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「ななつ星 in 九州」を生み出した、JR九州の「本気」とは

2018/02/15 07:00

 話題の書籍のダイジェスト版を紹介する連載「Book Navigator」。今回は『新鉄客商売 本気になって何が悪い』(唐池恒二 著、PHP研究所、2017年9月)を取り上げます。

※本記事は、2018年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』25号に掲載したものです。

逆境だらけのスタートから東証一部上場へ

 2016年10月に東証一部上場を果たした「JR九州」。国鉄の分割民営化により誕生したJRグループでは、JR東日本、JR西日本、JR東海に続く4社目の上場となった。

 地域を支えるインフラである鉄道会社の経営は当然安定しているもの、といった印象をもつ人がいるかもしれない。しかしそれは、東名阪といった巨大な人口を抱える都市圏が営業エリアに含まれる会社に限られるだろう。JR九州はそこには含まれない。

 そもそも九州全域の人口が、本州のJR各社の営業エリアに比べて少ない。しかも減少傾向にある。さらに九州では、鉄道のライバルとなる高速道路をはじめとする輸送サービスが発達している、自然災害が多発、といったマイナス要素が満載だった。収支は国鉄時代から大赤字。民営化当初は、上場どころか経営が続けられるかどうかが危ぶまれていたという。

『新鉄客商売 本気になって何が悪い』唐池 恒二 著、PHP研究所、2017 年9月
『新鉄客商売 本気になって何が悪い』
唐池 恒二 著、PHP研究所、2017 年9月

 本書『新鉄客商売 本気になって何が悪い』は、そんな逆境だらけのスタートをきったJR九州の改革をリードした著者の奮闘ぶりを、自ら綴った一冊だ。

 著者の唐池恒二氏は現在、九州旅客鉄道(JR九州)代表取締役会長。大学卒業後に国鉄に入社し、その後40年にわたりJR九州の発展に貢献してきた。担当した主な事業には博多~韓国・釜山を結ぶ高速船「ビートル」の就航、JRフードサービス(外食産業)の立ち上げ、九州新幹線の全線開業がある。2013年に運行開始した「ななつ星 in九州」は企画立案から陣頭指揮を執った。

 著者によると、JR九州が上場を成し遂げた要因は2点ある。

 一つ目は逆境と屈辱をバネに這い上がろうとする強い精神力が、すべての社員にあったこと。逆境とは、先にも触れたJR九州が置かれた状況だ。では、屈辱とは何だったのか。

 分割民営化してJRが誕生したとき、「三島(さんとう)」という言葉が生まれた。北海道・四国・九州という本州以外の三つの「島」を指す。それらのエリアの三社が一括りにされて「JR三島会社」と呼ばれるようになったのだ。

 著者はたびたびこの言葉が、業績好調のJR東日本・JR西日本・JR東海の「JR本州三社」に比べて「三島の経営陣や社員は、ねえ……」といった蔑んだニュアンスで使われるのを耳にし、強い屈辱を感じたそうだ。そして、それは他の社員も同じだった。

 もう一つの成功要因は、「鉄道事業の改革」と「新規事業への挑戦」という二つの経営戦略を“本気”で実行したことだ。

 まず鉄道事業について。国鉄時代、九州では、なんと国鉄社員の通勤に都合がいいようにダイヤが組まれていたという。それを、人口や需要に即したものに変更した。

 また、国鉄時代の九州にあった車両は、本州の中古ばかりだった。そこで思い切って車両を刷新。その際に、デザイン性の高い車両を企画、運行させた。これは日本で最も早い取り組みであり、その後九州以外の各地でもデザイン列車が流行する。

 他にも、割引きっぷの拡大といった私鉄が先行していた施策を手あたり次第導入した。「自分たち本位」から、いかにして顧客に喜ばれるサービスを提供するかに舵を切り、本気で実行したのだ。

 改革が功を奏し、鉄道事業の業績が改善。すると外食、駅ビルといった新規事業も伸長していった。鉄道事業とのシナジー効果だった。

 つまり、「逆境と屈辱を原動力にした“本気”」と「客本位のサービス」のアイデアがしっかり結びついたからこそ、JR九州は誰もが驚く成長を成し遂げられたのだ。

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