アプリ市場への新規参入を成功させるためには
消費者にアプリを使う習慣が浸透し利用時間が増える一方で、アプリストアで提供されるアプリの数は増え、ユーザーに選んでもらうハードルは上がっています。また、ユーザーが頻繁に利用するアプリは固定される傾向にあり、そこに割って入るのは難しくなっています。
今回は、こういった状況を踏まえて、新たにアプリ市場に参入する企業や、既存のアプリを新たな市場に展開する企業が成功率を上げる方法について、パブリッシャーへのインタビューを交えて、紹介したいと思います。
今回インタビューさせていただいたのは、フリマアプリを提供するメルカリのデータサイエンティスト石附拓也さんです。メルカリが米国市場へ進出した際にどのようにデータを見ていたのかをうかがいました。(インタビューは2016年に実施されたものです)
リテンションはユーザーがメルカリに価値を感じていることの証し
――メルカリが米国進出にあたってApp Annieを通じて外部のアプリデータを調査したのは、どのようなきっかけによるものだったのでしょうか。
石附:メルカリが米国に参入したとき、市場における自分たちの立ち位置がわからず、市場データが必要だと感じました。最初の課題は「他社がどういう動きをしているのか」、そして「メルカリは他社の動きとどう関係しているのか」を知ることでした。
――アプリのパフォーマンスをはかるための指標は多くありますが、その中で特に重要視している指標はどれですか。
石附:特に重視している指標は、ユーザーのリテンション(継続率)です。サービス内にユーザーが残ることが一番大事だからですね。導入前から自社のリテンションは重視して見ていたものの、他社との比較はできていませんでした。 App Annieを導入したことによって、自社のリテンションが他社に比べて高いのか低いのか、相対的にわかるようになったのは一つの利点です。経営層からリテンションに関連した質問が飛んできても、数値で答えられるようになりました。
――リテンションはメルカリにとってどういう意味を持っているのでしょうか。
石附:リテンションはユーザーがアプリに価値を見出したときにのみ向上します。デイリーのアクティブユーザー数というのは、たとえばプッシュ通知を打てば上げるかもしれません。しかし、プッシュ通知を打ちすぎると、ユーザーは嫌がりアプリを削除してしまう可能性もあります。メルカリでは、ユーザーがメルカリに価値を感じ、継続的に利用してくれているのかを見るためリテンションを重視しています。