インフルエンサーの活かし方
菅野:VAZさんが携わったマーケティング事例でうまくいった例を教えてください。
森:最近で言えば森永製菓さんの「友チョコ方程式」のキャンペーンが一番わかりやすいと思います。バレンタインの売上を増やしたいということがゴールで、森永のダースとホットケーキミックスとココアの三つの材料だけで簡単にチョコのお菓子が作れることを若年層に広めようという狙いでした。

森:ダース何個で友達何人分作れる、という意味での「友チョコ方程式」なんですけど、まずはその言葉を広めるために「友チョコ方程式」の歌とダンスを若年層が反応しそうな曲調と振りで作って、うちの所属インフルエンサーであるねおちゃんやりかりこちゃんに踊ってもらったと。
振り付けは新垣結衣さんのポッキーダンスを作っている有名な先生にお願いしました。それでうちの若年層向けのSNSで「友チョコ方程式コンテスト」を開催して、「『友チョコ方程式』を踊って投稿して“ねお賞”に選ばれた人はねおちゃんの直筆サイン入りチェキをもらえますよ」というインセンティブを付けた。
その上で、踊るだけではなくて実際にチョコを作ってもらうために、今度はねおちゃんとりかりこちゃんが実際にダースでチョコを作る動画を流して、コンテストも「踊ってみた部門」とあわせて「作ってみた部門」を置き、みんなにも作ってもらうという流れにしました。
森:結果、Twitterでの動画再生数は468,284回、YouTubeでの動画再生数は1,729,569回にまで上りました。立体的に企画することで狙いをすべてカバーできて結果につながったという良い例だと思いますね。
菅野:今回は10代への拡散という部分でFIVE のプラットフォーム でも「友チョコ方程式」の動画を配信して投稿を呼びかけるっていうことをさせてもらいましたね。
森:はい。ユーザーに頼るとどうしても一気にマスにリーチする、面を作るという保証がしにくいので、一気に何百万人にリーチしたいときは配信面を増やして、アドとインフルエンサーを組み合わせるのが非常に効果的だと思います。
これからは“インフルエンサー”という肩書きをなくすことを目指す
菅野:インフルエンサーをネットワークするという企業って、今わりと多く出てきていますけど、VAZさんはその中でどう差異をつけて、どうなっていきたいと思っていますか?
森:とりあえずインフルエンサーを束ねて専属契約もせずに「好きな時にお仕事してね」という会社も多いんですけど、うちは専属で契約をして、それぞれの個性に合わせてマネジメントをして、最後にスターにするところまで一本化してやる覚悟ですね。
もちろんうちにもねおちゃんのように「藤田ニコルちゃんのようになりたい!」と野心をもっている子もいれば、「趣味レベルでやってます」という子もいます。でも本人の望みによってはショートムーバー・YouTuberの枠を超えてスターにする、インフルエンサーという肩書きをなくす、そういう事例を作ることが大事だと思っています。インフルエンサーってただ拡散機だと思われがちですが、そうではなくて、そもそも実際はリアルにファンがいるタレントだと思うので。
菅野:なるほど。むしろインフルエンサーという言葉でなくてもいいというか、新しい形のタレント事務所のモデルを作るということに近いですね。
森:そうですね。やっていけばいくほど従来のタレント事務所ってすごいなと思うんですよ。王道ルートでタレントにしていくブランディングって大事だなと。テレビに出ることによってより多くの人に「今この子流行ってるね」と認知してもらう、それでインフルエンサーからタレントになれるかどうかがこれからのチャレンジです。
音楽でも、スカイピース(テオくんのユニット)はソニーさんと組んでミュージシャンにしようと思っていますし、そうやってガチなアーティストやガチなタレントを生んでいって、そういう方向性もあるんだという希望を与えたいと思います。そういう広がりのもとに、趣味でも王道でも、いろんな「有名になりたい」子たちがそれぞれの気持ちを満たせるプラットフォームを作っていきたいですね。
転載元
この連載は、モバイルでイノベーションを起こす「人」と「仕事の舞台裏」にスポットライトを当てるMOBILE PEOPLEの記事を再編集して掲載しています。
