A/Bテストで高い効果が実証された動画広告とは
Teads Japanと5がタッグを組んで、日本の動画広告戦略と施策に新しい価値の提供を目指すソリューションは、Amazon Advertising Platform (以下、AAP)と「Teads PMP(プライベート・マーケット・プレイス)」を活用したものになっている。
オンライン向けの広告配信では、自動入札が特徴のRTB(リアルタイム・ビッディング)が主流だが、PMPは広告主とメディアが限定されるプログラマティックな広告取引市場だ。
広告経由のCVRも高いECサイトであるAmazonに送客することで、これまでにない動画広告の配信を行いオンライン上での売上最大化を図るというのが今回の両社の取り組みとなっている。
これまでの動画広告配信の戦略や施策と最も異なる点について、今村氏は次のように言い切った。
「現在、『接触・認知』から『購入』までのフルファネルを意識した広告戦略や施策が求められています。その中で、これまでの動画広告は『接触・認知』と『購入』だけで、その間に広告が貢献するべき『興味・関心・理解』と『購入検討』というプロセスへの指標の評価が重要視されていませんでした」(今村氏)
現状の動画広告では、「接触・認知」を目的としたTVCMのクリエイティブを流用するケースが多く、KPIのほとんどが視認性やユーザーの広告体験を考慮しない再生開始単価・再生完了単価となっている。
また、「購入」を促すために、CPAのみがKPIとなるリターゲティング配信を行うなどの施策はある。しかし、「興味・関心・理解」と「購入検討」のフェーズにいるユーザーへの顧客創造の施策は重要視されておらず、KPIもしっかりと定義されていない状況だった。
5の若松氏も、現状の動画広告施策における課題を挙げた。
「これまでの動画広告は、広告主のオンライン売上の大半がAmazonをはじめとした総合オンラインストアであるにも関わらず、その注文数や売上規模を上げることを目的としたKPIの改善が行われてきませんでした。反対に、売上比率が少ない広告主が保有する直販ECサイトばかりにEC事業部のリソースが割かれることに疑問を持っていました。
また、音が出ないという視聴環境で動画広告に接触するケースもあるため、TVCMの内容を配信するだけでは『何が』『どこで』販売されているかが伝わらずにスキップされてしまうリスクが高い。この2つの課題を解決するのがAAPとTeads PMPを活用した動画広告配信です」(若松氏)
AAPとTeads PMPの活用でフルファネルのアプローチを実現
では、Teads Japanと5は、どのような配信方法を提案するのだろうか。
「Teads Japanが提供する動画広告は『ビューアビリティ』『ブランドセーフティ』『フラウドフリー』といった特徴があります。クオリティの高い動画制作や高品質な配信面、広告主の業績に影響を与える大規模の売上拡大に結びつく施策を提案できるのが本ソリューションの強みです」(今村氏)
この特徴を持つTeads PMPとAmazonが保有するオーディエンスデータおよびレポーティング機能を連携することで、「接触・認知」にとどまっていた動画広告の接触者を、「興味・関心・理解」「購入検討」そして「購入」へと誘導することができるのだ。
「AAPの活用で、Teadsの高品質な配信面にマッチした動画広告を最適なタイミングで最適なユーザーに配信できるようになりました。そして、その配信がユーザーの購買行動やクライアントの売上に影響をどれだけ与えたのかデータで可視化することが可能となりました。さらに、商品を買う上で必要な売場の情報が常時表示される独自のクリエイティブが売上の拡大へと結びつけます」(今村氏)
こうしたエンドユーザーのフルファネルを意識した戦略と施策の立案を実現しているのが5の鳴海氏だ。鳴海氏は、日本では4人しかいない「Google Adwords」のトップコントリビューターの1人(2018年4月時点)。
Amazon マーケティングサービス(以下、AMS)とAdwordsの運用ノウハウには同じ検索連動型広告である故に共通する部分も多く、Teads Japanと進める新しいソリューション提供を運用面から支えている。
「リーズナブルな料金で導入できるのが検索連動型広告をはじめとした、クリック課金型広告のメリットの1つです。ただ、今村さんが指摘するとおり『接触・認知』にとどまっていた潜在層にアプローチできないのが大きな課題でした。今回の取り組みでは、AAPとTeads PMPの活用で新しい導入・活用メリットを提案できるようになりました」(鳴海氏)
低コストで高い効果を実証
今回のTeads Japanと5によるソリューションは、デジタル広告の効果測定や検証の指標をも変えようとしている。両社はAAPとTeads PMPを活用した動画広告配信施策を「ベータ版」として実施した際に明らかになった。
「同じコストをかけて行ったこれまでのAAP動画の施策に比べ、Teadsの広告接触者がAmazonの商品ページにより多く訪問したのです(※)。PVあたりの単価についても通常のAAPの動画広告に比べて大幅な効率化を実現できました」(若松)
※出典:5の運用レポートより(2018年2月)
従来、デジタル広告などの効果を測定・検証する指標として、CPAやROAS(広告費用対効果)、ROI(投資対効果)が用いられてきた。
これに対して、Teads Japanおよび5は新規のお客様を作る新しいソリューションの提供と「eCPDPV(Cost Per Detail Page View)」というAmazon独自の指標を提唱する。クリックスルー・ビュースルーを問わず広告接触者がAmazonの商品ページを閲覧したあたりのコストだ。
「AAPでは、新規顧客になりうるオンライン買物客を識別して商品ページへと誘導し、更にAmazonの訪問ユーザーへのレビューや商品ページなどのコンテンツへの再訪を促す機能が加わることで、新規のお客様を作ることを目的とした投資が実現できます。これにより、オンライン上での売上規模を量販店並みに増やしていくことが可能です」(若松氏)
デジタル広告の市場規模が急速に伸びている一方で、マス媒体での大規模な広告・宣伝コストも依然として堅調を維持している。その理由として若松氏が指摘するのは、オンラインストアでの売上規模が、量販店の売上規模を大きく下回っているという現状だ。
両社が目指すのは「ECサイトの限界突破」
両社は今回の取り組みで実現したいビジョンがあるという。それは「オンライン上で量販店を超える売上の実現」だ。
「広告主の側には、まだまだECサイトで実現可能な売上規模は限定的という意識が強い。そのために、マス媒体向けの広告・宣伝予算をなかなかデジタルシフトできないという課題があります」(若松氏)
また、既にAMSを活用している企業でも、上記のビジョンを達成する上で壁となる課題がある。それは「AMSに投資できる金額の上限」だ。
「AMSの検索連動型広告で、大規模な売上アップを実現するにはAmazon内で検索の回数を爆発的に増やさなければいけないため、AAPの配信が必要となります。そして、AMSの売上最大化を目的とした効率的なAAP配信を実現するのが、Teads PMPへの動画広告配信です」(鳴海氏)
若松氏は、Teadsと取り組みを行うことは、配信ネットワークだけでなく、クリエイティブにもメリットが大きいと語る。
「Teads Studioを活用することで、商品詳細ページに導くために必要な、『何の商品か』『どこで売っているのか』かが一目でわかるクリエイティブを制作できます」(若松氏)
マス媒体を使って、大規模な広告・宣伝費用を投じているのは大手および有名企業が中心だ。その多くがブランド別、商品のカテゴリー別に確保している予算をオンラインの業績拡大を目的とした顧客創造に有効投資できていない。そこを変えていくことがTeads Japanおよび5が目指すビジネスの将来展望だ。
Amazonで売れるサイクルを作るために必要なこと
「オンライン上で量販店を超える売上の実現」を目指す、Teads Japanおよび5の視界は良好だ。
「Amazonでは、広告経由で商品紹介ページを閲覧したエンドユーザー数と注文数は比例していると考えています。また注文数が増えれば、それだけAmazonで「シャンプー」などで検索した際のサーチランク(検索結果の順位)がアップして自然検索経由の商品ページビュー数と売上も増えるという『Amazonの売れるサイクル』を回すことを目指しています。
このサイクルの実現で、実店舗を上回る売上を達成できると確信しています。そして、今回のソリューションは、そのサイクルを最大化することに貢献します」(若松氏)
これまでマス媒体を中心に展開されてきたブランドの知名度・認知度アップのための戦略や施策が、より売上にもつながる形で実施される可能性も高いと鳴海氏は語る。
「Amazonの広告掲載サービスとTeads Japanのテクノロジーを活用することでエンドユーザーを多く誘導しながら注文数も増やしていくノウハウが確立できました。具体的な戦略や施策の立案を通して1つでも多くの成功事例を作っていきたいですね」(鳴海氏)
オフラインへのインパクトを可視化
5の若松氏は最後に「オンライン上でのKPIの可視化だけでなく、オフラインでの売上アップの可視化も今後行っていきたい」と語った。
「ある消費財のキャンペーンでのアンケート調査で、AAPの広告を見たユーザーのうち約39%が実際に店舗を訪れて『商品を見た』『商品を試した』『商品を買った』と回答しました。今回のTeads PMPを活用した施策を通して、実店舗での売上アップも実現するような試みも積極的に進めていきたいですね。
特にTVを見なくなった40代以下の買物客にこのモデルは有効です。今後はオフラインの流通対策としても利用できるデータを広告主側の営業担当者様向けに作っていきます」(若松氏)
Teads Japanの今村氏も広告主のオフライン売上の拡大目的も含めた大規模な広告・宣伝戦略や施策のサポートを今後の展望として描いている。
「今後、多くの施策を通してTeadsの配信ネットワークが、ファネルの最上部である『良質な認知』から『興味検討』そして『購買』まで広告効果があることを可視化できると思っています。Amazon独自の指標である『eCPDPV』を軸にして顧客創造を目的とした広告投資を普及・定着させていきたいと思います」(今村氏)
※ Amazon、Amazon.co.jp、Amazon Advertising Platform(AAP)、Amazon マーケティングサービス(AMS)およびそれらのロゴはAmazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。