LINE カスタマーコネクトで親しみやすいカスタマーサポートを
KDDIエボルバは、約22,000人のオペレーターを有するカスタマーセンターを持ち、企業のカスタマーサポートを支援してきた。企業と消費者のコミュニケーションチャネルの変化にともない、従来の電話やメールから、AIチャットボットや有人チャットといった新しいチャネルの導入・対応を進めている。
なかでもLINE カスタマーコネクトは、消費者に浸透したといっても過言ではないLINEを通しカスタマーサポートができるシステムで、今年4月に正式リリースされた。アスクルの一般消費者向けECサイト・LOHACO(以下、ロハコ)のLINEアカウント「LOHACOマナミさん」にもLINE カスタマーコネクトが導入されており、AIチャットボットが自動回答する「Auto Reply」、オペレーターがチャットで対応する「Manual Reply」が活用されている。
「LOHACOマナミさん」をはじめ、LINE カスタマーコネクト導入支援、運用に関わるのは、KDDIエボルバのサービス開発本部にて本部長を務める白川始氏、エンジニアの近藤浩之氏、営業の稲葉哲也氏。企業にとって、LINE カスタマーコネクトの導入はどのようなメリットがあるのか、3者に聞いた。
――企業と消費者の新しいコミュニケーションチャネルとしての活用が期待される、LINE カスタマーコネクトの特徴を教えてください。
白川:LINE カスタマーコネクトの特徴は、幅広い世代のユーザーに親しまれているLINEをチャネルとして、カスタマーサポートができるところです。チャットボットの仕組みやオペレーターのチャット対応は以前からあるものですし、「マナミさん」もブラウザ対応を行っています。LINEを介してテクノロジーを活用する場が広がり、効率的なカスタマーサポートができるという点が魅力なのです。
稲葉:従来のカスタマーセンターは、丁寧な対応を心がけている分、ビジネスライクな印象もありました。LINEの場合は問い合わせをするというよりも、すぐそばにいる人へ話しかける・相談するといった感じでしょうか。スタンプを使うこともできるので、親近感が生まれ、消費者と企業のコミュニケーションのハードルが下がりますね。
――電話やメールだと改まってしまうところを、LINEだと気軽に聞けるという心理があるんですね。
近藤:チャットでは即座に画像を送ることもできますので、お客様は何に困っているのか、オペレーターはどう解決できるかを説明しやすくなります。また、LINEはプッシュ通知でトークのお知らせもできるため、問い合わせ対応中のお客様が情報を見落とさないというメリットもあります。
ファーストユーザーのアスクルに提供した実績を持つKDDIエボルバ
先ほどから名前の挙がっているアスクルの「LOHACOマナミさん」、実はLINE カスタマーコネクトの初めての導入事例なのだ。KDDIエボルバの支援のもと、2016年11月からの試験運用を経て、2017年4月よりLINE カスタマーコネクト正式版を導入。AIチャットボットと有人チャットを組み合わせたカスタマーサポートを提供している。
そしてLINE版「LOHACOマナミさん」では、すでに大きな成果が上がっている。AIチャットボットの正答率は93%、有人チャット後の顧客アンケートでは92%以上の満足度を得ている(共に2017年1月時点)。
また、特定の問い合わせにおいて、有人チャットの導入効果が見られたことから、今後LINE ビジネスコネクトを活用して顧客データベースなどとのシステム連携を行い、より高い顧客体験の提供を実現するための拡充を行うという。
チャットボットで顧客満足度向上×作業効率化を実現
――LINE カスタマーコネクトの導入は、カスタマーサポートのどのような課題を解決するのでしょうか。
近藤:通常コールセンターには、営業時間があります。そのため、受付終了後の対応ができず、顧客満足度が下がってしまうという課題がありました。
LINE カスタマーコネクトの「Auto Reply」であれば、営業時間外はAIチャットボットが一次対応することができます。もちろん営業時間内であっても簡単な質問はAIチャットボットが対応し、複雑なお問い合わせはオペレーターが引き継ぐということも可能です。
そして何より、チャットでのオペレーションは業務改善に大きく貢献します。当社が支援しているアスクル様の「LOHACOマナミさん」では、1人のオペレーターが最大3人までのお客様を同時対応するようにしています。同時対応であっても、スピードやわかりやすさといった顧客満足度は92%と高い結果が出ています。
――電話は1対1での対応が限界ですから、その点だけでも効率化しているといえますね。同時対応を4人、5人とすることはできないのでしょうか。
白川:オペレーターとお客様が1対3という割合は、実証実験をした結果に基づいています。当社のチャットセンターで、オペレーター1人に対し何人であれば生産性とクオリティ、お客様の満足度のバランスが最もとれるかを計測したところ、同時対応は3人までが良いという結論になりました。
稲葉:実証実験の上でオペレーションが構築できるのは、カスタマーセンターにおいて日々お客様と接しているからこそですね。これは当社の強みといえます。AIチャットボットには得意・苦手な領域があり、感情を汲み取っての高度な対応は、まだまだ人間の力が必要です。AIチャットボットをうまく使い、オペレーターとハイブリッドで対応するのが理想的です。
企業の顔となるAIチャットボットはキャラクターを作り込む
――チャットボットはどのように導入されるのでしょうか。
近藤:ご契約後、平均して3ヵ月ほどでサービスを開始できますが、一番時間を要するのはAIチャットボットのキャラクター作りです。アイコンから話し方まで企業に合わせて丁寧に設定を作り上げていきます。
白川:企業が設定している「ユーザーのペルソナ」をもとに、どんな風に話しかけられるとユーザーは気持ちがいいだろうか?というところを探って、キャラクターを設定します。
チャットセンターやコールセンターは、カスタマーサポートのひとつのパーツですが、広い視点で見るとマーケティング活動の一環でもあります。そのため、キャラクターは企業の顔としてじっくり考えています。
正答率と0件ヒット率を改善し、チャットボットを賢く
――AIチャットボットはAIの機能を使ったチャネルということで、注目している企業は多いと思います。具体的に、どのようにしてAIチャットボットに学習させるのでしょうか。
近藤:AIチャットボットに入れるのは、あくまでFAQをベースにした人間の知識です。AIチャットボットで対応できずにオペレーターへエスカレーションした問い合わせの内容を精査して、新たな知識としてAIチャットボットに入れていきます。日々のチューニングによりAIチャットボットの偏差値・賢さを向上させなければなりません。
白川:コールセンターの評価指標に近いのですが、KDDIエボルバではAIチャットボットの正答率、0件ヒット率を追っています。正答率とは、AIチャットボットが正しい答えを返したかという率を指します。
「LOHACOマナミさん」の場合は、平均が93%以上と高くなっています。0件ヒット率は、AIチャットボットがわからないと答えた率ですね。これが低いほど、元となるFAQのデータがしっかり作られているということになります。
稲葉:正答率が上がっても、お客様の満足度につながるわけではないというところが難しい点です。例えば「購入したけれど、ある商品だけ早く送ってほしい」という問い合わせがあった場合、AIチャットボットでは「できません」と返答してしまいます。
これは設定上正しい答えですが、お客様としては不親切に感じられますよね。このような細かい部分も改善を重ねていくと、AIチャットボットがキャリアの長いオペレーターのような存在になるのです。実際にLOHACOの運用デスクでは、オペレーターがわからないことを「LOHACOマナミさん」に聞くということが日常的にあります。
近藤:「LOHACOマナミさん」は、問い合わせ対応後に「問題は解決しましたか?」というアンケートを行っています。「はい」の返答数をKPIとして定め、AIチャットボットの導線を改善しながら、KPIを上げていくということを私たちは繰り返しています。
「正しく」答えて、「わからない」のない、失敗しないAIチャットボットを作り上げるのが目標です。
企業価値を高めるカスタマーコミュニケーションが当たり前になる
――LINEのIP通話でサポートができる「LINE to Call」など、今後もLINE カスタマーコネクトを用いたカスタマーサポートの拡充が予定されています。今後LINE カスタマーコネクトを通じて、どのようなカスタマーサポートを実現できそうでしょうか。
稲葉:当社はコールセンターを持つため、オペレーションとテクノロジーの両方を組み合わせてサービスをご提供できるのが強みです。LINE カスタマーコネクトも機能が増える分、ユーザーが使いやすい導線設計を考えて支援していきたいと思います。
近藤:返品の受付や宅配便の時間指定など、お客様からのリクエストすべてをLINE上で完結させたいと考えています。さらにエンジニア視点で、運用する企業側にも簡単で時間がかからないオペレーションにしたい。お客様も企業も嬉しいという設計を作りたいですね。
白川:カスタマーサポートに求められることは、「早く」「いつでも」「なんでも」「正しく」答えてくれるということ。また、親切で丁寧であるということも前提に必要です。これらは、ずっと変わりません。LINE カスタマーコネクトを通して、もっと企業価値そのものを高めるカスタマーコミュニケーションをご提供していきたいです。