急成長中のBtoB事業を手掛けるマーケター2人
――はじめに、お二人の自己紹介をお願いします。
小川:株式会社リンクの小川です。弊社はホスティング事業・セキュリティプラットフォーム事業・クラウド型テレフォニー事業という、3つのBtoB事業を行っています。
その中で私はホスティング事業とクラウド型テレフォニー事業のマーケティングを担当しています。本日は、「リンク ベアメタルクラウド」と呼ばれるクラウドサービスのマーケティングについてお話しします。
吉田:株式会社ギブリーの吉田です。ギブリーは創業9年目のベンチャー企業です。主に2つのドメインで事業を展開しており、ITエンジニアに特化したHR Tech領域のサービスと、デジタルマーケティング領域のサービスを展開しています。本日は、弊社が力を入れているHR Tech領域のサービスである、エンジニアのスキルチェックツール「track(旧:codecheck)」のマーケティングについてお話しします。
――お二人ともBtoB領域のマーケターなのですね。では、小川さんが担当するホスティング事業のサービスの概要と具体的なマーケティング施策について、教えてください。
小川:私がマーケティングを担当している「リンク ベアメタルクラウド」は物理サーバをベースとしたクラウドサービスです。競合は、AWSやAzure、GCPといった大手の外資企業をはじめ、国内でもGMOやさくらインターネット、IDCフロンティアなど大手のIaas事業者になります。
誰もが知っている企業や上場企業がいる中で、当社のサービスの認知を得ることは難しく、苦戦している状況です。そうした課題を解消するために、我々が取り組んでいる施策として、コンテンツマーケティングでリーチを増やしながら、リスティング広告で刈り取るといった施策を行っています。
また、その他にリード獲得のための手段として展示会にも出展していますが、IT系の展示会ではなく「東京ゲームショウ」に出展をしています。理由は「リンク ベアメタルクラウド」はパフォーマンスの高さが特特長であり、その特長に最もマッチするのがゲーム開発事業者だからです。よりセグメントされた「東京ゲームショウ」に出展することで、効率良くリードを獲得できることから、業種をターゲットとした一点突破の戦略を取っています。
競合すらいないブルーオーシャンを開拓するための戦略
――続いて吉田さんにうかがいます。ギブリーの「track」に関するマーケティング施策の大枠を教えてください。
吉田:まず「track」は、主にエンジニアの採用時に活用するツールです。エンジニアは専門職なので、能力の見極めなどが難しいんですよね。そのため人事部だけでは対応できず、能力を見極めるために、現場エンジニアはもちろん、エンジニアのマネージャークラスもスクリーニングの対応をすることが多々あります。
そのため、貴重なエンジニアリソースを本来の開発業務に集中させられないことや、採用コストが肥大化してしまうという悩みを抱えている企業が多いのです。「track」では、エンジニアのスキルを可視化して、採用時のスクリーニング工程を改善することで、こうした課題を解決することができます。
次にマーケティングの大枠ですが、そもそもエンジニアのスキルチェックサービス自体、大きな競合がいないブルーオーシャンです。“エンジニアのスキルを可視化する”という概念そのものが新しいものであるため、市場を創造する必要があります。
そこで、我々は市場形成とリードの獲得という二つの目的を掲げ、コンテンツマーケティング・メルマガ・Facebook広告の最適化に集中しています。また自社イベントを開催し、導入企業様にツールの特長や活用の仕方などを紹介してもらい、リード獲得とともに認知啓蒙も行っています。
失敗して気づいた、リードを育てる重要性
――お二人とも専門領域に特化したサービスのマーケティングを担当されているんですね。また認知を広げながらリードを獲得しなければならないという共通点がありますが、これに対して、具体的にどのような施策を展開されているのでしょうか?
吉田:「track」は、製品の性質上、主に大規模な新卒採用を行うような企業様がご利用いただくと、より効果を感じていただけるプロダクトです。ですがそのような企業の数は限られており、リードの母数は決して多くありません。そのため一つひとつのリードを大切にし、ナーチャリングすることがとても重要です。
実は、その重要性を改めて強く意識したのは、アウトバウンドのテレアポやLPだけを利用した広告出稿でリードをうまく獲得できなかった経験があるからなんです。そこからマーケティングプランを練り直し、ナーチャリングできるMAを導入したインバウンド体制へとシフトしました。
小川:弊社の「リンク ベアメタルクラウド」においても、リードのナーチャリングが課題でした。インフラ系のサービスは、乗り換えを促すことが難しく、導入までの検討期間が長くなる傾向があります。そのため、最適なタイミングで提案できなければ、リードを消失してしまうリスクがあるんです。そうしたリスクをできるだけ減らすために、行動履歴を把握し、ユーザーへの最適なアプローチを実現できるMAの活用を進めました。
リードの獲得数は14倍に! シンプルなMA活用で成果を上げる
――MAにはメール配信などのオートメーション機能やスコアリング機能など、様々な機能があります。マーケターそれぞれで使い方も大きく異なると思うのですが、どのような使い方をされていますか?
吉田:私は、シンプルに使っています。メルマガとステップメールでナーチャリングし、コンバージョンポイントとなるページの閲覧があったら、社内のコール担当へ通知メールを送るという使い方です。
併せてリードの行動履歴を基に、ホットなリードであると判断するためのファネルを3段階に分けて、次のアクションを設定しています。たとえば、最もホット度の高い段階に該当するページの閲覧があった場合は、自動で営業へ通知します。それ以外は、サイト回遊度やメルマガの開封率などを参考に、マーケティング部署で総合的に分析をしてから営業につないでいます。
――成果はいかがでしょうか?
吉田:MA導入後3ヶ月時点で、リードの数は、導入初月に比べて14倍に増加しました。8ヵ月後には、ROASも安定して達成できるようになり、売り上げの半分がインバウンドのリードからという状況です。
小川:弊社は、MAの活用を前提にサービスサイトをリニューアルしました。どのページにコンテンツ更新のお知らせや資料のダウンロードを促すポップアップを入れ込むかなどを緻密に考え、MAを中心とした導線設計にしています。
MAを導入して1年経ちましたが、お問い合わせの数は2倍に増え、サイトアクセスのUU数も4倍以上と、綺麗な右肩上がりを描けています。
匿名見込み客向けのマーケに注力する目的で2人が選んだMAは?
――お二人ともMAを基点にマーケティング施策を展開し、結果へつなげているのですね。導入や運用のポイントはありますか?
小川:自社のサービスや課題に合ったMAツールを選ぶことですね。たとえば、弊社のクラウド型のテレフォニー事業「BIZTEL」は、市場ではマーケットリーダーのポジションにいますので、自然流入で入ってくるCVがほとんどです。よって、個人情報を特定できている状態のリードを案件化させることに特化したMAを導入しています。
一方の「リンク ベアメタルクラウド」は、そもそも獲得するリードの数が少ないという状況でした。これを解決するMAとして、個人情報を取得していないリードへ対してもアプローチできる匿名見込み客の獲得に強い「SATORI」を選びました。ビジネスの目的や課題とMAの特徴を照らし合わせることが大切なのです。
吉田:MAには便利な機能が多いものの、設定が複雑で運用に慣れるまでに時間がかかるケースもあります。ベンチャー企業はスピードを重視しますし、マーケティングにかけられる人的リソースも限られているため、導入・運用コストに関しては非常にシビアです。
そのため運用開始までの期間が短く、シンプルな活用で効果を発揮しそうな「SATORI」を選びました。小川さんがおっしゃるように、事業の課題感に合わせた選定を行いました。
――MAの活用には、他部署とのリレーションが重要です。どのように協力体制を作りましたか?
吉田:導入当初の営業部門も「それって本当に確度の高いリードなの?」と半信半疑でした。電話のタイミングを間違えてしまうと、貴重なリードを失ってしまうので無理もありませんよね。現在はMAで抽出を行い受注に至ったリードの行動履歴を分析し、判断のベースとなるファネルの最適化などを重ねることで、営業からの信頼を得ています。
また、営業への通知メール内容も工夫しています。たとえば、タイトルを見ただけでリードの対応すべき優先度を判断できるようになっており、いかに営業担当がスムーズに意思決定を行い、行動へ移せるかを徹底的に意識しています。
小川:新しいツールに対し、慎重になってしまう人はいますよね。しかしリード獲得の結果が出れば、その姿勢も自然と変わります。今では営業と一緒にMAで行動履歴を見ながら、次のアクションをどうするかも話しています。
ユーザー企業同士でマーケターのコミュニティも結成
――お互いのビジネスは違いますが、解決すべき課題や対策方法には共通事項が多いですね。
小川:マーケターが抱えている課題や悩みは同じだと思うんです。吉田さんとはSATORIのユーザー会で知り合い意気投合しまして、ユーザー企業同士のコミュニティも立ち上げました。
吉田:まだスタートしたばかりのコミュニティですが、「SATORI」の使い方はもちろんのこと、MAを起点としたマーケティングの話や組織体制、オフライン施策などマーケティング全体のことを話し合える場にしていきたいと考えています。
――最後に今後の展望を教えてください。
小川:MAの導入により、リードを獲得するまでの体制が整いました。今後はさらに獲得数を増やしながらリードの質を上げるために、ホワイトペーパーなどのユーザーの状態をあぶりだすキラーコンテンツ作りに注力していきたいです。
獲得するリードの質が上がれば、受注につながる確率が上がり、さらには営業のモチベーションも上がります。そうなれば、より一層MAの重要性は高まり、営業活動も活性化するので、徹底的にMAを使い倒していきたいと思います。
吉田:実は「track」では来期、非常に成長チャレンジングな目標を立てています。自社開催を含め、特にイベント施策の強化を検討しており、オフライン施策に力を入れた攻めのマーケティングを展開していきます。
またオフライン・オンラインのチャネルを総合的に使って、リードのナーチャリングをMAで行いたいですね。そのタイミングでMAの活用も次の段階にステップアップすると思うんです。オートメーション機能やスコアリング機能もさらに活かせると期待しています。