『クリエイティブを“科学”する動画マーケティング』最終回。オンライン動画の活用が広まってきた一方で、多発する「炎上」問題。今回は、炎上の裏に存在する「マーケターの誤解」を明らかにすることで、動画マーケティングの本質に迫ります。
海外から非難される「ニッポンの炎上動画」

最近、動画が炎上したという話を小耳に挟むことが増えてきました。先月のハフィントンポストによると、英BBC、仏AFP通信、英ガーディアン誌、米フォーリン・ポリシー誌などの海外メディアが次々と「日本の動画広告において炎上が多発している」ことを伝えているそうです(詳細:ハフィントンポスト)
記事の中にもあるように、炎上の論点は女性蔑視に関するものが多くなっています。古いジェンダー観に基づいた“オジサン”発想で作られた動画が、ネット上のリベラルな意見とぶつかることでソーシャルメディア上の議論が沸き起こり、批判が殺到(=大炎上)した結果、慌てて取り下げられるというパターンがたびたび繰り返されています。
読者の方の中には、これは日本の動画マーケティングが本格化して数が増えたことによる例外で、多少の炎上は自然なことではないか、と考える方もいるかもしれません。しかし私には、炎上動画問題は日本のマーケターによる”ある誤解”に元づく、構造的な問題なのではないかと見えます。
本連載の最終回となる今回は、この炎上動画が生み出される背景の理解を通じて、動画マーケティングの本質を考えてみたいと思います。
“バズ”に価値はあるのか?
いきなり結論から述べますが、私は日本のマーケターの「バズ志向」こそが炎上問題の背景だと考えます。以前の記事でも言及しましたが、現状多くのマーケターが、動画マーケティングを始めるという話になると、当然のように「バズらせる」をゴールとして設定する傾向にあります。
ここで言うバズとは「その動画が人々の話題になる」ことを指しており、それは「多くのメディアに取り上げられる」「たくさんシェアやコメントが付く」という状態で可視化されます。
従来のバナーなどのネット広告では、クリエイティブが消費者に自発的にシェアされるようなことはなく、ターゲティングされた対象に、配信費用をかけてクリエイティブを見せる、という流れが原則でした。
しかし、動画においては、YouTubeもFacebookも、ボタン機能によりデフォルトでシェアされる環境が整えられており、結果としてクリエイティブが独り歩きして口コミによって広まる(バイラル)という現象が起きるようになったと考えられます。
こうした考えの下、多くのマーケターと広告クリエイター達は日夜、大衆がざわつく(=BUZZ)ような目新しいクリエイティブ表現を探求しています。
この努力によって、オンライン動画の世界では、TVCMとは違う斬新なクリエイティブが日々生み出されているわけですが、一方で、倫理の観点からすると、ギリギリのラインを攻めるようなやり過ぎの表現や、誰かを傷つけてしまうような表現も生まれてしまっている状況です。そのクリエイティブが不快な思いをする人にも届いてしまい、炎上という事件が発生するという流れだと感じます。
つまり、マーケター側の「バズらなければ意味がない」という発想が起点となり、過激な表現に走った結果、炎上動画が生み出されているのです。そうなると、考えなければいけないのは、バズを目指すことは果たして正しいのか? そしてバズに価値はあるのか? ではないでしょうか。
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- この記事の著者
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小野 敬明(オノ タカアキ)
外資系コンサルティングファームにて戦略コンサルティングに従事した後、2014年に企業のデジタル動画マーケティングを支援する株式会社Viibarに参画。自社のマーケティング活動を統括すると共に、動画を活用したマーケティング戦略や、データを基にした動画の企画・制作メソッドの開発を行う。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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