リアルイベント×Twitterで10代ライト層における話題化を狙う
具体的に、時系列で施策の流れを見ていきたい。
“バイオの日”に予告開始、世界最速で映像解禁
「以前から日本において8月10日は“バイオの日”としてファンの間で認知されています。この日の盛り上がりを最大化すべく、グローバルにおけるマーケティング立ち上げを日本の“バイオの日”に合わせることができないか、本社に交渉しました」(高松氏)
8月10日にTwitter上で緊急告知としてツイートを展開し、同予告ツイートをリツイートしてくれた利用者に、デジタルインセンティブがダウンロードできるURLを自動返信するフォロー&リツイートキャンペーンを14日まで実施。
さらに、17日に世界で初めてビジュアルを解禁し、Twitterで拡散するとともに、渋谷でリアルイベントを開催した。“バイオの日”に盛り上がりを作り、映像解禁までその盛り上がりを維持したわけだ。なお、本フォロー&リツイートキャンペーンの結果として、実施期間5日で11万ダウンロードを達成、またイベントに関する話題も多くツイートされた。
日本独自の戦略――10代人気タレント×Twitter
本作では、日本で10代に人気のタレント:ローラがキャスティングされており、大きな話題となった。本来、グローバルでクリエイティブが統一されるケースが多い中、市場での影響度を鑑みて、日本独自のキャンペーン戦略を打ち立てることの重要性を本国に訴えた。今回ローラをハロウィンキャンペーンにおける広告のメインビジュアルに据えたが、それが実現した理由もそこにある。
本キャンペーンでは、10月24日に白いドレスを着た『バイオハザード』とはかけ離れたイメージのローラをメインビジュアルに据えた屋外広告を展開。それを10月31日にゾンビのメイクをしたバージョンに貼り替えるというものであった。突如様変わりした屋外広告は人々にインパクトを与えた。
この時、Twitter上でも連動して自動返信キャンペーンを実施。キャンペーンツイートをリツイートしてくれた利用者に対し、ゾンビバージョンのクリエイティブがハロウィン当日に届くという仕掛けだ。映画宣伝トラッキングレポート「CATS(Cinema Analytical Tracking Survey/キャッツ)※1」によると、リアルキャンペーンとTwitterの連動によって、同作の鑑賞意欲が大きく伸長する結果が出たという。
※1 GEM Partners社提供
ワールドプレミアをリアルタイムコンテンツ×プロモトレンドで盛り上げ
海外映画の公開順は製作国(本作品においては米国)より後ろになることが通例だが、今作はマーケットの重要性を鑑み、特別に全世界に先駆けて日本で最初に公開されることとなった。それに伴い、映画PRにおける最大のイベントであるワールドプレミアを12月13日に日本で開催することが可能となった。
『バイオハザード:ザ・ファイナル』最大のイベントともいえる同日、Twitter上でプロモトレンドを実施した。特筆すべきは、1日をイベント前・中・後の3段階に分け、各フェーズで異なったコンテンツをプロモトレンド上で提供したことである。
まず、日本語吹き替え版主題歌であるL'Arc-en-Ciel「Don’t be Afraid」のミュージックビデオをフルバージョンで1日限定公開。イベント前の夕方までに1万を超えるリツイートを記録し、初動で注目を集めることに成功した。
イベント中はレッドカーペットの様子をPeriscopeでライブ配信に切り替え、現場の臨場感を伝えた。さらに、イベント終了後にはライブ配信した動画のハイライトを編集して配信し、好評を博した。イベント後の動画は当日30万回再生され、最終的には55万回まで伸びた。
参考リンク
https://twitter.com/biomovieJP/status/808325558392078337
最新フォーマットで公開カウントダウン
ワールドプレミアで醸成した熱量を維持するために、一般公開直前の12月19日~23日には、当時最新フォーマットであった正方形動画を使ったカウントダウンを実施。オーガニック投稿にも関わらず、公開当日の動画は9,000リツイートにのぼった(編集部注:Twitterで正方形動画の広告フォーマットが公式に提供開始されたのは2017年から。今回はベータ版を活用)。
徹底的なローカライゼーション:年賀状に発想を得たサステイニング・キャンペーン
「Twitterの季節性を活かした施策の1つとして、ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリスから年賀状のようなお正月の挨拶が来たら面白いだろうと考えました。映画業界にとってクリエイティブは重要な資産ですから、簡単にパロディはさせてもらえません。本社に日本の年賀状文化やTwitterにおける季節イベントの重要性を説明し、この企画の許可をもらえるよう説得しました。8月からの施策の積み重ねによって数字に裏付けされた効果が示せたことも、許諾を得られた一因だと思います」(高松氏)
上記交渉により、屋外ポスターとTwitterが連動した大規模なお正月施策が実施されることとなった。具体的にはTOHOシネマズ新宿に掲出していた約20mのミラ・ジョヴォヴィッチのビジュアルを、大晦日の夜に日本用にローカライズした賀正バージョンに張り替え、Twitter上でも同じビジュアルを活用し、 対象のツイートをリツイートした利用者に向けて、年明けに自動返信ツイートで、賀正メッセージを送った。
ローカライズ×モーメントを意識したクリエイティブが成功の鍵
一連のプロモーションにおいて、CATSレポートを振り返ると、Twitterがターゲット層の認知や興味、意欲、ファーストチョイス率のアップに貢献していることがわかったという。
「Twitterとバイオハザードの親和性が高いと確信したのは、8月10日の“バイオの日”。21万エンゲージメントを記録しました。それを受けて、Twitter中心に施策を組み立てていったのです。
各キャンペーンごとに最適化したクリエイティブを作ったことも成功のポイントだと思います。トレーラーを流し続けるケースが多い中、これだけ多様なクリエイティブを作成し配信する事例も少ないと思います。結果、バイオハザード関連ツイート数を見てみると、圧倒的な成果をあげられたことがわかりました」(星野氏)
さらに、映画公開1週目の鑑賞意欲を調査したところ、15歳から19歳男性および、20代男性における鑑賞意欲・ファーストチョイス※2は他の作品に比べ2倍以上の結果となった。
※2ファーストチョイス:映画観賞者人口の中で、本作を最も映画館で観たいと回答した人の割合(鑑賞意欲がある、即ち「絶対に映画館で観る」と回答した作品が複数ある場合は、その中から1つ選択)。