを支援する株式会社Viibarに参画。自社のマーケティング活動を統括すると共に、動画を活用したマーケティング戦略や、データを基にした動画の企画・制作メソッドの開発を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/10/25 14:00 https://markezine.jp/article/detail/25442

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