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カスタマージャーニー研究プロジェクト(AD)

「仕事探し?とりあえず、リクナビ派遣」無意識に選ばれるサービス目指す、リクルートジョブズのメール施策

 リクルートジョブズは2015年、「リクナビ派遣」に「Salesforce Marketing Cloud」を導入し、カスタマージャーニーを重視した顧客体験の向上に取り組み始めた。その過程で専門グループの必要性に気づき、翌2016年デジタルマーケティング室内にCXMグループ――カスタマーエクスペリエンスマネジメントを進めるグループを新設した。今回、同グループの藤井良平氏と古舘涼介氏に、具体的な取り組みとその成果を聞いた。

“無意識のうちに選ばれる”サービスを目指す

株式会社リクルートジョブズ 商品本部 デジタルマーケティング室 マーケティング部 CXMグループ 古舘涼平氏
株式会社リクルートジョブズ 商品本部
デジタルマーケティング室 マーケティング部
CXMグループ 古舘涼介氏
 正社員からアルバイトまで、様々な形態で「働きたい人」と「企業」のマッチングを手掛けるリクルートジョブズ。同社のサービスの中でも、「リクナビ派遣」は唯一、サービス上の求人へのエントリーに会員登録が必須だという特徴がある。会員登録をカスタマージャーニーの起点としており、メールアドレスなどの基本的な項目に加え、希望の条件や働き方を登録してもらうことで、よりマッチング性の高い求人情報を提供している。

 

 ユーザーにとっての同社サービスの理想的な立ち位置について、CXM(カスタマーエクスペリエンスマネジメント)グループの古舘涼介氏は「無意識のうちに選んでいただけるサービス」と表現する。

 「当社のビジネスモデルは、ECサイトなどと違い、継続的に接点を持ち続けることが難しいです。働こう、仕事を探そうというそのタイミングで、いかにコミュニケーションをとり、選んでいただけるかが大事だと考えています」(古舘氏)

 ユーザーに選ばれるためには、ニーズを汲み取ったアプローチをピンポイントで展開していくことが重要になる。それに一層注力するべく、古舘氏が所属するCXMグループは昨年新設された組織だ。カスタマーエクスペリエンスマネジメントの考えを同社に根付かせながら、ユーザーに対しては、一人ひとりに最適なタイミングで最適なコンテンツを届けることをミッションとしている。

Marketing Cloud活用の専門チーム発足

株式会社リクルートジョブズ 商品本部 デジタルマーケティング室 マーケティング部 CXMグループ グループマネジャー 藤井良平氏
株式会社リクルートジョブズ 商品本部
デジタルマーケティング室 マーケティング部
CXMグループ グループマネジャー 藤井良平氏

 CXMグループでは現在、主に「Salesforce Marketing Cloud」(以下、Marketing Cloud)を活用したプッシュコミュニケーションの改善と、チャットボットの開発に取り組んでいる。メンバーは古舘氏とマネジャーの藤井良平氏を含めて計5名だ。

 グループが新設される以前は、Marketing Cloudを利用した各ユーザーへのメール配信でのアプローチは集客のグループが担っていた。

 リクナビ派遣は前述のように会員登録を通してメールアドレスを把握しているため、メールでのプッシュコミュニケーションが基本となっている。また、アルバイトと違って派遣という雇用形態は契約期間があるため、再度サービスを使ってもらいやすい構造である。「この2点から、双方の親和性が高いと判断し、まずリクナビ派遣でMarketing Cloudを活用し始めました」と藤井氏は語る。

 「年度が替わり、さらに力を入れ推進していくために、CXMに特化したグループができました。リクナビ派遣はじめリクルートジョブズのサービスを気づいたら使っているという状態を実現するために、Marketing Cloudを活用しています」(藤井氏)。

 そもそも、リクルートジョブズはなぜMarketing Cloudを導入したのか? 2つの課題があったという。これまでも、メールは中心的な施策として効果があり、応募の中でもかなりのシェアを占めていたという。それだけに、「既存の体制で相応に科学されてきた」と古舘氏。これ以上、あまり改善の余地がないのではと思われる中、配信件数だけが多くなり、量を増やすことで次の行動を引き出すのは厳しい状況があった。

 もうひとつ、古舘氏が指摘するのは、いままさに情報を必要としているカスタマーをいかに把握するかという観点だ。そのタイミングを逃さずコミュニケーションをし、情報を届け仕事が見つかることで、また次回リクナビ派遣を使うリピーターになってもらえるような施策を打ちたいという考えがあった。

リクルートジョブズのPDCAを加速させるテクノロジーをチェック!

 無意識に選ばれるサービスになるべく、仮説構築からテスト・評価を柔軟にスピーディーに繰り返し、着実に結果を出しているリクルートジョブズ。その実現を強力にサポートするMarketing Cloudは、具体的にどのように機能しているのでしょうか?

 セールスフォース・ドットコムのサイトではMarketing Cloudの製品デモ動画を見ることができます。記事とあわせてぜひ、ご覧ください! 動画はこちらから

初回利用とリピーターの2つのペルソナを作成

 そこで、まずMarketing Cloud導入にあたり、大きく「初めてリクナビ派遣を利用する人」と「リピーター」という2つのペルソナを作成した。ユーザーの大半が女性のため、女性であることは前提として、インタビューなどから、この2タイプでは知識や行動が大きく異なり、その結果仕事の探し方も異なるとわかったからだ。

 ペルソナは、かなり細かいレベルまで落とし込んでいる。「初めて利用する人で想定しているのは、地方から上京してくる女性。年齢は20代半ば、正社員でばりばり仕事をしたいというよりは、バランス良く働いて自分の好きなことにお金と時間をかけたいという考えを持っています。周囲には既に上京して派遣で働いている友人がいて、その話を聞きながら自分もできそうだなというイメージを持ち上京した、そういうカスタマーです。リピーターのカスタマーについては、そのちょうど5年後くらいを想定して作成しています」(古舘氏)

 先ほどの課題を踏まえて、この2つのペルソナにどうアプローチすれば、より良く情報を届けられるか。Marketing Cloudをする上で、誰に送るのか(セグメント)、どういった内容を送るのか、いつ送るのかという3つの大きな観点がある。「最初のステップとして、セグメントの再検討から取りかかりました」(古舘氏)

ECサイトの鉄板施策“カート放棄”を応用

 前述のように、これまでもリクルートジョブズはメール施策をかなり追求している。そこでまず同社がとったユニークな策は、様々なネットサービスの中でも施策改善による効果が上がりやすいECサイトを参考にしたことだ。ECサイトで“鉄板施策”といわれる施策を、派遣サービスに置き換えて考えてみたという。

 どのようなシナリオがふさわしいかを考え、前述の両ペルソナのカスタマージャーニーを改めて把握。仕事探し、エントリー、面接、派遣先で勤務開始、契約終了、新しい仕事探し……という一連の流れの中で、モチベーションが特に高まっている仕事探し中の人(=ホットユーザー)へのアプローチが先行だと行き着いた。

 「2つのペルソナのジャーニーを考えると、行動が重なっている部分があります。先の課題を考えると、初めてのカスタマー、派遣の経験がすでにあるカスタマーともにアクティブになっている瞬間に必要だと思われる情報を届けることができれば、カスタマーにより便利に仕事探しをしてもらえ、その結果コンバージョンにも繋がるだろうと思いました。そこで、それぞれのジャーニーを鑑みて、特にアクティブだと考えられるカスタマーに対して、Marketing Cloudによるメール配信を開始しました」(古舘氏)

 そこで取り込んだ鉄板施策の1つが、ECでカートに商品を入れたものの購買しなかったユーザーにアプローチする、通称「カート放棄」だ。これを応用し、エントリー中の離脱やキープリストの登録をトリガーに、ホットユーザー向けシナリオを構築した。もちろん、この施策以外にも複数施策を実施している。

 「Marketing Cloudの良さの1つとして、PDCAをたくさん回せることが挙げられます。それを前提で考えていたので、セグメントも最初は『何をもってカート放棄とするのか』を確定せずに粗い粒度で始めて、仮説をもとに細かくモニタリングしながら徐々に絞っていきました。こういう切り口で見るとどうか、と思いついたアイデアをパッと試すことができるのがMarketing Cloud。試行錯誤を通して結果的に、従来の何倍ものコンバージョンが得られるようになりました」(古舘氏)

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行動の変化から興味・関心を察しCVR130%改善

 さらに一歩進んで、ユーザーのサイト内の行動やメールへの反応をもとに一人ひとりに異なる情報をメールで送信する施策も実施している。

 「従来はスケジュールに基づいた一括かつ画一的なメール配信をしていました。メールには内容や訴求点の異なる多くのテンプレートが用意されていて、どれかがカスタマーに刺さってくれると良いな、という状況でした」(古舘氏)

 そこで、行ったことがユーザー一人ひとりの興味関心を探ることだ。具体的には、テンプレートは同じものを利用し、テンプレート別の開封やメール内リンクのクリックといった様々な行動ログをユーザーごとに蓄積。独自のロジックでスコアリングを行った。

 「メールに興味のある情報があるか否かで行動は変わります。カスタマーの興味度が高いテンプレートを類推して、カスタマーそれぞれに適した情報を配信できるようにしました。その結果、CVRは130%改善されました」(古舘氏)

ニーズに合わせるだけでないOne to Oneの実現へ

 今後は潜在的にモチベーションが高い人にも情報を届けることにトライしたい、と古舘氏。現在はニーズが顕在化しているユーザーに対して適した情報を提供しているが、それでは十分ではない。そこで、わかりやすいアクションをとってはいないが情報を届けることで行動を開始する層を見つけ情報を届けるべく、いくつかの指標で重み付けをしながら最適なメールの配信設計を模索中だ。

 「その瞬間のデータだけ切り取っても、カスタマーのモチベーションはわからない。ジャーニー全体を踏まえて、時系列でカスタマーの気持ちの変化を捉える必要があると施策を通して気づきました。今はメール内容のパーソナライズに留まっていますが、今後はメールの配信数や種類もパーソナライズして、よりカスタマーのためになるOne to Oneコミュニケーションを実現して情報を届けたいですね。一口にカスタマージャーニーといっても、カスタマーは一人ひとり違うはずですので、より追求していきたいと考えています。また、単にカスタマーのニーズに合わせるだけでなく、サービス提供側だからできることも含めて、「働く」をサポートできればと思います」(古舘氏)

カスタマージャーニー研究プロジェクトチームのコメント

加藤:リクルートジョブズさんのお話を伺うと、仮説構築から実行までのスピード感と施策テストの柔軟性が、デジタルマーケティングにおいて重要だと認識できます。当初想定しているペルソナやカスタマージャーニーはあくまでも仮説です。そこをMarketing Cloudの鉄板施策を応用しつつ展開することで、スピード感のあるPDCAを実現している。
試行錯誤のPDCAサイクルが早いので、結果につながるスピードが従来のマーケティングと比べて何倍も早まっていると感じます。マーケティングを担当されている方には、特にこの点が参考になるのではないでしょうか。

押久保:リクルートジョブズさんといえば、LINEとの取り組みなど率先してテクノロジーやデータの活用に取り組んでいる印象です。「ECサイトで“鉄板施策”といわれる施策を、派遣サービスに置き換えて考えてみた」という発想は言われてみればなるほどと感じますが、大概はなるほどで終わってしまうもの。それを即実行する行動力がすばらしいと感じました。
「無意識のうちに選ばれる」は、まさに最近よく聞く言葉で今後多くの企業にとって大切な考えと言えるのではないでしょうか。

カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
「カスタマージャーニー」、顧客の一連のブランド体験を旅に例えた言葉。デジタルやリアルの接点が交差し、顧客の行動が複雑化する中、「真の顧客視点」に立って、マーケティングを実践する重要性が増してきました。
カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの必要性は、その認知が進む一方で、「きちんと“顧客視点に基づいたシナリオ”を作成し、運用できている企業はまだまだ少ない」多くのマーケターに意見を聞くと、そのように認識されています。
今回、押久保率いるMarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコム マーケティングディレクターとして、各企業とジャーニーを研究してきた加藤希尊氏を中心に、共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。その他の成功例はこちら

リクルートジョブズのPDCAを加速させるテクノロジーをチェック!

 無意識に選ばれるサービスになるべく、仮説構築からテスト・評価を柔軟にスピーディーに繰り返し、着実に結果を出しているリクルートジョブズ。その実現を強力にサポートするMarketing Cloudは、具体的にどのように機能しているのでしょうか?

 セールスフォース・ドットコムのサイトではMarketing Cloudの製品デモ動画を見ることができます。記事とあわせてぜひ、ご覧ください! 動画はこちらから

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この記事の著者

加藤 希尊(カトウ ミコト)

チーターデジタル株式会社 副社長 兼 CMO
広告代理店と広告主、BtoCとBtoB両方の経験を持つプロフェッショナルマーケター。WPPグループに12年勤務し、化粧品やITなど、14業種において100以上のマーケティング施策を展開。2012年よりセールスフォース・ドットコムに参画し、日本におけるマーケティングオートメ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/05/10 12:00 https://markezine.jp/article/detail/26192