博報堂DYデジタルは、博報堂DYメディアパートナーズ内のデジタルメディア部門と、インターネット広告の企画から制作を手がけていたグループ会社を戦略的に統合して設立された。企業の課題が複雑化し、デジタル領域のニーズが高まる中、よりスピード感を持って企画からメディア、マーケティング、クリエイティブまでを一気通貫で行う必要性が高まってきている。同社は博報堂DYグループのデジタル中核会社として、デジタルを起点に最適なマーケティングを推進している。なお、博報堂DYメディアパートナーズは、「LINE Ads Platform」の販売・開発のパートナーとしてブロンズパートナーに認定された。同時に、グループ会社のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムはData Provider Partnerに認定されている。
デジタルを起点に企画から一気通貫で
MZ:御社ではLAPを中心としたLINEソリューションの取り扱いについて、具体的にどういった業務を担当されているのでしょうか。
平岡:私が統括するソリューションプラニング本部は、LINEをはじめとしたメディア・プラットフォーマー各社と連携しながら広告主に提供できるソリューションを開発しています。いわば、“武器作り”を担っています。最近では特にデータの活用が重要になっているので、ただ量を集めるだけでなく、各社が持つデータとの有効な組み合わせを考えながら取り組んでいます。
廣田:私のほうでは、ソリューションプラニング本部内で広告運用を含めたメディアプラニングを統括しています。LAPに関してもグループ会社のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(以下、DAC)と共同で運用体制を整えています。
一人1台のスマホにプッシュ通知できる意義
MZ:LAPを含めたLINEのソリューションは、御社においてどういう位置づけでしょうか?
平岡:LINEはやはり生活者とコミュニケーションを取る上で欠かせない場です。タイムラインのMAU6,500万人以上という数字からも、そこでの広告がとても重要であることがわかります。
ただし、単なる広告メニューではなく、LINE全体をプラットフォームと捉えて考える必要があります。LAPや公式アカウントなどを含めてどう組み合わせるかが、マス広告だけで伝わらない層に対して大きな意味を持ってくるでしょう。そうしたことも背景に、現在LINEと共同で広告効果測定を精緻化するプロジェクトを行っています。
MZ:そうなんですね。今、数的な規模の話も挙がりましたが、LINEの強みはどういった点だとお考えですか?
平岡:ひとつは、公式アカウントの存在です。これまで企業が直接ユーザーとつながるには、自社の会員組織やサイトに呼ぶ必要がありましたが、公式アカウントは新たなチャネルとしてのオウンドメディアになり得ます。また、プッシュ型のコミュニケーションができる点は大きいです。
もうひとつは、やはり圧倒的なリーチですね。これまでネット広告ではECなどでのコンバージョンが追求されてきましたが、今はどれだけ視認され、態度変容したかも注目されはじめています。それがどう購買に結びつくかの検証をするにもリーチの規模が必要なので、そうした観点で、ほぼ一人1台持っているスマートフォンにしっかり情報を届けられるのは大きな強みだと捉えています。
ブランドセーフティーの議論から視認性に注目
MZ:ネット広告でも“どれだけ見られたか”が重視されはじめているのですね。
平岡:そうですね。ブランドセーフティーの観点からアドフラウドが問題になる中で、CPCやCVR重視といえども広告本来の役割である“広く告げる”効果もあるはずだという仮説の下に我々も動いてきました。同時に、その効果を可視化する必要があるだろう、という考えで展開しているのが先ほどの共同プロジェクトです。
実際、ネット広告でリーチを獲得したいという広告主のニーズも高まっているので、LAPでもリーチ最大化を図る広告メニューである「リーチ&フリークエンシー」を積極的にご提案しています。特にネット広告の表現もリッチ化しているので、広く告げる効果を明らかにして、ネット広告を再価値化していきたいという思いがあります。
廣田:もちろんコンバージョン重視の販促的な活用は、これからもネット広告が寄与すると思います。LAPがそれに有効なのも理解しています。視認性を重視したブランド広告も含めて、LINEはユーザーがごく日常的に触れる場だけに、広告が違和感なく適切に出てくることが大事です。その点で、LINEでリーチを最大化する「リーチ&フリークエンシー」は、ユーザーに受け入れられる広告のあり方をずっと模索してきた総合広告会社として適切に扱える自負がありますし、注力している部分です。
データを活用しネット広告の認知効果を立証
MZ:LAPも当初はタイムラインと「LINE NEWS」への配信でしたが、今は「LINEマンガ」に「LINE BLOG」での配信もスタートし、出稿先が広がっています。ただ、場所が広がっても先ほどお話しされた“見られる効果”を可視化するのは簡単ではないと思うのですが、どう取り組まれるのでしょうか。
平岡:確かに簡単ではないですね。仮に購買の場がオフラインでも、会員証やアプリの提示などでオンラインに紐付けている企業も増えているので、そこから広告の接触回数と購買リフトの関係も推測できますし、新規と既存客の比較なども可能になります。特にLINE ビジネスコネクトを導入する企業なら、そこで得られるデータの整備と活用も我々では進めているので、検証にもより広がりが生まれます。
廣田:数年前、アトリビューションの考え方が提唱されたころも、広告の視認効果が探られましたが、誰も立証しきれませんでした。今がおそらく、広告本来が持つ認知効果をネットで立証するチャンスじゃないかと思っています。広告主からのニーズを踏まえても、この流れは大きなうねりになるはずです。データにはブレもありますし、難しさも理解していますが、挑戦すべきところだと思っています。
DACと連携し精緻なセグメント配信を可能に
MZ:データ関連ですと、DACとはどう連携していくのですか?
平岡:博報堂DYグループでは「生活者発想」の下、独自のDMPである「生活者DMP(データ・マネジメントプラットフォーム)」を構築しています。これを下支えするのがDACのDMP「AudienceOne(R)」で、AudienceOne(R)が扱うデータのほか、購買データや行動データなど様々なデータを投入して、ユーザー分析と広告配信に活用しています。一般的には、細かくターゲティングしても実際の広告配信はエリアや年代という大きな括りになりがちですが、生活者DMPでは様々なデータでクラスタを作りそのクラスタで、狙ったセグメントにそのまま配信できるメリットがあります。
各媒体社とも連携していますが、当然LINEとの取り組みも生活者DMPをベースにしていくので、生活者DMPを使うほどデータソースが厚くなり、コミュニケーションの精度が高まっていくと考えています。
MZ:グループでの取り組みが奏功した事例などは?
廣田:テレビCMとLAPによるブランドリフトの重複効果を、前述のLAPの「リーチ&フリークエンシー」の広告配信にて検証しました。すると、重複効果も、LAP単体での効果も確認することができました。現状では複数のブランド広告主に定常的にリーチ&フリークエンシーを活用いただいています。
生活者発想をベースにLINEという場を活かす
MZ:マス広告の知見も深い御社から見た、広告主の変化をうかがえますか?
平岡:テレビCMはやはり圧倒的なリーチがあるので、CMを出稿しているようなブランド広告主の場合、昔はWebでのリーチにはほとんど目を向けられていませんでした。それが、LINEといったマスメディアに匹敵する圧倒的なリーチを誇るプラットフォームでネット広告が充実してきたこと。また、前述の重複効果の検証なども進み、いわゆる“広く告げる”目的にも十分ネット広告が機能すると意識が変化してきています。
同時に、テレビでは接触できない層へのリーチに期待が増しています。ネットでの話題化や再編集を意識したクリエイティブも、当然になりつつありますね。コンバージョン重視で発展してきたネット広告が、ここへきて改めて認知や態度変容という本来の広告の意義も担えるようになり、広告主の考えがそちらにも広がってきていると感じています。
MZ:最後に、LAPの活用を含めて今後の展望をお聞かせください。
廣田:これまで以上にLINEと密に連携し、広告主の課題解決のための提案から施策の実行までに注力していきます。また、グループ会社のDACは、LAPの販売・開発のパートナーを認定する「Marketing Partner Program」の「LINE Ads Platform Award」において、Data Provider Partnerに認定されました。データ分析および広告配信がよりステップアップしたフェーズに入ってくると思うので、DACの知見やソリューションを含めた、グループとしての戦略立案をベースにしていきたいと考えています。
平岡:博報堂DYグループでは、すべての活動において生活者発想を標榜し、大切にしています。生活者を深く知り、そのインサイトを捉えた優良なコンテンツを作り、コミュニケーションを図ることが課題です。その中でLINEと連携できたことは、生活者発想をベースに広告主を支援していく場をいただいたことだと、喜ばしく思っています。今後はデータの扱いを中心に、さらに協力していければと思います。