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MAによるLTV最大化に取り組むオイシックス 圧倒的な改善スピードを生む組織づくりと運用上の工夫とは

 MAは導入すれば必ず成果が上がるとは限らないのが難しいところ。MAの効果を高めるためには、どのような運用をすればいいのだろうか。そして、運用を成功させるための組織体制づくりはどのようにすればいいのだろうか。 本記事では、7月13日にチーターデジタルが開催した「Marketing Forward 2017 Summer」よりオイシックスドット大地の米島氏の講演をレポート。同社ならではの運用手法と、それを可能にしている基本的な考え方や評価方法上の工夫を紹介する。

「続けてもらえる仕組みづくり」と「目の前のお客様の悩み解消」がオイシックスのマーケティング

 食の安全に関心がある子育て世代や、おいしいものに目がない人、忙しくて買物や献立づくりができないワーキングマザーを主な対象とした定期宅配サービス事業「Oisix」を営むオイシックスドット大地。

 同社が展開する定期宅配サービスはいわゆるサブスクリプションモデルのビジネスで、お客様に長く使い続けていただくことで売上が上がる仕組みである。

オイシックスドット大地 経営企画本部 米島和広氏
オイシックスドット大地 経営企画本部 米島和広氏

 よって、オイシックスにおけるマーケティングの基本方針は「お客様により長く続けていただける『仕組み』を実施すること」にあるとオイシックスドット大地の米島和広氏は語る。

 「短期的な売上アップ施策も時には行いますが、基本は、利用継続につながる仕組みづくりにあります」(米島氏)

講演資料より(以下、同)

 では、利用継続してもらうにはどうすればいいのか。オイシックスはコミュニケーション施策を練るための基本的な考え方として「目の前のお客様一人ひとりを大切にする」という目標をスタッフ間で共有している。

 「オイシックスを活用している、目の前の人の具体的な悩みを、いかに鮮やかに解決して、熱狂的なエンゲージメントを生み出せるかを重視しています。そのためには、データも見ますが、あくまでお客様を把握するためです。数字から導いた平均的な指標を重視してしまうと、結局ふわっとした施策になって誰にも刺さらなくなることが多いので」(米島氏)

新規獲得とLTV向上を実現するためにMAを導入

 「お客様一人ひとりを大切に」というコミュニケーション戦略のもと、プッシュ・プル型のメール施策に取り組んできたオイシックス。理想に近づくために、膨大なメールを細かいセグメントに分けて送信するという作業を社内で行っていたが、やがて工数の増加が大きな壁となってたちはだかった。

 そこで、手動によるデータ抽出と配信作業の手間を減らすために、チーターデジタルのマーケティングオートメーション(以下、MA)ツール「CCMP」を導入したのだ。

 CCMPの活用範囲は「新規獲得」と「LTV向上」の大きく二つである。

 「新規獲得」は、一度「お試しセット」を利用した見込み客に定期便を申し込んでもらうための施策。「LTV向上」は、定期便をはじめたばかりのお客様の利用率をアップするための施策と、お客様の購入回数を増加するための施策である。次項で具体的な事例を交えて紹介しよう。

新規のお客様向けに、お試しセットの内容によってフォローメールを細かく出し分け

 オイシックスは新規顧客獲得のために、「お試しセット」を訴求内容とした広告施策を展開している。「お試しセット」購入後には、定期コースへの移行を促すフォローメールを送付。その際、どの「お試しセット」を購入したかによって、内容を変更して出し分けを行うのだ。

 「セットによる内容の出し分けは、たとえば、通常バージョンであれば、商品がおいしそうに見えるように工夫をこらします。一方で、離乳食食材入りセットバージョンであれば、安全性の高さが伝わるようにしたり、パステル調の色合いにしたりしています。また、特別なセットを作ってテレビで露出していた場合は、そのセットに対応した内容を送っています。

 初めて「お試しセット」を買っていただいた瞬間に、わくわくしてもらえるようなメールを届けて、お客様のテンションを上げる仕組みを作ることを心がけています」(米島氏)

長く続けていただけるよう、大事なお知らせをLINEやSMSで実施

 定期ボックスサービスは毎週オイシックスのおすすめする商品がカートに入った状態から買い物がスタートする。その内容は期間内であれば自由に変更可能で、大半のお客様は自分好みにカスタマイズをする。しかし、様々な事情でその変更を忘れてしまうお客様がいる。

 変更し忘れによって意図していない商品が届いてしまうとお客様はストレスに感じ、解約につながってしまう。そこでオイシックスでは、注文の変更をしていないお客様に対して、LINEとSMSでリマインドの連絡をとることにしている。

 「内容の変更し忘れ通知」は、これまではメールで行っていましたが、開封率が下がってきたので、CCMPを導入してLINEで行っています。ただ、LINEは連携というハードルがあるので、SMSでも行っています」(米島氏)

 SMSはより多くの人にリーチできるが、一般的に督促や警告系の連絡が多いため、お客様に不安を与えるチャネルでもある。変更し忘れ通知を送付するターゲットについては慎重に検討して実施しているという。

 「CCMP導入後は、個々のチャネルごとの設定や、チャネル間での設定の横展開が簡単にできるので助かっています」(米島氏)

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「食べ方お知らせメール」でより充実した顧客体験を実現

 同社では、続けてもらうための仕組みづくりの一環として、特定の商品を届ける際に、どんな特色を持った商品なのか、どういうふうに食べてもらいたいか、といった内容のメールを配信している。

 「オイシックスの商品は産地や鮮度にこだわったものばかりです。とはいえ、適切な食べ方をしていただけないと、その食材の真の魅力に気づけない場合があるので、オイシックスが奨励する食べ方をメールでお知らせしています。商品や時期によって内容を変えるために、CCMPを使って細かい出し分けを実現しています」(米島氏)

全社共通フォーマットを使って、プロセスを明確化し課題を共有

 次に米島氏は、MA運用を成功させる秘訣を3つのポイントに分けて紹介した。

 1つ目は「プロセスの明確化と課題の共有」、2つ目は「オーナーシップ」、3つ目は「評価方法・指標の明確化」だという。まず、「プロセスの明確化と課題の共有」から見ていこう。

 オイシックスでは、マーケティングを担う「事業部」、数字指標を管理する「レビュー支援」、システムや仕組みを実行する「開発」、手動運用を行う「業務」といったチーム編成をしている。

 このチーム編成の狙いは、同社内で「フォワード人材」と呼ばれる「事業部」が企画立案に注力し、それを実行できるように他のチームが支援することにある。またそれぞれのチームがどの局面で支援するかという、プロセスの明確化も同時に実現している。

 「事業部とそれ以外のチームが連携する上で、『課題の共有』が大切になるので、オイシックスでは共通のフォーマットを活用しています」(米島氏)

 まず共有するのは、そのチームが抱えている「課題」だ。「課題」はたとえば、「新規顧客の継続率が上がらない。特に2週間目の注文率が上がらない」といったようなもの。次に、「現状」として課題を裏付けるデータや、「忙しかったから」などといった顧客からの声を集める。そして課題が生じる背景を「生活の中で注文方法が根付いていないため」といった「仮説」にまとめる。

 この一連の情報が統一フォーマットのもと社内で共有されていると、あらゆる施策が同じ土俵のもとで検討されるので、実施するかどうかの検討プロセスがフェアなものになる。しかも、施策とその背景にある課題がわかりやすく共有されるので、社内の連携が円滑に進むようになるのだ。

 「当社では、各チームから全社に向けて課題が共有されています。オイシックスドット大地株式会社になってからは、大地を守る会からオイシックスへの課題共有と、オイシックスから大地を守る会への共有の両方が、活発に実施されています」(米島氏)

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尖った取り組みとスピードを生み出す「オーナーシップ」

 オイシックスでは、PDCAサイクルの一連の流れを個人が担当し、施策の結果が出るまで主体性をもって取り組むことが奨励されている。

 「『ここまでやったから後は次の人がお願い』では施策全体がぼやけたものになってしまいます。同様に、施策の起案から実行までのプロセスもシンプルで、個人が発案して上長の承認が得られれば、即実行する体制です。

 一般的な企業では、個人が起案して、関係者の意見を取り入れて調整してから上司に提案する体制が多いですが、施策の方向性が、様々な意見の平均をとったような無難なものになってしまったり、施策がうまくいかない理由を探されて、守りに走ってしまったりします。

 オイシックスには、個人が「課題に対峙するために、こういうメッセージの施策を絶対にやりたい」と訴えた場合は、上司の承認が出れば先ほどのフォーマットをもとに各現場が支援する文化があります。この環境によって、個々の主体性が上がっていくことを期待しています」(米島氏)

施策の評価方法と指標を明確化

 さらに、施策の評価方法や指標設定をあらかじめ明確にしておくことも欠かせない。たとえば、施策のスケジュールや、初動何日目にどの数字を確認するか」といったレビューのタイミング、施策がうまくいったら次にどんな施策を実施するのか、施策が失敗した場合は中止するのか他の施策を実施するのか、もしくは顧客理解を深めて施策の方向性を変更するのか、などといったことを先に決めておくのだ。

 「先ほどご紹介した、LINEで変更し忘れ通知をする施策を例にご説明しましょう。LTVを最大化するためには、解約率がKPIになります。さらに、解約率のKPIには、変更し忘れ率があると考えます。その上で、変更し忘れ通知の初回開封率を高めれば、変更し忘れ率が下がり、解約率が減りLTV向上につながるのではないか、と仮説を考えるのです」(米島氏)

 次に、施策の初動段階における開封率の成功ラインを、現状の開封率をもとに決めておく。それ以下であればLINEでのコミュニケーションはそこまでにしておき、別の施策を検討実施することにしておく。

 「実際には、LINEでのコミュニケーションによって解約率が減りました。LINE連携率が上がるほど通知開封率が向上したので、「LINE連携率」を評価対象として掲げる次の実行部隊が動き出しました」(米島氏)

 ここまで紹介してきたように、「プロセスの明確化と課題の共有」、「オーナーシップ」、「評価方法と指標の明確化」これら3つの指針こそが、オイシックスにおけるMA運用の成功を支えている。

 そして、3つの指針が徹底しているからこそ、「長く続けていただける『仕組み』づくり」という理念のもとに「お客様一人ひとりを大切に」というコミュニケーション思想を実現するために、MAをフル活用できているのだと米島氏は語る。

 最後に米島氏は今後の展望として、「お客様とより親密な時間を過ごすために、お客様が思っていることに対して、よりタイムリーなコミュニケーションをしていけるような機能を追加していきたいと考えています」と語り、講演を締めくくった。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター 出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/10/17 12:00 https://markezine.jp/article/detail/27004