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アドテック東京 2017

花王、サンリオ、博報堂ケトルが考える「顧客中心主義」のあり方とは?

 企業起点で機能やスペックを訴求するコミュニケーションが効かなくなったといわれて久しい。顧客の視点を中心に据えた取り組みを各社が模索するも、一方でデジタルマーケティングが加速するほどKPIの数値を追求してしまい、「それは本当にブランドコミュニケーションとして役に立っているのか?」と問うべき事態も見受けられる。10月17、18日に東京国際フォーラムで開催された「アドテック東京2017」にて、オイシックスドット大地の西井敏恭氏がモデレーターを務めたセッションでは、コミュニケーションが顧客起点になっている今、豊かなブランド体験をどうしたらつくり出せるかを登壇者の実践を交えて議論した。

顧客中心主義とは“コントロール”ではなく“インスパイア”

 デジタルでどこまでも顧客を追えるだけに、我々は時に“人間”を相手にしていることを忘れてはいないか。今年のアドテック東京からは、そんな問いかけが感じられた。本稿で取り上げる「顧客中心主義とブランドの体験化」も、一人の人としての顧客に向き合おうとする企業のあり方を考えたセッションだ。

 バナーのクリックにはじまりSNSのRTやシェア、動画再生回数など、アドテクまわりの話はどれも数値化しやすい。それらをKPIに、各社が様々なプロモーションを仕掛け、数値の達成を目指しているが、測定しやすい数値ほど、一人ひとりの生活者のごくわずかなポイントを見ているだけに過ぎない。すると、そうした数値を追うことだけで、ブランドコミュニケーションを実践した気になっているのでは、という課題も浮上している。オイシックスドット大地の西井敏恭氏は、「ネットの世界になって、生活者の発信力が増し、企業ではなくユーザーがコミュニケーションの発信元かつ中心だといわれるようになった。一方で、顧客の目線でといいながら、企業が数値ばかり追ってしまう状況もある。この環境下での“顧客中心主義”をどう実現すべきか、考えてみたい」と切り出す。 

 最初のテーマ「顧客中心主義とは何か」という問いに、博報堂ケトル 共同CEOであり博報堂アジア・パシフィックのクリエイティブも統括する木村健太郎氏は、同グループの企業哲学である「生活者発想」をベースに「最近、別の意味も出てきたような気がしている」と語る。

生活者発想:人を、単に「消費者」として捉えるのではなく、多様化した社会の中で主体性を持って生きる「生活者」として全方位的に捉え、深く洞察することから新しい価値を創造していこうという考え方。(博報堂HPより)
博報堂ケトル 代表取締役共同CEO エグゼクティブクリエイティブディレクター/
博報堂 APAC共同チーフクリエイティブオフィサー 木村健太郎氏

 「博報堂は元々、顧客を経済的な存在ではなく、学んだり食べたり仕事をしたり愛したり遊んだりする、生身の生活者として捉えてきた。それに加えてこの10年でコミュニケーション環境ががらっと変わり、企業からの働きかけによって購買をコントロールすることが難しくなった。そして情報選択や購買の主導権を完全に握った生活者をインスパイアして行動を起こしてもらうことが重要になった。現在の顧客中心主義は、自発的にアクションしてもらうための仕掛けづくりともいえる」(木村氏)

投影資料を参考に、編集部で作成

集客ではなく、寄り添って追い続ける“追客” 

 こうしたスタンスは、グローバルだとピンとこないようで、送り手がユーザーと同じ目線に立ってともに取り組むような姿勢は「新しい、東洋的だ」といわれるという。「神様が絶対的な存在のキリスト教の影響かもしれないが、時代の感覚的に、極めて西洋的なマスマーケティングの終焉にも符合すると思う」と木村氏。”ヒューマンセントリック”や”ピープルセンター”という言葉も昨今よく耳にするが、「このコンセプトは、今後日本企業がグローバルに出ていく時のカギになる」と西井氏は指摘する。

 サンリオの田口歩氏は、木村氏の話に同意しながら「これまで企業は“顧客の立場で”などといいながら、企業視点が抜け切れていなかった。企業が情報発信のイニシアチブを取れなくなり、顧客が好きな用にブランドと接触して情報を得たり購買したりするようになると、顧客の支持を得るためにはより良い顧客体験を生み出す努力をするしかない。それが私の考える顧客中心主義であり、企業に求められる姿勢だと思う」と語る。

サンリオ メディア部 ジェネラルマネージャー 田口 歩氏

 その上で提示するのは「集客から追客へ」という発想だ。田口氏は、顧客を中心に、サンリオのイベントや店舗、メディア、商品、テーマパークなど多岐にわたる接点が顧客を取り巻いている”円”の図を提示する。企業側は今、これらのどの接点で顧客がブランドに接するかをコントロールできない。だから、もはやどこかのチャネルに顧客接点を集めるという考えは時代にそぐわない。自分のタイミングで自由にブランドに接触してくる顧客にひたすら寄り添い、長期的な関係を築いていく中でLTVを高めていくアプローチが重要なのだ。

 「特にサンリオは、三世代にわたって接触する顧客も少なくない。その目線やブランドとの距離が変化することも含めて長く付き合い、絆を作る“エンゲージメントファースト”をずっと掲げている」(田口氏)

サンリオ・田口氏が考える顧客中心主義のポイント

●コミュニケーションの主体者は企業ではなく顧客
●マーケティング戦略は「集客」から「追客」へ
●ユーザーは自由に多様な顧客接点を渡り歩き、ブランドとの接触を繰り返す
●企業は顧客との約束を守り、顧客の期待を裏切らない誠実なサービスを提供
●企業はユーザーを中心として、一貫した包括的なブランド体験を構築する
●マーケティング目標は、顧客生涯価値(LTV)の最大化

 一方、花王の鈴木愛子氏は「当社では、顧客を最も知る企業になるというビジョンを掲げている」と話す。個別の商品ではなく、顧客の生活に包括的に支えよう、関与しようとすると、当然「生活者」という概念が入ってくる。「そのとき、そもそも“わからない”存在だと認識することが大事ではないか」と鈴木氏。 

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/06 09:00 https://markezine.jp/article/detail/27503

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