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シェア拡散されるブランドストーリー

2016年、SNSで最もシェア拡散された国内広告とは?傾向から占う2017年のトレンド

 各コンテンツがシェアされる理由を分析する本連載。今回は、新年最初ということもあり、2016年の国内広告プロモーションを振り返るとともに、2017年の広告戦略において求められる要素もお話しします。

国内広告、エンゲージメント数が最も高いのは?

 その時々の時流に合わせ、各コンテンツがシェアされる理由を分析してきた本連載。過去の記事では、映画や音楽、政治など、幅広い分野のコンテンツを、どのようにシェア拡散されるのかという視点で解説してきました(前回記事はこちら)。

 今回は、エンゲージメント数(※)を指標とし、2016年に注目を集めた広告施策を振り返り、そのシェア拡散の理由を分析していきたいと思います。

 数年前から“バイラル”という言葉がマーケティングで取り沙汰されるようになり、様々な企業でWeb動画を使ったプロモーションなどの取り組みが進んでいます。2016年は感動系からライフハック系まで様々なコンテンツが生み出されましたが、広告コンテンツとしては、どういったものが最もシェア拡散されたのでしょうか。

(※)エンゲージメント数とは

 「いいね」やシェア、コメント、リツイートなどFacebook、Twitter、Google+での総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事やSNS上における口コミなどの総数。スパイスボックスの独自ツールにて計測。

 まず、2016年に公開された広告施策(TVCM・Web・グラフィックなど形式を問わない)のソーシャルメディア上でのエンゲージメントボリュームを計測し、ランキングにしてみました(※)。

 エンゲージメント数を基準として、ソーシャルメディア上でどれほど口コミが拡散したのかを評価すると、世間一般に認知されている人気・有名CMなどが必ずしもランクインしているとは限らないことがわかります。

<図1:2016年国内広告コンテンツ・エンゲージメント数ランキングTOP10>
2016年国内広告コンテンツ・エンゲージメント数ランキングTOP10
※出典:株式会社スパイスボックス自社ツール集計(調査期間:2015/12/14~2016/12/14)

 (※)スパイスボックスの独自集計ツールを利用して、インターネットで検索して抽出した話題の広告施策500程度のエンゲージメント数を集計してランキング化。今回は、国内におけるエンゲージメント数を調査対象にしたため、主に海外で情報が拡散されたと思われるコンテンツは著者の判断にて除外。

 まず、圧倒的なエンゲージメント数で1位となったのは、キリン氷結「あたらしくいこう」CMシリーズです。この数値は、一連のTVCMシリーズのエンゲージメント総数なので、複数のコンテンツに対してのエンゲージメント数が含まれます。

 しかし、同CMのなかでも圧倒的情報拡散の大きな要因となったのは、「さかなクン」です。謎のバス・サックス奏者「GYO」となって東京スカパラダイスオーケストラと共演したCMは、お茶の間でお馴染みの彼の印象を吹き飛ばしました。YouTubeでのスペシャル動画公開後には、様々なメディアがこのCMを取り上げ、Facebookを中心としたSNS上で一気にCM動画が拡散していきました。

 TVCM自体もエンゲージメント数の押し上げにある程度寄与したと考えられますが、人気CMだからといって必ずSNS上で情報が拡散する訳ではありません。やはり、あのさかなクンが、バス・サックスを軽快に演奏するという意外性のある絶妙なキャスティングが、数秒で世代を超えたユーザーを惹きつけるコンテンツ作りを成功させたのだと考えられます。

好感度だけではキャスティングできない時代に

 TVCMのキャスティングをする際には、タレントの好感度調査データなどを参考にすることがありますが、実は、好感度とエンゲージメント数にはあまり相関がありません。好感度ランキング上位常連の男性タレント群と好感度調査では必ずしも上位ではない「さかなクン」を比較すると、意外にも、エンゲージメント数では大きな差が見られません。

<参考:好感度ランキング上位常連タレント(男性)のエンゲージメント数比較>
参考:好感度ランキング上位常連タレント(男性)のエンゲージメント数比較
※出典:株式会社スパイスボックス自社ツール集計(調査期間:2015/12/14~2016/12/14)

 このさかなクンの数値は、今回のCMによって獲得されたエンゲージメント数は含んでいない、オーガニックな数字です。さかなクンのエンゲージメント数の高さの要因としては、彼が持つ豊富な“話題性”が挙げられます。水木しげる氏の葬儀には、お馴染みのハコフグ帽子を喪服バージョンにして参列して絶賛されるなど、本当にSNS上で拡散しやすい話題に事欠かない人物です。

 今回、SNS上での影響力を理由にさかなクンが起用されたのかは不明ですが、今後は、好感度調査に加えて、実際のエンゲージメント数をもとにキャスティングを検討するような視点が重要になってくるでしょう。

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この記事の著者

物延 秀(モノノベシュウ)

スパイスボックス 副社長。2006年スパイスボックス入社。プロデューサーとして大手企業のデジタル・コミュニケーションをワンストップで支援し、2012年以降はソーシャルメディアを中心とした「共感」と「話題」を生むコンテンツのプランニングとプロデュース、自社ソリューション開発を統括。2016年に事業統括責任者および執行役員に就任。2017年より現職。自社サービス:インフルエンサーマーケティング支援「TELLER」、コンテンツマーケティング支援「BRAND SHARE」、ROI分析プラットフォーム「THINK」、自社メディア:「newStory」自著:『新ヒットの方程式』~ソーシャルメディア時代は、「モノ」を売るな「共感」を売れ!~(宝島社)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/01/18 11:00 https://markezine.jp/article/detail/25862

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