想定ターゲットと実際の利用者の乖離を発見
――具体的にどのような場面でデータを活用されているのでしょうか
在田:たとえば、広告やキャンペーンサイト等がメインターゲットに本当にリーチできているか、集客できているかを確認しています。そこでギャップがあれば、どこかで売り逃しが出ているのでコンテンツを修正したり、出稿先を変えたりといった調整ができます。また、同時期に他社が広告を打っていたら、アクセスログの属性情報からどの客層に動きがあったかをチェックしています。
当社のサイトのメインユーザーは30代~40代の男性ですが、20代の女性を対象にした商品も作っています。そのような商品のキャンペーンを展開する際に、該当顧客層を集客できている企業の出稿先・クリエイティブを参考にする、といったことができますから。

――サービス開発でのデータ活用ではいかがですか?
在田:当社オンラインショップは、男性のお客様が比較的多いのですが、自宅で商品を受け取ることが難しい20代の女性に対して、店頭受取サービスを展開しようと考えていました。しかし、実際に測ってみると、男性のご利用が多いことがわかりました。
当初のターゲティングとミスマッチが起きていることは明らかなので、今後、サービスを若年層の女性向けにするのか、現在の主要な顧客層向けにするのか、また、本サービスを当初のターゲット層に訴求するためプロモーション展開をするのかといった方向性を決めていくための判断材料としてデータ活用できればと考えています。
検索ニーズのキーワード「老眼鏡」、JINSでは「リーディンググラス」
――コンテンツ開発の面では、どのような活用をしているのでしょうか?
深井:私は日々の運用がメインで、おもに週次でデータを見ています。取り扱いアイテムが多いので、データを元に商品やランディングページの動向をチェックして打ち出し商品を調整しています。
まったく新しいコンテンツを作るケースでは、当社のオウンドメディア「JINS WEEKLY」内の『母に老眼鏡をプレゼントしました。』というコンテンツがあります。この記事を作った背景には、データを分析したところ、「老眼鏡」というキーワードで多くの人がネット検索をしていることがわかったことがあります。
一方で、私たちは特に老眼鏡のコンテンツは作っていませんでした。検索されたら、そのまま商品ページが表示されてしまう。しかも、当社での商品名は「リーディンググラス」で、老眼鏡という名前すら出てきません(笑)。商品名は変えられないので別に「老眼鏡」で検索ヒットするコンテンツを作って、その記事からの流入が獲得できればと考えました。
――競合比較の面ではどのような活用法を?
在田:他社がどのような施策を打っていて、どのような結果が現れているのか注視していますね。たとえばテレビCMを打った後にサイトの訪問数はどのくらい伸びているか、検索キーワードや流入キーワードに変化はないかをチェックしています。
また、当社のブルーライトカットメガネであるJINS SCREENなどの商品名で、他社サイトに検索流入する数が急に増えたりしていないかといった、SEO面の変化も確認しています。広告代理店に頼らず自分たちでこれらをチェックできるので、各施策の打ち手を考えるスピードも速くなりますね。
売上の最大化から顧客満足の最大化までデータを活用したい
――最後に、今後アクセスログデータをどのように活用したいか伺えますか?
在田:短期的には、売上最大化のために活用を続けたいですね。オンラインショップ限定セールや店舗を含んだ全社セールについて、誰にどう届けていくか最適な方法を考える手がかりにしたい。中長期的には、CRM施策やオムニチャネル施策といった取り組みによって、顧客満足を最大化させることに活用していきたいと考えています。
深井:引き続きコンテンツ自体のブラッシュアップにつなげていったり、新たな商品を企画したりと活用していきたいですね。2016年11月に『刀剣乱舞』というゲームとコラボレーションした商品を販売しました。こういった商品は関連サイトのコンテンツパワーに左右されるところが大きいので、企画を検討する際に関連サイトのアクセス具合を見ることは大切です。また、そのコンテンツのファンの属性がわかれば広告の打ち先やクリエイティブも考えられます。この分析をより強化していければと思います。