全国でセレクトショップ事業を展開する株式会社ナノ・ユニバース。トレンドを踏まえたブランドプレゼンテーションと、高品質なオリジナルアイテムによるマーチャンダイジングで、感度の高い顧客層から熱い支持を受けています。
同社はデジタルにいち早く注目し、積極的に投資を進めてきました。現在、ECでの売り上げが全体の40%以上を占めています。
同社のモバイルシフトは他業種よりも早く、通勤通学の合間や昼休みなど、暮らしの中で気軽に見られることを目指したオリジナルアプリを展開しています。
「店舗からアプリへの導線」を意識
「かつてのように『コレクションがトレンドを発信する』というのではなく、インフルエンサーやファッションブロガーなど、よりリアルに近い情報発信が好まれる中で、我々が『どんな世界観を表現したいか』を発信していくことが重要となってきています」と話すのは、ナノ・ユニバースでデジタルマーケティングを一手に引き受ける経営企画本部WEB戦略部長の越智将平氏。
「オウンドメディアでオリジナルコンテンツを継続的に発信し、自分たちとしては満足していましたが、なかなか結果が伴わなかったのも事実。きちんとKPIを設定すべく、市場及び競合のデータを把握し、検証して施策を行えるよう、2014年にApp Annie Intelligenceの導入を決めました」
アプリでは、オリジナルコンテンツの発信だけでなく、各店舗からの情報発信を重視しています。ポイントが貯められる会員カード機能を持たせるなど「店舗からアプリへの導線」を意識したといいます。
「実は、ウェブサイトに比べてアプリのコンバージョンは約3倍もあります。しかし、これだけECの時代ですが、弊社のロイヤルカスタマーは店舗起点がほとんどです。今後さらにロイヤルカスタマーを醸成していくために、店舗スタッフからお客様にアプリをご紹介し、ダウンロードを促しています。
目指しているのは、お客様が店舗以外でも日常的に『ナノ・ユニバースの世界』を感じられるようなアプリです。店舗に来ていただいたお客様を、店舗だけで終わらせず、モバイルの世界に連れていくことを意識して設計しています」
より「日常的な」コンテンツを目指して、競合以外もベンチマーク
同アプリは、モバイルファーストのコンテンツや、店舗スタッフによるコーディネートを俯瞰で見られる縦のレイアウトになっています。
App Annieでデータを取得する際、ベンチマークとなる同業他社のアプリに限らず、ゲームやエンタメなど他ジャンルのアプリの数値は大いに参考になったと話す越智氏。
「せっかくダウンロードしてもらっても、まずは見てもらわなければ意味がありません。日常のさまざまなシーンでアプリを立ち上げてもらえるように、アクティブ率をチェックしています。たとえば人気のゲームがいつどのように見られ、どんな施策がユーザーに響いているのか、App Annieを見ることで明らかになるので、そういったデータをマーケティング施策に活かしています」」
「ナノ・ユニバースでなければいけない」必然性を掴む
2017年からはアプリを刷新し、アプリ内でコンテンツとECのシステムをシームレスに連結させました。また、会員カード機能などの既存機能に加えて、店舗にビーコンを設置してチェックイン機能を持たせるなど、店舗への送客を図る仕掛けをさらに盛り込みました。アプリの閲覧履歴と来店履歴を連動させ、店舗からアプリへ、そしてアプリから店舗へと立体的な回遊を促す取り組みをはじめています。
「アパレル業界の中ではEC比率が高いほうだとはいえ、やはりカートのCV率だけ追うのでは浅い。まずは積極的に店舗へ来ていただくこと。そしてそこで何も買わずに帰ったとしても、アプリで再度コーディネートをリマインドしてECで購入していただいたり、アプリでチェックされた後に改めてお店に来ていただき、試着していただくことで、そのアイテムの購入を後押しすることができるかもしれません。
情報があふれ、他にも魅力的なコンテンツやショップがたくさんある中でも、『わざわざ』ナノ・ユニバースでなければいけない理由……『このアプリが必要』と思ってもらえるような世界観を、このアプリで表現していきたいです」