成長速度は「いい仮説を立てられるか」にかかっている
――定量分析と定性分析を繰り返す、ということがポイントですね。では、中古車を売りたい人向けの施策をうかがえますか?
保坂:売りたい人は、買いたい人よりもさらに目的意識が明確なので成約率が高い傾向です。売りたい車がある訪問者に対しては100%CVにつなげたいという姿勢で臨んでいます。こちらもトップ、メーカー、車種の3ページでそれぞれ問い合わせフォームへ誘導していますが、CVRを高めるために、「どこのページの」「どのタイミングで」問い合わせへの誘導をかけるべきかが課題でした。
いったん、ポップアップを含めた誘導のタイミングや訴求の場所などを変えたところ該当ページのCVRは向上したものの、ユーザグラムで確認したら、仮説を裏切るまったく違う解釈が生まれたことも少なくありません。
たとえば、申し込みフォームを強調したほうがCVは伸びると考えて、人気がある「中古車売却についてのお役立ち情報」のトップで申し込みフォームをまず見せていたところ、ユーザーがフォームに遷移してから迷った末に離脱しているのが行動観察からわかったんです。
たしかに、申し込みフォームを強調することでCVは増えていたものの、他のページから迷い込んできた人がフォームを見つけてCVしていたに過ぎず、もともとお役立ち情報のページを見たくて来訪した人のCVに貢献したとはいえない実態が明らかになり、申し込みフォームの過剰な露出は総合的にマイナスだと判断しました。このことには定量だけで見ていたら気づけなかったですね。
ユーザグラムを使う中で、意識するようになったのは、「相関か因果かを見極める」ことなんです。
仮にA案のデザインで相談CVが伸びても、そこにいたるまでの回遊をみてユーザーインサイトを得ないと、本当にA案のデザインによってCVが増えているのか、それとも見かけ上相関関係があるだけなのか、実態がわからない。
特に当社は多くのCVポイントがあるので、量的に「相関がある」と思って改善したら、部分最適に陥ってしまい全体としては逆効果ということも起こりえます。
――なるほど。ポイントを定量的に見て改善した結果、顧客体験を損なってしまう懸念があるのですね。
保坂:そうです。なので、当社が目指すCV最大化には、定量分析だけではなく、デジタル行動分析による定性分析を組み合わせてチューニングしていく必要があるのだと改めて思いました。やはりサイト改善は、定量データと定性データを両方見ることで最大限発揮できると感じています。
ユーザグラムを使って得た仮説が、定量的にも裏付けられたとしても、それは暫定的な正解でしかない。定量分析と定性分析で検証した仮説を実行して、さらなる高みに向かうべきです。ただし、はじめにいい仮説を立てられるとスタートラインから有利になるのは間違いない。仮説の打率を上げるためには、デジタル行動観察で定性的にユーザーを理解することが不可欠だと実感しています。
ベンチマークの「ROI 500%」は余裕だった
――御社は利益最大化という目標が明確だというお話がありましたが、その点でユーザグラム導入に対する社内の評価はいかがですか。
保坂:導入して約半年、3カ月ほどはテストをしていたので実質3カ月ほどですが、現状でユーザグラム導入によって1,500万円程度の利益が上がっています。当社ではツール導入時にそれぞれ目標ROIがあり、私が所属するオウンドメディアのチームでは「ROI 500%」がひとつの目安なのですが、これは十分超えられました。ユーザーの理解を深めたことで、これだけCV向上の余地があったのだと、驚いています。
――ご自身や、社内で起こった変化があれば教えてください。
保坂:私自身、まだまだ問い合わせや成約を増やせるのではと意識が変わりました。また、これまで当社はCVの「量」を追ってきましたが、結果を社内に共有することで、もっと「質」にも注目すべきだという意識が生まれています。
問い合わせの質によって、それ以降のKPIも変わるので、サイト外のコンタクトセンターや店舗につなげたら終わりではなく、もっとWebの時点で質を高めようと考え始めています。
――最後に、ユーザグラムをさらにどう活用していきたいか、展望などをお聞かせください。
保坂:先ほどお話しした“定量分析と定性分析の繰り返し”を、現在はマイナスを回復する守りの部分と、「今週はこのCVRを上げてみよう」という攻めの部分の両方で走らせています。
今後の展望としては、ユーザー行動を踏まえたコンテンツ改善をさらに進めるとともに、デジタル行動観察のリマーケティングへの応用を考えています。また、サイト外のコンタクトセンターや店舗などにサイト内のユーザー行動を共有することで、商談や成約を高められるかも探ってみたいですね。
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ウェブサイトに訪れる一人ひとりのユーザー行動を追うことで、ユーザーが離脱していたり、つまづいているポイントを把握できるので、成果が上がるUX改善の施策につながります。