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ナイアンティックの仕掛け人が明かす『ポケモン GO』世界的大ヒットの舞台裏

「ほらね」の感覚は市場調査よりも早い!

菅野:ティザームービーで認知度を高める他に、どのようなマーケティング活動をされていましたか?

須賀:フィールドテストですね。2016年の3月から7月、ローンチ直前までの4ヵ月間は、招待制でユーザーに製品のトライアルをしていただく活動を行いました。

 具体的には、我々がこれまで運営してきた、ARを活用した位置情報ゲーム『Ingress』というゲームのプレーヤーの中で、特にレベルの高い方々に『ポケモン GO』をプレイしてくださいと招待を送り、プレイしてもらって意見や感想をもらうものです。

 『Ingress』では、ユーザー自らが申請した場所を「ポータル(※)」というゲーム内のスポットとして登録していることや、ユーザーの手助けを得ながらリアルイベントを行うなど、ユーザーと近い立場で多くの時間を過ごしてきました。

 言い換えると、ナイアンティックとユーザーとの間に壁がないことが一つの資産でした。『ポケモン GO 』のリリースにあたっても、このコミュニティにはかなり助けられていまして、『Ingress』プレーヤーが遊んでみてどう思うかということを、僕自身もフィールドテストのコミュニティに参加して対話しながらフィードバックをまとめて社内に共有し続けてきました。

※ポータル…実際の地図上に存在する寺院や公園、史跡や道端にあふれるアート作品など、Ingressのゲーム内にあるスポット

菅野:一方向でのコミュニケーションが成立しづらいという文脈で、いわゆるコミュニティマーケティングは多くのブランドが力を入れ始めている分野でもあると思いますが、ファンコミュニティと対話する時に気をつけていることはありますか?

須賀:嘘をつかないことですね。言わないことや言えないことはあるかもしれないですけど、嘘はつかないこと。これがとても大事だと思います。

 そしてユーザーと同じ目線でものを見ること。自社製品で遊んでいないとユーザーと会話ができないので、普段からユーザーの活動を眺めてSNSなどで今自分の製品を使っている人の発信に必ず目を通しています。

菅野:お話を聞いていると須賀さんはユーザーと相対するというよりユーザーと一緒に遊ぶ、一緒に過ごすという感じが強いですよね。こうしたコミュニティマーケティング的な手法は、そもそもソーシャルメディアが一般化してはじめて成立すると考えていいのでしょうか?

須賀:そう思います。ユーザーのソーシャルメディアへの投稿は、ファンコミュニティ内に向けて発信されていると同時に、全体公開にしている人も多いので、半分はコミュニティ以外の世界に向けられたメッセージであることが多い。

 なので、そこのメッセージをうまく読み取っていくことがコミュニティを運営してサービスを成長させていく上では非常に大切なことだと思います。

菅野:ソーシャルメディアという場がでてきて、ブランド・製品とファンが直接つながる機会が増えてきて、そこの成否がさらに重要になってきているということですね。

須賀:そうだと思います。いわゆる市場調査を行い、その結果を分析して仮説を立て、次の手を打つ、というのが今までのマーケティングの伝統的な手法だと思いますが、コミュニティと同化してユーザーを見ているともっとすごいスピードで物事が進んでいくんですね。

 なので定量的な市場調査ができていない段階でも、自分自身がコミュニティと一体化していることで状況をもっと早く察知できるのがこれまでの世界とは違っていることだと思います。

 自社の製品に深く没頭しているマーケターって実施した調査結果に「あ、やっぱりそうだったんだ」という感覚を持つことが多いと思うんですよ。その「ほらね」という感覚が僕は大事だと思っていて、その感覚をより強化していくにはコミュニティと多くの時間を過ごすことが重要だと思っています。

菅野:今お話を聞いていたら、ユーザーインタビューをリアルタイムにやってるというような感覚かなと思いました。

須賀:ある意味それは近いかもしれないですね。伝統的なマーケティング手法では定量的なデータをとり、フォーカスグループインタビューをやってインサイトを見つけるという流れがありますけど、それをリアルタイムでもっともっと早いスピードでより深く入っていくというのがコミュニティマーケティングの本質かなと思います。

菅野:なるほど、それはおもしろいですね。コミュニティと同化することでリアルタイムで得られる気づきを、ある程度の期間をとって定量的に市場調査として処理した分析と重ねてみて、ああやっぱりね、ってなるわけですよね。

須賀:はい。コミュニティからもらうフィードバックと、答え合わせとしての定量調査を突き合わせて次の手を打っていくっていうのが今の時代なのかなという気がします。

菅野:テクノロジー製品なのに、ある意味ですごく身体的な感覚を重視するというのがおもしろいですね。

須賀:そうですね。

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ユーザーの声を傾聴するだけではヒットは生まれない

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この記事の著者

ファイブ株式会社 菅野 圭介(カンノ ケイスケ)

2008年にGoogle Japanに新卒一期として入社。買収後のAdMobの日本オペレーションの立ち上げ、YouTube広告製品等のプロダクトマーケティング・収益化・ビデオクリエイティブエコシステムの拡大を担当。2014年にFIVEを設立。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/05/17 10:00 https://markezine.jp/article/detail/26407

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