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MOBILE PEOPLE厳選記事

ナイアンティックの仕掛け人が明かす『ポケモン GO』世界的大ヒットの舞台裏

 モバイルでイノベーションを起こす「人」と「仕事の舞台裏」にスポットライトを当てるMOBILE PEOPLEからの、厳選記事を紹介する本連載。今回は、あの『ポケモン GO』の大ヒットを生んだNiantic, Inc.の日本法人でアジア統括マーケティングマネージャーを務める須賀健人さんです。空前の大ヒットを仕掛けたマーケティング活動の秘密に迫りました。

実はみんな「ポケモンが現実世界にいたらいいな」と思っていた

ナイアンティック アジア統括マーケティングマネージャー 須賀 健人氏(写真左)ファイブ Co-founder.CEO 菅野圭介氏(写真右)
ナイアンティック アジア統括マーケティングマネージャー 須賀 健人氏(写真左)
ファイブ Co-founder.CEO 菅野圭介氏(写真右)

菅野:『ポケモン GO』に関してはこれまで開発やプロダクトに関する取材が多かったと思います。今日は、あまりこれまで表に出てこなかったマーケティング活動の舞台裏を聞かせてもらいたいと思っています。早速ですが、須賀さんがマーケティング担当者として何をしてきたのか、時系列に沿って具体的に聞かせてください。

須賀:そうですね、プロジェクトそのものの始まりというのは、Google マップのポケモンチャレンジというエイプリルフールの企画がきっかけでした。僕は偶然にもこの時点から関わっていたんですが、その一発目が2014年の4月ですね。そのエイプリルフールの動画をみた弊社の現CEOジョン・ハンケと株式会社ポケモンの社長である石原さんがこれを製品化したいということで、プロジェクトが発足しました。

 それで、プロダクトをリリースする準備に入ったのが2015年の春くらいです。マーケティングとしてはこれだけ革新的なものを世に発信するのだから、やはり革新的な映像とともに広げようという話になり、僕はグローバル向けの映像制作を始めました。

菅野:それがいわゆる、ティザームービーとして広く見られたこの動画ですね。「え、ポケモンがスマホに来るの?」と非常に期待が高まる内容でしたが、どのような意図で制作したのでしょうか?

須賀:そうですね、僕は一番大事なのはプロダクトだと思っています。プロダクトが持ってる意思、プロダクトを作っているエンジニアが持っている意思が何より大切だと思うんです。

 なので、コミュニケーションを作るときも、プロダクトおよびエンジニアが持っている意思をいかに世の中に伝えるか、いかに翻訳して世の中に伝えるかを大切にしています。そのため『ポケモン GO』を作ったうちのエンジニアがやりたいことを、映像やクリエイティブで表現しました。

菅野:このティザームービーは、サービスの全貌もまだ見えていないタイミングで作ったのかなと思いますが、大きな目的はどこに置いていたんですか?

須賀:はい、まだプロトタイプができる前の段階でこの映像制作は始まりました。ですが、確固たるコンセプトは決まっていて、“人を外に連れ出す”。これはナイアンティックの社是でもあります。

 なので “人を外に連れ出す”、“人と人がつながる”、あとは“ポケモンを捕まえてバトルをする”、こういった要素を映像の中に盛り込んで、それを使っている人々を描くということが最初に決まったことです。これはプロジェクトを共同で進めているポケモン社も同様のビジョンをもって企画を進めていきました。

菅野:コンセプトが決まっていても、開発中の段階でまだビジュアルが固定されているものではないですよね。プロダクトも完成していない時点で世界観を表現するのは、描き方にも無限に選択肢があったと思いますが、どうやってこの映像を作り上げていったんでしょうか?

須賀:ベースになったのはポケモンチャレンジ、エイプリルフールの動画です。この動画がなぜここまで受け入れられたかって、人々がきっとどこかで思い描いていた、望んでいたものだからだと思うんです。

 つまり、我々がゼロから作り上げた世界というより、多分みんな「ポケモンが現実世界にいたら嬉しいな」という気持ちがあったと思うんですよ。そういう気持ちを映像化することが重要なことだったと思います。

菅野:なるほど。みんなが「ポケモンがもしこの現実世界にいたら」と心のどこかで思っていたと。そして、もしポケモンがこの世界にいたらみんな何をしたいか、こうだったらみんなが喜ぶ、という世界を引き出すように考えたということですね。プロダクト的にはオーバーコミットしてはいけないという難しさもあったと思いますが、そのあたりの塩梅はどうされましたか?

須賀:実際、オーバーコミットとも言われましたよ(笑)。ただそこは、プロダクトそのものを見せるというよりはプロダクトによってどういう感情が想起されるのかにフォーカスしたということが大事だったと思います。

菅野:確かにあまり機能的なことは紹介されていなかったですね。

須賀:あそこに何がいたら楽しいだろうとか、一緒に何を捕まえたらおもしろいだろうとか、そういった感情を表現することを心がけました。結果として現実がこの動画を超えたようなことになったので、役割は果たせたと思っています。

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この記事の著者

ファイブ株式会社 菅野 圭介(カンノ ケイスケ)

2008年にGoogle Japanに新卒一期として入社。買収後のAdMobの日本オペレーションの立ち上げ、YouTube広告製品等のプロダクトマーケティング・収益化・ビデオクリエイティブエコシステムの拡大を担当。2014年にFIVEを設立。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/05/17 10:00 https://markezine.jp/article/detail/26407

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