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アドテック東京 2017

人が育つ仕組みがあればブランドは継続する 和田浩子氏が語る人材育成の真髄

 東京国際フォーラムの最も大きな会場の最前列に、現P&Gや同社出身の希代のマーケターたちがずらりと並んで、この講演はスタートした。日本人で初の米P&Gヴァイス・プレジデントに就任した和田浩子氏が、アドテック関西に続いてアドテック東京2017に登壇。今回の講演「サステイナブルなブランドを育み、ブランドを育む人を育てるために」では、P&Gで幾多の人材を育ててきた和田氏から、ブランドマネジメントと人材育成の確固たる仕組みと、そこで大切にしていることが語られた。

ブランドマネジメントと人材育成は表裏一体

Office Wada 代表 和田浩子氏。1977年にP&Gサンホーム社(現P&Gファー・イースト社)に入社。「ウイスパー」「パンテーン」「パンパース」などを手がけ、1995年にP&Gジャパンの紙製品事業部担当のジェネラルマネージャーに。1998年、日本人で初めて米プロクター・アンド・ギャンブル社のヴァイス・プレジデント、コーポレートニューベンチャー・アジア担当に就任。その後、ダイソン日本支社の代表取締役社長などを経て2005年にOffece Wadaを設立、コンサルタントとして活動。

 和田氏は最初に、マザーグースの詩「this is the house that jack built」を紹介した。ブランドを維持し育てること、それができる人材の育成という講演のオファーを事務局から受けたときに、この詩がパッと浮かんだという。

 “これはジャックが建てた家、これはジャックが建てた家の中にある麦芽、これは麦芽を食べたラット…”とフレーズが積み重なり、話がどんどん展開していくが、最後まで“ジャックが建てた家”の存在は揺るがない。「ジャックがいなければハウスは建たない。私にとってハウスはブランドで、それを建てるジャックはつまりブランドを育てる人です。ジャックがいなければブランドは建たない。ブランドができたら、可能な限り長く続くほうがいいと考えているので、この詩がすごく好きなんです」と和田氏は語る。

 1837年に創業したP&Gが150周年を迎えた1987年、その黎明期から作り続けている石けん「Ivory」を冠して、米『Advertising Age』誌が「The house that Ivory build」と題してその功績を特集した。さらに30年が経つ間、社会では想像もつかない変化が起こり私たちの生活も大きく変わったが、創業180周年となる同社の勢いはいまだ衰えることがない。

 一体どのような仕組みが、同社に持続的な成功をもたらしているのだろうか? 和田氏はそれに「ブランドマネジメントと人材育成」と答える。ブランドマネジメントは1920-30年代にP&Gが開発した経営手法だが、あくまで手法なので、これを実行できる人を育てることが、いつの時代でもとても重要だという。

 「30年間まったく同じことをしてきたわけではありません。そのときどきで会社が直面する問題に対してブランドマネジメントができる、そういう人材を途切れなく育ててきたから、P&Gは危機に陥っても粛々とリカバーしてここまで進んでこられました」(和田氏)

ブランドマネジメントの仕組みとは?

 マーケティングには様々な定義があるが、和田氏は自身が好きな定義として「エンドユーザーのビヘイビアを変える」ことを挙げる。その段階を追うと、まず、知らなかったことを知り、好きになる。次に、使わなかったものを使いたくなる。そして、買わなかったものを買う/買い続ける、という変化だ。マーケターにとっては、自分が扱う商品の利点は周知の事実だから、ときにその商品をまだ知らない消費者が逐一こうした変化をたどっていることを忘れがちだが「そこは自覚をもってほしい」と和田氏は語る。

 「アドテック関西での講演で、『知る・買う・使う』の順番ではないのかと質問を受けましたが、それは違います。車や家などの耐久財でも試乗会やオープンハウスで、使用感を体験してたしかめてから買いますし、日用雑貨でもサンプルで小さな体験をしてもらって『これなら使いたい』と納得してもらうことは継続利用につながりますマーケターは自分たちの働きかけによって、お客様にこのような態度の変換が起きているかを見ることがとても大切です」(和田氏)

 それを踏まえて、ではブランドマネジメントとはどのような仕組みなのだろうか? それは、ブランドマネージャーがすべての分野の戦略立案を担い、ブランドの売上と利益の責任を負うこと。同時に、R&Dや市場調査、広告制作、営業などの関連部門がブランドを取り囲んで支える、マルチファンクショナルチームが構築されていること。広告代理店も、外部パートナーとしてこの図に含まれる。

 これを構築するのは「一種の改革」だと和田氏。たとえば販売の部分では営業の“売っている”という意識が強いため、形だけを整えてもうまくいかない。組織構造とともに、意識も変える必要があるのだ。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/26 07:00 https://markezine.jp/article/detail/27659

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